「敗戦処理」時代を担う政治家の弁明, 2012/10/20
By 歯職人
菅内閣の官房長官と言うよりも、政権運営の実務能力を持たないまま、東日本大震災と福島第一原発事故の渦中に身を置いた内閣のスポークスマン枝野幸男氏の「それでも言いたい弁明」の書である。
本書にもある日本新党出身者の朝の辻演説・「朝立ち」の様な、有権者がその演説の全部を聞く事が無いことを前提に、定時定点で頑張る姿を見せるための「見せる書籍」の様な内容である。語り口は、決して切れ味の良いものではない。読後に清涼感を得られるものではない。
その上で本書から注目すべき点としては、年金問題に対する枝野氏の理解が、民主党の年金チームの長妻昭氏とは違うものである推測できる記述である。
政権運営を担い、与党経験を積むことで枝野氏の視点は、野党時代の「問題探し」「こんなにひどいことがある」の告発型から、「良いこと探し」「こんなに希望がある」に移行している。それはそれで結構なのだが、「日本のブランド戦略」も「農産物のアジアへの輸出」も、既に誰かがどこかで述べ実践もしているものであり、敢えて枝野氏が本書で取り上げるべきものか、取り上げるとしてもこのような記述にすべきものか、疑問である。
しかし、政治家が本書の様な同時代の記録を残すことは、推奨されるべきことだ。手柄話と自己弁護に終始する政治家本と比較すれば、2012年現在の枝野幸男氏を記録したという意味で肯定されるべきである。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4492212027/ref=cm_cr_mts_prod_img
タタカレテモイワネバナラナイコト ダツキンダイカトフノサイブンパイ
叩かれても言わねばならないこと。―「脱近代化」と「負の再分配」
枝野 幸男【著】
東洋経済新報社 (2012/10/11 出版)
240p / 19cm / B6判
ISBN: 9784492212028
NDC分類: 310.4
価格: ¥1,365 (税込)
詳細
「成長」や「改革」は幻想だ。
拍手喝采される政治は嘘。
東京に使用済み核燃料の受け入れを求める。
官邸デモは有効である。
必要なのは「敗戦処理」だ。
「眠らない男」の直球書き下ろし。
第0章 3・11という“最後通牒”
第1章 負の再分配と成熟した豊かさ―脱近代化社会の構想
第2章 脱原発依存への道―エネルギー政策
第3章 安心社会による活力―国内経済
第4章 生き残りの新戦略―対外経済
第5章 覚悟を求める政治―参加型民主主義の時代
3・11で官房長官をつとめ、原発問題に経産大臣として向き合う枝野幸男氏は、かねてより近代社会の終焉に強い危機感を表明してきた。
いま日本には必要なのは近代の敗戦処理だと彼は言う。「山の上にもう雲はない」。経済成長の果実を分け合う「正の再分配」の時代から、負担を分担して支え合う「負の再配分」の時代に入る。そして政治家は、これまでの利権分配人から、国民に「負の再分配」を受け入れてもらうための「説得の人」が求められるのだと言う。
成長も依存もできない時代の新しい国の在り方、人生の有り様とは? 脱近代化を訴え続ける枝野氏の激しくも、ほのかに希望が見えてくる真っ当な政策論です。
<目次>
第0章 3・11が突きつけたもの―近代化の終焉
第1章 脱近代化社会へ――負の再分配と成熟した豊かさ
第2章 エネルギー政策――脱原発への道
第3章 国内経済――安心社会による活力
第4章 国際経済――生き残りの戦略
第5章 新しい政治――参加型民主主義の時代
著者紹介
枝野幸男[エダノユキオ]
衆議院議員(埼玉5区選出、当選6回)。1964年栃木県宇都宮市に生まれる。83年栃木県立宇都宮高等学校卒業。87年東北大学法学部卒業。88年司法試験合格。91年弁護士登録。93年日本新党の候補者公募試験に合格し、旧埼玉5区から衆議院議員に立候補・初当選。その後、新党さきがけを経て、96年民主党入党(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
By 歯職人
菅内閣の官房長官と言うよりも、政権運営の実務能力を持たないまま、東日本大震災と福島第一原発事故の渦中に身を置いた内閣のスポークスマン枝野幸男氏の「それでも言いたい弁明」の書である。
本書にもある日本新党出身者の朝の辻演説・「朝立ち」の様な、有権者がその演説の全部を聞く事が無いことを前提に、定時定点で頑張る姿を見せるための「見せる書籍」の様な内容である。語り口は、決して切れ味の良いものではない。読後に清涼感を得られるものではない。
その上で本書から注目すべき点としては、年金問題に対する枝野氏の理解が、民主党の年金チームの長妻昭氏とは違うものである推測できる記述である。
政権運営を担い、与党経験を積むことで枝野氏の視点は、野党時代の「問題探し」「こんなにひどいことがある」の告発型から、「良いこと探し」「こんなに希望がある」に移行している。それはそれで結構なのだが、「日本のブランド戦略」も「農産物のアジアへの輸出」も、既に誰かがどこかで述べ実践もしているものであり、敢えて枝野氏が本書で取り上げるべきものか、取り上げるとしてもこのような記述にすべきものか、疑問である。
しかし、政治家が本書の様な同時代の記録を残すことは、推奨されるべきことだ。手柄話と自己弁護に終始する政治家本と比較すれば、2012年現在の枝野幸男氏を記録したという意味で肯定されるべきである。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4492212027/ref=cm_cr_mts_prod_img
タタカレテモイワネバナラナイコト ダツキンダイカトフノサイブンパイ
叩かれても言わねばならないこと。―「脱近代化」と「負の再分配」
枝野 幸男【著】
東洋経済新報社 (2012/10/11 出版)
240p / 19cm / B6判
ISBN: 9784492212028
NDC分類: 310.4
価格: ¥1,365 (税込)
詳細
「成長」や「改革」は幻想だ。
拍手喝采される政治は嘘。
東京に使用済み核燃料の受け入れを求める。
官邸デモは有効である。
必要なのは「敗戦処理」だ。
「眠らない男」の直球書き下ろし。
第0章 3・11という“最後通牒”
第1章 負の再分配と成熟した豊かさ―脱近代化社会の構想
第2章 脱原発依存への道―エネルギー政策
第3章 安心社会による活力―国内経済
第4章 生き残りの新戦略―対外経済
第5章 覚悟を求める政治―参加型民主主義の時代
3・11で官房長官をつとめ、原発問題に経産大臣として向き合う枝野幸男氏は、かねてより近代社会の終焉に強い危機感を表明してきた。
いま日本には必要なのは近代の敗戦処理だと彼は言う。「山の上にもう雲はない」。経済成長の果実を分け合う「正の再分配」の時代から、負担を分担して支え合う「負の再配分」の時代に入る。そして政治家は、これまでの利権分配人から、国民に「負の再分配」を受け入れてもらうための「説得の人」が求められるのだと言う。
成長も依存もできない時代の新しい国の在り方、人生の有り様とは? 脱近代化を訴え続ける枝野氏の激しくも、ほのかに希望が見えてくる真っ当な政策論です。
<目次>
第0章 3・11が突きつけたもの―近代化の終焉
第1章 脱近代化社会へ――負の再分配と成熟した豊かさ
第2章 エネルギー政策――脱原発への道
第3章 国内経済――安心社会による活力
第4章 国際経済――生き残りの戦略
第5章 新しい政治――参加型民主主義の時代
著者紹介
枝野幸男[エダノユキオ]
衆議院議員(埼玉5区選出、当選6回)。1964年栃木県宇都宮市に生まれる。83年栃木県立宇都宮高等学校卒業。87年東北大学法学部卒業。88年司法試験合格。91年弁護士登録。93年日本新党の候補者公募試験に合格し、旧埼玉5区から衆議院議員に立候補・初当選。その後、新党さきがけを経て、96年民主党入党(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)