発症の原因としては、身体因(チックの中枢として脳の線状体(せんじょうたい)の障害説などがある)と心因が相互に関係しあっていると考えられています(図1)。とくに、子どもの発症に際しては、母子関係が重要な要因であるとする従来からの説もありますが、最近では素質としての身体因を重視する傾向があります。
症状の特徴と診断 チックは、「ある限局した一定の筋肉群に、突発的、無目的に、しかも不随意(ふずいい)に急速な運動や発声が起きるもの」とされています。
症状は、まばたき(瞬目(しゅんもく))、首振り、顔しかめ、口すぼめ、肩上げなど上位の身体部位によく現れますが、飛び跳ね、足踏み、足けりなど全身に及ぶ運動性チックといわれるものもあります。また、咳払い、鼻ならし、叫びや単語を連発する発声チックといわれるものもあります。
発症年齢は、3~4歳の幼児期から始まり(初発)、7~8歳の学童期(ピーク)に多くみられます。男児に多い傾向にあり(男女比は3対1)、その意味づけに関して定説はありませんが、一応この時期の男女の成長・発達の特異性によるものと考えられています。
診断は、一般には症状や治療経過の特徴などからなされています。ここでは、子どもの精神科などで用いられている診断基準を紹介しておきます(表16)。
治療は、「チック症という病気を治すのではなく、チック症の子どもを治療する」ことになります。治療の目標は、ストレスなどへの適応性を高め、人格の発達援助を目指すことです。
子ども専門の精神科などでは比較的重症な患児が多く、その場合には薬物療法(主としてハロペリドールなどの向精神薬)が行われます。一方、軽症の場合は、遊戯(ゆうぎ)療法などの行動療法的なアプローチが有効とされています。その際は、親へのカウンセリングが重要になります。
対応としては、症状を誘発する緊張や不安を軽減、除去することや、それへの耐性(たいせい)(精神的抵抗力)を高めるように援助することが肝要ですが、症状の出現をやめるように、いたずらに叱責して注意を促すことは避けるべきです。
むしろ、本人が症状にとらわれすぎないように配慮し、全身運動の発散に関心を向けさせ、一方では、何か興味を抱いて熱中できるもの(趣味的なもの)をもたせることが有効です。
しかし、症状が長期・慢性化し、多発・激症化する場合には、子ども専門の精神科などの医療機関への受診が必要になります。