『日本歯技』5月号「巻頭言」
手紙 ~拝啓 十五の君へ~
地域の中学生が、横断的・総合的な学習や探究的な学習の時間を利用し、少人数のグループで歯科医院や歯科技工所を訪ねて来ることも、珍しいことではなくなった。訪問先の職場と仕事に対する事前調査や、訪問後のレポートの作成、グループごとの発表、そしてそれを指導する先生方のご様子等を伺うと、あいさつや自己紹介の練習等々、その真剣で真面目な取り組みに新鮮な感動を覚える。
文部科学省等は、いわゆるニート(就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない)、フリーター(パートタイマー、アルバイトなどの非正規雇用)の増加や七五三現象(就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職する現象)等を背景に、「若者自立・挑戦プラン」等の、将来を担う若者たちに勤労観・職業観を育み、自立できる能力をつけることを目的とするキャリア教育の推進をしてきた。
公益社団法人日本歯科技工士会は、広く社会に対し、歯科技工士の役割・仕事内容等を紹介する活動を継続して取り組んできた。1995年(平成7年)には、本会の編集により『こうすれば歯科技工士になれる』を中央経済社より発行した。その後も、いくつかの出版社の職業紹介書籍の企画に、監修等の形で協力してきた。また、本会HPや各種パンフレット等の発行等で、その内容の更新を図りながら、より親しみやすい表現方法や発信の方法を模索してきた。
日本の急速な少子高齢社会の到来は、高等学校卒業を受験資格とする歯科技工士教育機関運営に強い影響を与える。18歳人口の急激な減少は、高等教育機関等に大きな変革の渦を作り出している。また、歯科技工士国家試験の全国統一化により、今まで以上に歯科技工士教育機関の学生の質の担保が重要になるものと思われる。歯科技工士の就業環境の改善は当然の前提として、歯科技工士という職業と歯科技工所という職場を、中学生や高校生のキャリア教育に活用していただき、歯科技工への国民の理解を広げ、さらには未来の歯科技工士の誕生につなげる、歯科技工士の側の一層の努力が求められている。