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歯科技工士・岩澤 毅

水谷惟紗久(著) 18世紀イギリスのデンティスト―歯科医療の起源、そして「これから」

2015年02月11日 | amazon.co.jp・リストマニア



史料と出会うべき研究者の「幸福な出会い」

投稿者 歯職人 投稿日 2015/2/11

 歴史学者の磯田道史が、『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』((新潮新書)の基本史料となった加賀藩の下級藩士で御算用者(会計処理の役人)を務めた猪山家に残された、約37年間の入払帳や書簡と出会ったのは、2001年(平成13年)の神田神保町の古書店であったと記されている。
 史料が、その価値を理解し、それを活かせる研究者と出会うことは、双方にとって何よりの幸福なのだろう。
 本書は、著者の水谷惟紗久氏が、慶応大学大学院修士課程終了後、研究職を経て、歯科専門の新聞社に職を得、歯科専門の記者・編集者生活での経験と問題意識や知見を蓄え、社会人として早稲田大学大大学院に再び学び歴史研究者として修得した研究方法を用いて、その大学図書館が契約する電子ライブラリを通し、膨大な18世紀英国の歯科関連の書籍・広告を縦覧する中で解明した、歯科医療の起源を探る方法として、18世紀イギリスのデンティストに焦点を当てた一冊です。
 第1章「美的欲求に応えるデンティストの登場」では、18世紀イギリスの現在の歯科関連分野の状況が解明される。
 第2章「歯が「死」に関連していた時代」では、死亡統計から歯科との関連を探り、当時の歯科医療の水準の解明を試みる。
 第3章「18世紀資料に見るデンティストの諸相」では、新聞広告と商工人名簿から、現在の歯科関連分野の当時の様相を、具体的に生き生きと描き出す。
 第4章「歯科口腔領域に関する書物」では、現在の歯科関連分野の書籍の内容の分析を行う。
 第5章「「近代外科技術の父」の書から知るデンティストの業務範囲」では、当時の歯科口腔分野の論文を紹介しながら、その著者たちの背景分析等を試みる。
 第6章「歯科外科医、シュバリエ・ラスピーニのビジネス」では、歯科口腔分野に携わる者たちの経済活動にも光を当てる。
 第7章「そして、日本の歯科医療はこれからどこに行くのか」は、「まとめ」と言わばセットの18世紀イギリスのデンティストを解明する中で歯科医療の起源に迫った著者による、現在の日本の歯科医療に対する提言を含めた試論である。
 現在の日本医療知識からすれば、随分「野蛮」な18世紀イギリスの歯科医療と思われる部分もあるが、患者が求め、提供すべきサービスは多く共通する。著者は、本書でこの共通部分に読者の意識を喚起する。
 日本に居ながらにして、電子ライブラリを通し、イギリスの膨大な史料に向き合える時代に、それを活用する能力と知見、切り口を持った著者の「幸福な出会い」の一冊である。

http://www.amazon.co.jp/18%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%88%E2%80%95%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E3%80%8C%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%8D-%E6%B0%B4%E8%B0%B7%E6%83%9F%E7%B4%97%E4%B9%85/dp/4931550185/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1423662391&sr=8-1&keywords=18%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%88

膨大な史料との格闘 2015/02/11(水)

レビュアー: 歯の職人

 日本歯科新聞社の「アポロニア」編集長による著作です。慶応大学大学院修士課程終了後、研究職を経て、日本歯科新聞社で記者・編集者として経験と問題意識や知見を蓄え、再び早稲田大学大大学院学び修得した研究方法を用いて、大学図書館が契約する電子ライブラリを通し、膨大な18世紀英国の歯科関連の書籍・広告を縦覧する中で解明した、歯科医療の起源を探る方法として、18世紀イギリスのデンティストに焦点を当てた一冊です。
 現在の医療知識からすれば、随分「野蛮」な18世紀イギリスの歯科医療と思われる部分もあるが、患者が求め、提供すべきサービスは多く共通する。著者は、本書でこの共通部分に読者の意識を喚起する。
 日本に居ながらにして、電子ライブラリを通し、イギリスの膨大な史料に向き合える時代に、それを活用する能力と知見、切り口を持った著者の「幸福な出会い」の一冊である。

http://www.shien.co.jp/act/d.do?id=5435


18世紀イギリスのデンティスト - 歯科医療の起源、そして「これから」

水谷惟紗久

価格 \4,104(本体\3,800)
日本歯科新聞社(2010/07発売)

サイズ A5判/ページ数 224p/高さ 22cm
商品コード 9784931550186
NDC分類 497.023

はじめに
18世紀のイギリスと世界の年表

第1章 美的欲求に応えるデンティストの登場
 1.デンティストの前史
 2.デンティストの登場
 3.デンティストの顧客層
 4.デンティストの専門性
 5.治療の需要拡大要因

第2章 歯が「死」に関連していた時代
 1.死亡統計表から見る死因
 2.生歯熱の病態
 3.生歯熱の治療法
 4.生歯熱減少で変わったデンティストの役割

第3章 18世紀資料に見るデンティストの諸相
 1.新聞広告の意義
 2.ジェイコブ・ヘメットのビジネス
 3.ペーテンス(歯科外科医)のビジネス
 4.女性デンティストの事業者
 5.デンティストの営業場所、営業内容
 6.具体的な情報を提供する広告
 7.各種事業主による広告
 8.商工人名録に見るデンティスト

第4章 歯科口腔領域に関する書物
 1.『簡単で推奨される方法のコレクション』1787年
 2.『医療の新たな技術』1738年
 3.『すべての紳士淑女のデンティスト』1791年

第5章 「近代外科技術の父」の書から知るデンティストの業務範囲
 1.多くの医学書を著したジョン・ハンターの人物像
 2.『歯の病気に関する実用的論文』の位置付けと構成
 3.『歯の病気に関する実用的論文』の目的
 4.『歯の病気に関する実用的論文』に見られるデンティスト
 5.人工歯、入れ歯の位置付け
 6.他家歯牙移植「Transplantation」とは
 7.Transplantationとデンティスト

第6章 歯科外科医、シュバリエ・ラスピーニのビジネス
 1.最初期の歯科外科医・ラスピーニの人物像
 2.『歯についての論文』に見られる医療的記述
 3.「症例」に見られる精油の宣伝
 4.『非凡なる止血剤の効果についての要約』に見られる宣伝文句
 5.書誌的考察
 6.デンティストとは何か

第7章 そして、日本の歯科医療はこれからどこに行くのか
 1.修復・補綴の歴史的位置付け
 2.デンティスト教育の歴史
 3.高齢社会への対応

まとめ
参考文献

■付録
 1.歯と口の化粧法39種
 2.非凡なるバルサム止血剤の効用

http://www.dentalnews.co.jp/books_details/books_uk.html

歯科医療の起源、そして「これから」
18世紀イギリスのデンティスト
日本歯科新聞社 月刊「アポロニア21」編集長
水谷惟紗久 著

A5判/224p
3,800円+税(送料別)

 現代につながる歯科医療の起源を歴史的に探ることによって、今後の歯科医療および、歯科医院経営の課題を明らかにします。
 早稲田大学図書館が契約する電子ライブラリを通し、膨大な18世紀英国の歯科関連の書籍・広告を縦覧。「矯正、ホワイトニング、そして移植もすべて存在していた」「歯の病気で死ぬ時代があった」「補綴はデンティストリーではなかった」など、興味深い事実を証明する資料が多数掲載されています。

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