歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書) 郷原 信郎 (著)

2009年04月11日 | amazon.co.jp・リストマニア
思考を奪われ、思考停止に安住する日本社会への警告, 2009/4/11

By 歯職人

 コンプライス問題の第一人者として登場した郷原信郎氏による、マスメディアの事実確認なき情緒に訴えるヒステリック報道に踊り、思考停止する日本社会に対する警世の書といった趣の一冊です。
 郷原信郎氏は、不二家事件の解明のための「第三者委員会」の委員として同問題にかかわり、解明が進めば進むほどマスコミの理不尽振舞いと不二家の摩擦を避けマスコミとの対立を回避する姿に義憤を感じ、その経験が本書の論考に繋がる。現代の日本社会の病理としての「法令遵守」の一人歩き、あたかも水戸黄門の印籠と同様な思考停止装置の様な取り扱いに異議を唱える。
 本書の冒頭では、不十分な調査、更に言えば「やらせ報道」と責任逃れによって、不二家を実質的に経営破たんに追い込んだ、TBSのみのもんた氏(同氏が親族から経営を引き継いだ企業は独占禁止法関連の報道では常連企業であるが)の番組等を素材に、マスコミ現場の病理と、批判精神無く報道を鵜呑みに情緒に流され踊る国民の姿を描く。
 更に、ここ数年のメディア報道が事実確認を怠り社会を如何に歪めて来たのかを、年金記録「改ざん」問題、耐震「偽装」問題、裁判員制度の伝えられない問題点を説得力をもって解き明かす。
 法令の趣旨・目的から懸け離れた、文言の「国語的勝手理解」が引き起こす混乱。あたかも記者が司法の運用を司るかのような言動をし、更には他のマスコミがメディアスクラムによって煽りを加え、事実確認無き報道が増幅し、魔女狩りへと突き進み、世論と言う名のマスコミに押された経済司法行う劇場型終局。
 最近の経済事件を素材にすることにより、読者の理解が容易となり、著者の「思考停止社会」との日本社会分析が説得力を持ち、著者のの処方箋の説得力が増している。
 是非お勧めしたい一冊です。
 

シコウテイシシャカイ ジュンシュニムシバマレルニホン コウダンシャゲンダイシンショ
講談社現代新書
思考停止社会―「遵守」に蝕まれる日本

郷原 信郎【著】
講談社 (2009/02/20 出版)

210p / 18cm
ISBN: 9784062879781
NDC分類: 335.15
価格: ¥777 (税込)

詳細
日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。
相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。

第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章 思考停止するマスメディア
第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を

著者紹介
郷原信郎[ゴウハラノブオ]
1955年、島根県松江市生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2005年より桐蔭横浜大学法科大学院教授、06年弁護士登録。08年、郷原総合法律事務所開設。警察大学校専門講師、公正入札調査会議委員(国土交通省、防衛省)、標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会委員(厚生労働省)なども務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

最新の画像もっと見る