春爛漫、一週間程前から鴬のまだおぼつかない初々しい鳴声
が聞こえてくる。
近くの小学校、高等学校の校庭を取り囲むように咲いている
満開の桜の木、でも生徒達は春休み、ガランとしたひとっ気の
少ない道路を花見をしながら車でゆっくりひと巡り・・・・・
月に一度のお医者様通い、以前からお腹がシクシクしていた
のを夫が旅行に立つ二日前、(旅行先で亡くなり一年余り)
怒るように私をお医者様に連れて行った。
安心して旅行に行きたかったのかもしれない。
電話機の後ろの壁に胃腸外科医院と市立病院、タクシー会社
五社の電話番号を用心の為もあってか夫がメモして貼ってか
ら出発していった。
電話をかける時そのメモ書きをぼんやり見ながら考えてしまう
夫は口やかましい私(内弁慶)なのに心配して大切に思って
いてくれたのだろうか、いや単に食事を作る人が病気になった
ら大変だと思ったのだろうか・・・・・
シーンとした家の中で居ない夫を目で探すのはもうよそう。
黄昏時は瞬く間に過ぎ去るのだから・・・・・