歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 「通則」て、何だろう

2005年03月30日 | ごまめ・Dental Today
ごまめ34号原稿04

「通則」て、何だろう

-健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(厚生省告示)の考察-

岩澤 毅(秋田市)

 いわゆる「大臣告示」、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方
法」を (厚生省告示第五十四号、平成六年三月十六日)を例に考察する。

 この告示は、冒頭「健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条ノ九第二項の
規定に基づき」と自己規定し、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算
定方法(昭和三十三年六月厚生省告示第百七十七号)の全部を次のように改正し」と目
的を明らかにし、「平成四年三月厚生省告示第五十号(給食料を算定している患者に
係るビタミン剤の算定方法を定める件)及び平成四年三月厚生省告示第五十二号(厚生
大臣が定める疾患、厚生大臣が定める上限としての点数及び厚生大臣が定める点数を
定める件)は、平成六年三月三十一日限り廃止する」と、この告示で統合される細部
を注釈し、「ただし、同年九月三十日までの間においては、改正後の別表第一医科診
療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)第二章第五部区分F200の注3、同章第六
部区分G100の注2、別表第二歯科診療報酬点数表(以下「歯科点数表」という。)第二
章第五部区分F200の注3及び同章第六部区分G100の注2中「給食料を算定している患者
又は入院中の患者以外の患者」とあるのは「給食料を算定している患者」とし、改正
後の医科点数表、歯科点数表及び別表第三調剤報酬点数表中別に厚生大臣が定める部
分については別に厚生大臣が定めるところによる。」と、経過措置を定めている。



 そして、この告示の文章としての本体は

一 保険医療機関に係る療養に要する費用の額は、歯科診療以外の診療にあっては別
表第一医科診療報酬点数表により、歯科診療にあっては別表第二歯科診療報酬点数表
により算定するものとする。ただし、別に厚生労働大臣が指定する保険医療機関の病
棟における療養(健康保険法(大正十一年法律第七十号)第六十三条第一項第五号に掲
げる療養(同条第二項に規定する食事療養及び選定療養を除く。)及びその療養に伴う
同条第一項第一号から第三号までに掲げる療養に限る。)に要する費用の額は、当該
療養を提供する保険医療機関の病棟ごとに別に厚生労働大臣が定めるところにより算
定するものとする。

二 保険医療機関に係る療養に要する費用の額は、一点の単価を十円とし、別表第一
又は第二に定める点数を乗じて算定するものとする。

三 保険薬局に係る療養に要する費用の額は、別表第三調剤報酬点数表により、一点
の単価を十円とし、同表に定める点数を乗じて算定するものとする。

四 前各号の規定により保険医療機関又は保険薬局が毎月分につき保険者ごとに請求
すべき療養に要する費用の額を算定した場合において、その額に一円未満の端数があ
るときは、その端数金額は切り捨てて計算するものとする。

五 特別の事由がある場合において、都道府県知事が厚生労働大臣の承認を得て別に
療養担当手当を定めた場合における療養に要する費用の額は、前各号により算定した
額に当該療養担当手当の額を加算して算定するものとする。

六 前各号の規定により保険医療機関又は保険薬局において算定する療養に要する費
用の額は、別に厚生労働大臣が定める場合を除き、介護保険法(平成九年法律第百二
十三号)第六十二条に規定する要介護被保険者等については、算定しないものとす
る。

であり。

 実態は、「保険医療機関に係る療養に要する費用の額は、歯科診療以外の診療に
あっては別表第一医科診療報酬点数表により、歯科診療にあっては別表第二歯科診療
報酬点数表により算定するものとする」(健康保険法の規定による療養に要する費用
の額の算定方法)である。



結論

「通則」は、厚生労働省・中央社会医療協議会による、保険医療機関・保険者(健康
保険組合等)等に対する通常2年毎に改定される別表(我々が注目するのは歯科診療
報酬点数表)の部分を構成する「部」に対応した説明と解説、関係者の業務連絡であ
り、厚生労働省と中央社会保険医療協議会を構成する委員及びその推薦母体の各団体
の確認文書としての性格を持っている。

 「別表」の言葉が示すように、「別表」は簡潔な点数表であることが求められるた
め、説明と解説を「通則」の形で示す必要があると思われる。

 2年毎の各改定時を貫く、「別表」内の各小項目「部」の共通する規則あるいは次
回改定にも引き継ぐ規則としての名称を「通則」としたのは、十分納得できる。これ
により「通則」の改定に点数改定と違う重み(意味内容と手続き)を与える。

 歯科技工士が幻想を抱いた「大臣告示・通則の5」を吟味するためには、「通則の
1~4」あるいは、「大臣告示・通則の5」以降に制定されたと思われる「通則の6~
9」を知る必要がある。

 砕いて言えば、「通則」は保険医療機関に対しては診療報酬の請求の仕方、保険者
・審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金等)は審査の仕方の「部」内部の共通事
項を示している。

 「通則」(個々の部に対して用いている)と「注」(個々の区分の点数に対して用
いている)を使い分けていることに注意を要する。

健康保険法の直接の支配を受けない・健康保険制度内に位置を持たない歯科技工士・
歯科技工所が、「大臣告示・通則の5」によって委託歯科技工料の保証を受けたとの
考えは、現行制度から導きだされる根拠を持たない。



まとめ
「大臣告示・通則の5」は、歯冠修復及び欠損補綴料の診療保険点数に対する解釈を
説明した(内訳を示したことによりその点数の算出基準の根拠を解説した)に過ぎな
い。また、「大臣告示・通則の5」は保険医療機関および保険者・審査支払機関に向
けられた解説であり、保険医療機関の一取引先に過ぎない歯科技工士・歯科技工所に
向けられたものではない。

 12%パラ合金の材料点数(点数改定も)が、歯科医院と歯科材料商の取引価格を拘
束せず。当然にも、歯科技工所と歯科材料商の取引価格を拘束せず。薬価点数が、病
・医院と医薬品商の取引価格を拘束しないと同様に、歯冠修復及び欠損補綴料の診療
保険点数は、歯科保険医療機関と歯科技工所の取引価格を拘束しない。



2005.03.30記

別表第二 歯科診療報酬点数表



第12部 歯冠修復及び欠損補綴

通則

1 歯冠修復及び欠損補綴の費用は、特に規定する場合を除き、第1節の各区分の所定
点数及び第2節に掲げる特定保険医療材料(別に厚生労働大臣が定める保険医療材料を
いう。以下この部において同じ。)の所定点数を合算した点数により算定する。

2 歯冠修復の費用は、歯冠修復に付随して行った仮封、裏装及び隔壁の費用を含む
ものとする。

3 この部に掲げられていない歯冠修復及び欠損補綴であって特殊な歯冠修復及び欠
損補綴の費用は、この部に掲げられている歯冠修復及び欠損補綴のうちで最も近似す
る歯冠修復及び欠損補綴の各区分の所定点数により算定する。

4 5歳未満の乳幼児又は著しく歯科診療が困難な障害者に対して歯冠修復及び欠損補
綴(区分番号M010からM015までに掲げるもの及び同M017からM026までに掲げるものを
除く。)を行った場合は、全身麻酔下で行った場合を除き、当該歯冠修復及び欠損補
綴の所定点数に所定点数の100分の50に相当する点数を加算する。ただし、通則7に規
定する加算を算定する場合はこの限りではない。

5 歯冠修復及び欠損補綴料には、製作技工に要する費用及び製作管理に要する費用
が含まれ、その割合は、製作技工に要する費用がおおむね100分の70、製作管理に要
する費用がおおむね100分の30である。

6 ラバーダム防湿法を行った歯冠修復及び欠損補綴(区分番号M001の4のイ及び
M001―2に掲げるものに限る。)については、臼歯に対して歯冠修復及び欠損補綴が行
われた場合(隣接面以外の部分に対してのみ歯冠修復及び欠損補綴が行われた場合に
限る。)に限り、当該歯冠修復及び欠損補綴に係る全ての費用にラバーの費用として
10点を加算する。

7 区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料を算定すべき患者又は著しく歯科診療が困
難な障害者に対して訪問診療を行った場合に、当該訪問診療に基づき併せて歯冠修復
又は欠損補綴(区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料を算定すべき患者については、
区分番号M029及びM036に掲げるものに限り、著しく歯科診療が困難な障害者について
は、区分番号M010からM015までに掲げるもの及び同M017からM026までに掲げるものを
除く。)を行った場合は、当該歯冠修復又は欠損補綴の所定点数に所定点数の100分の
50に相当する点数を加算する。

8 通則7に規定する患者に対して歯科訪問診療を行った場合において、切削を伴う処
置等が必要な場合であって次に掲げる切削器具及びその周辺装置を訪問先に携行して
必要な処置等を行った場合には、次に掲げる区分に従い、当該処置等のうち主たるも
のの所定点数に次に掲げる点数を加算する。ただし、次に掲げる点数のいずれかを加
算するものとする。

イ エアタービン及びその周辺装置 200点

ロ 歯科用電気エンジン及びその周辺装置 50点

9 区分番号M000―2に掲げる補綴物維持管理料に係る地方社会保険事務局長への届出
を行った保険医療機関以外の保険医療機関において歯冠補綴物又はブリッジを製作
し、当該補綴物を装着した場合の検査並びに歯冠修復及び欠損補綴の費用は、所定点
数の100分の70に相当する点数により算定する。



出典(2005.02.03取得)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/%7Ehourei/index.html?
厚生労働省法令等データベースシステム
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/%7Ehourei/html/hourei/search1.html
法令等データベースシステム  -法令検索-
○健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法
を検索語に指定
件名 制定年月日 種別・番号
・健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法
をクリック
○健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法
(平成六年三月十六日)
(厚生省告示第五十四号)



○健康保険法

(大正十一年四月二十二日)(法律第七十号)高橋内閣

(療養の給付に関する費用)

第七十六条 保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払
うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することが
できる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険
者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相
当する額を控除した額とする。

2 前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算
定するものとする。

3 保険者は、保険医療機関又は保険薬局との契約により、当該保険医療機関又は保
険薬局において行われる療養の給付に関する第一項の療養の給付に要する費用の額に
つき、前項の規定により算定される額の範囲内において、別段の定めをすることがで
きる。この場合において、保険者が健康保険組合であるときは、厚生労働大臣の認可
を受けなければならない。

4 保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があっ
たときは、第七十条第一項及び第七十二条第一項の厚生労働省令並びに前二項の定め
に照らして審査の上、支払うものとする。

5 保険者は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を社会保険診療報酬支払
基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)による社会保険診療報酬支払基金(第八十八
条第十一項において単に「基金」という。)に委託することができる。

6 前各項に定めるもののほか、保険医療機関又は保険薬局の療養の給付に関する費
用の請求に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

(平一四法一〇二・追加)

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