一人で自主練をしている。
そう思われるのが嫌で友達にも部活仲間にも誰にも言わずにいた。
だから部活後に部活のメンバーから誘われれば普通に遊びにも行っていた。
その分家に帰ってきてからは暗くなっていても出来ることをやって、とにかく毎日誰よりも多くボールに触ることを心掛けた。
そして自主練の時にはとにかく考えるように自分自身の中で癖付けた。
今自分がしている練習は何のためにしているのか?
例えば一人でボールを蹴るため蹴る場所は壁などになってくるが、真正面からきちんと真っ直ぐボールを蹴ればボールは必ず真っ直ぐ壁に当たって戻ってくる。
少し斜めの位置から壁に向かって蹴ればボールは当然その角度分、自分とは遠ざかる角度で戻ってくる。
それを利用すればドリブルしながらのパス練習にもなるしスピードを加えることによりノーバウンドで自分の足元にボールを戻すことも可能になる。
ドリブルしてからのリターンパスを胸トラップしたければ高めの速いボールを蹴ればいい。
とにかくこうして一つ一つを考えながら工夫して練習をした。
足の甲のどこにボールを当てればどんな飛び方をするかとか、ドリブルしながら顔を上げ首を振り公園内で練習している時には滑り台の階段の何段目を見るようにするとか、とにかくその場にある全ての物を利用して工夫しながら自主練していた。
自主練の中で常に考えながらプレーするようになると自然と学校の部活動でも考えながらプレーすることが当たり前になっていた。
今みんなでやっている練習はこういった場面なら試合でも使えるけど、使えない場合はこういう別の展開にもっていけばいい。
この練習は試合ではほとんど使えないけど、自分自身の技術を磨いていると思えば必要な練習だとか。
1年の2学期辺りは毎日がこういった形で考えながら練習していて、同じような練習をしていても色々と考えることが出来ていてどの練習も常に楽しかった。
3学期になると僕にも少しずつではあるがチャンスが巡ってくるようになっていた。
1年と2年合わせて30人以上いたためチーム内で紅白戦をやってAチーム、Bチームに分けても「出来ない組」だった僕はその紅白戦にすら出してもらえない状況だったが、この頃からまだBチームではあるが出場メンバーに入るようになり紅白戦に出場出来るようになったのだ。
やっとチャンスがきた。もちろんこのチャンスを掴みたいと必死に頑張ってはいたが、それでも最初の頃は戸惑ってうまくいかない場面もたくさんあった。
遊びでのゲームは小学生の時からたくさんしてきた。
でもその頃は何にも考えずただドリブルで突っ走ったりしていただけだったし周りは僕も含めみんなが素人。
やりたいようにやっていただけのゲームしかしたことがなかった。
そのため紅白戦とはいえ他のメンバーは全員、小学生の時からの経験者ばかりで僕一人が本当の試合での実践経験が全くない。
だから最初の数試合は試合に出場出来ていただけのメンバー合わせのような状態になっていた。
もしもこの数試合を見ただけでまたBチームから外されてしまえば次からのチャンスはすぐには巡ってはこなかったかもしれないが、幸いにもそういったことにはならず役には立っていなかったが紅白戦には出場し続けていた。
そうしていると少しずつ周りも見えてくるようになり、これまで考えながらやってきた練習の成果が少しずつ表れやれなかったことが出来るようになってきていた。
一つのパスを出すにしても、自分の中で誰に出すのがいいのか周りを見て瞬時に判断しパスを送る。
味方の足元にパスを送りたいのにパスがずれてしまった時などは悔しくはあったが、その失敗を次は正確なパスを送れるよう身に付けようとまた帰ってからの自主練に励む。
こうして紅白戦に出るようになってからは反省することや自分自身の課題も増えていきそれがまた次の自主練へと繋がっていく。
この繰り返しを毎日行っていたこの頃は多分自分自身が一番成長を感じていた頃だったように思う。
続