Ⅲ.歯科技工士は、社会保険歯科診療の直接の当事者ではない
○歯科技工士法
(昭和三十年八月十六日)
(法律第百六十八号)
第二十二回特別国会
第二次鳩山内閣
歯科技工法をここに公布する。
(平六法一・改称)
(歯科技工指示書)
第十八条 歯科医師又は歯科技工士は、厚生労働省令で定める事項を記載した歯科医師の指示書によらなければ、業として歯科技工を行つてはならない。ただし、病院又は診療所内の場所において、かつ、患者の治療を担当する歯科医師の直接の指示に基いて行う場合は、この限りでない。
(平一一法一六〇・一部改正)
○歯科技工士法施行規則
(昭和三十年九月二十二日)
(厚生省令第二十三号)
歯科技工法(昭和三十年法律第百六十八号)第七条第三項、第十六条、第十八条、第二十一条第一項及び附則第二条第二項並びに歯科技工法施行令(昭和三十年政令第二百二十八号)第一条、第二条第五号及び第十条の規定に基き、並びにこれらの法令を実施するため、歯科技工法施行規則を次のように定める。
(指示書)
第十二条 法第十八条の規定による指示書の記載事項は、次のとおりとする。
一 設計
二 作成の方法
三 使用材料
四 発行の年月日
五 発行した歯科医師の住所及び氏名
六 当該指示書による歯科技工が行われる場所が歯科技工所であるときは、その名称
歯科技工士は、己の行う歯科技工に関してそれが、「保険」に関わるものか「保険外」関わるものかを知る術を持たない。
(平八厚令七・一部改正)
○健康保険法
(大正十一年四月二十二日)
(法律第七十号)
高橋内閣
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル健康保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
(療養の給付に関する費用)
第七十六条 保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2 前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする。
日本国憲法
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償のもとに、これを公共のために用いることができる。
財産権
財産的価値を有するあらゆる権利。所有権等の民法上の権利のほか、無体財産権、鉱業権、水利権も財産権に数えられる。財産権は法律によっても侵害しえない(憲29①)が、その内容は法律によって形成される(憲29②)。したがって、個々の具体的な財産権の創設は立法者にゆだねられるが、その場合も、私有財産制度の本質侵害は許されず(⇒制度的保障)、また各人が現に有する財産権の制約は公共の福祉に適合する場合にのみ許される。私有財産は、正当な補償のもとに、公共のために用いることができる (憲29③)。
『法学用語辞典』有斐閣
今執行部の歯科技工料に関する基本的な考え方 平成14年7月日本歯科技工士会
「製作技工に要する費用=おおむね100分の70」は、文言上「歯科技工相当分」でなく、まして「歯科技工報酬」ではないから、保険機関への請求権は附帯していない。しかしだからといって、昭和36年の皆保険開始以降、初めて『製作技工相当部分が算定額として保険制度の中に存在する』ということが示されたことに対し、「不完全だから、何らの意味もない」と私たち自らが感じることは妥当ではない。
請求権
他人の行為を要求することを内容とする権利。私権の作用の面からみた分類において、支配権・形成権などに対立する権利である。請求権は、物権・債権・親族権・相続権などのような実質的権利の次元における権利とは異なる。請求権は、これらの権利の内容または効力として生ずるものである。したがって、債権は請求権を中心としており、また、請求権は主として債権から生じる。請求権は、その基礎となる権利と密接に結合している。したがって、物権から物権請求権のみをきりはなして譲渡することはできない。
平成16年3月20第79回日技代議員会会長挨拶 社団法人 日本歯科技工士会 会長中 西 茂 昭
診療報酬が改定されました。そもそも保険点数の改定とは、国家が国民に対する義務としての社会保障を達成させるべき経済的インセンティブです。歯科技工士会は、中央社会保険医療協議会での歯科の取り扱いの現実のうえに立ち、主張の置き方をこれまでと変更しました。「点数改定には保険歯科技工料金の現実を反映させるべき」と主張し、総額ゼロ改定のなか、これを獲得しました。「料金を叩けば点数が下がる」「費用がかかれば点数が上がる」、この当然の原理を歯科医師と歯科技工士が共に知る契機としなければなりません。歯科技工所経営者には税制改正への対応を含む様々な責任が伴っております。
中間まとめ2
歯科技工士は、健康保険法・社会保険診療制度内に位置付けられていない。
健康保険法
(厚生労働大臣の指導)
第七十三条 保険医療機関及び保険薬局は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない。
(保険医療機関又は保険薬局の報告等)
第七十八条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関(中略)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ(中略)出頭を求め(中略)質問させ(中略)設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
保険医療機関及び保険医療養担当規則
(帳簿等の保存)
第九条 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。
歯科診療関係書類
保険診療を行うに際に購入する歯科材料・金属・薬剤等の購入伝票等
外注技工指示書
技工納品伝票等
指導形態
集団指導
集団的個別指導
都道府県個別指導
共同指導(省、地方事務局)
特定共同指導
指導監査の実際
個別指導のため持参すべき書類等
歯科診療録(カルテ)
エックス線フィルム(画像診断及び口腔内写真)
スタディーモデル(マル模)
未装着物
外注技工指示書及び技工納品書
購入伝票(歯科材料・金属・薬剤等)
その他(特に指定されたもの)
まとめ
健康保険法・社会保険診療制度の指導監査の実務上の取扱において、外注技工指示書及び歯科技工所が発行する技工納品書等が、その資料となる。
歯科技工士・歯科技工所は、健康保険法・社会保険診療制度の直接の支配を受けない。
「7が決まれば、3が決まって 10が決まる」
実勢技工料金が、診療報酬点数に反映する。
製作技工に要する費用+製作管理に要する費用=歯冠修復及び欠損補綴料
この意味を解剖すれば、
a=製作技工に要する費用
b=製作管理に要する費用
c=歯冠修復及び欠損補綴料
であるから
a+b=c 7:3≒a:b 3a≒7b b≒3a/7
と置き換えることが出来る。
次回改定に関しては、点数改定の政策目的・政策目標をαとすると
±α(正確に表現すれば+α表記)=政策目的・政策目標
改定点数≒a´+3a´/7±α
改定点数≒ a´(実勢歯科技工料金調査結果)+3a ´(実勢歯科技工料金調査結果) /7±α
昭和63年5月30日付 厚生省告示第165号の意義
昭和63年5月30日付厚生省告示第165号の意義は、初めて歯冠修復及び欠損補綴料の「積算基準・根拠、算定基準」を、歯科技工料の実勢価格を基礎に示した事である。これを示すことで、点数改定の根拠が担保された。
しかしながら、社会保険歯科診療における歯科技工士の位置と委託歯科技工料が担保されたものではない。
「7:3」大臣告示の誤解・解明不足が、歯科技工士・歯科技工所・歯科技工界の一部に混乱を招いたことは残念なことである。
結論
健康保険法・社会保険診療制度における歯科技工士および歯科技工所の位置づけは、直接の位置を占めていない。歯科技工所の発行する納品書・請求書は、健康保険法・保険医療機関及び保険医療養担当規則を根拠とした、指導・監査において歯科診療関係書類として活用される。
参考資料
診療報酬のあり方に関する総合的調査研究その1 論点整理 平成16年3月 財団法人日本総合研究所
今期執行部の歯科技工料金に対する考え方 平成14年7月 日本歯科技工士会
第79回代議員会挨拶 平成16年3月20日 日本歯科技工士会
診療報酬のあり方に関する一考察 平成15年1月21日 日医総研
日本歯科技工士会 点数分析表 平成16年4月1日実施
参照サイト
国会議事録検索システムhttp://kokkai.ndl.go.jp/
厚生労働省法令等データベースシステムhttp://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/index.html
(本稿は、2003.11.09社団法人秋田県歯科技工士会生涯研修会原稿を一部改変した。)
2005.06.11記
○歯科技工士法
(昭和三十年八月十六日)
(法律第百六十八号)
第二十二回特別国会
第二次鳩山内閣
歯科技工法をここに公布する。
(平六法一・改称)
(歯科技工指示書)
第十八条 歯科医師又は歯科技工士は、厚生労働省令で定める事項を記載した歯科医師の指示書によらなければ、業として歯科技工を行つてはならない。ただし、病院又は診療所内の場所において、かつ、患者の治療を担当する歯科医師の直接の指示に基いて行う場合は、この限りでない。
(平一一法一六〇・一部改正)
○歯科技工士法施行規則
(昭和三十年九月二十二日)
(厚生省令第二十三号)
歯科技工法(昭和三十年法律第百六十八号)第七条第三項、第十六条、第十八条、第二十一条第一項及び附則第二条第二項並びに歯科技工法施行令(昭和三十年政令第二百二十八号)第一条、第二条第五号及び第十条の規定に基き、並びにこれらの法令を実施するため、歯科技工法施行規則を次のように定める。
(指示書)
第十二条 法第十八条の規定による指示書の記載事項は、次のとおりとする。
一 設計
二 作成の方法
三 使用材料
四 発行の年月日
五 発行した歯科医師の住所及び氏名
六 当該指示書による歯科技工が行われる場所が歯科技工所であるときは、その名称
歯科技工士は、己の行う歯科技工に関してそれが、「保険」に関わるものか「保険外」関わるものかを知る術を持たない。
(平八厚令七・一部改正)
○健康保険法
(大正十一年四月二十二日)
(法律第七十号)
高橋内閣
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル健康保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
(療養の給付に関する費用)
第七十六条 保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2 前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする。
日本国憲法
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償のもとに、これを公共のために用いることができる。
財産権
財産的価値を有するあらゆる権利。所有権等の民法上の権利のほか、無体財産権、鉱業権、水利権も財産権に数えられる。財産権は法律によっても侵害しえない(憲29①)が、その内容は法律によって形成される(憲29②)。したがって、個々の具体的な財産権の創設は立法者にゆだねられるが、その場合も、私有財産制度の本質侵害は許されず(⇒制度的保障)、また各人が現に有する財産権の制約は公共の福祉に適合する場合にのみ許される。私有財産は、正当な補償のもとに、公共のために用いることができる (憲29③)。
『法学用語辞典』有斐閣
今執行部の歯科技工料に関する基本的な考え方 平成14年7月日本歯科技工士会
「製作技工に要する費用=おおむね100分の70」は、文言上「歯科技工相当分」でなく、まして「歯科技工報酬」ではないから、保険機関への請求権は附帯していない。しかしだからといって、昭和36年の皆保険開始以降、初めて『製作技工相当部分が算定額として保険制度の中に存在する』ということが示されたことに対し、「不完全だから、何らの意味もない」と私たち自らが感じることは妥当ではない。
請求権
他人の行為を要求することを内容とする権利。私権の作用の面からみた分類において、支配権・形成権などに対立する権利である。請求権は、物権・債権・親族権・相続権などのような実質的権利の次元における権利とは異なる。請求権は、これらの権利の内容または効力として生ずるものである。したがって、債権は請求権を中心としており、また、請求権は主として債権から生じる。請求権は、その基礎となる権利と密接に結合している。したがって、物権から物権請求権のみをきりはなして譲渡することはできない。
平成16年3月20第79回日技代議員会会長挨拶 社団法人 日本歯科技工士会 会長中 西 茂 昭
診療報酬が改定されました。そもそも保険点数の改定とは、国家が国民に対する義務としての社会保障を達成させるべき経済的インセンティブです。歯科技工士会は、中央社会保険医療協議会での歯科の取り扱いの現実のうえに立ち、主張の置き方をこれまでと変更しました。「点数改定には保険歯科技工料金の現実を反映させるべき」と主張し、総額ゼロ改定のなか、これを獲得しました。「料金を叩けば点数が下がる」「費用がかかれば点数が上がる」、この当然の原理を歯科医師と歯科技工士が共に知る契機としなければなりません。歯科技工所経営者には税制改正への対応を含む様々な責任が伴っております。
中間まとめ2
歯科技工士は、健康保険法・社会保険診療制度内に位置付けられていない。
健康保険法
(厚生労働大臣の指導)
第七十三条 保険医療機関及び保険薬局は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない。
(保険医療機関又は保険薬局の報告等)
第七十八条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関(中略)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ(中略)出頭を求め(中略)質問させ(中略)設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
保険医療機関及び保険医療養担当規則
(帳簿等の保存)
第九条 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。
歯科診療関係書類
保険診療を行うに際に購入する歯科材料・金属・薬剤等の購入伝票等
外注技工指示書
技工納品伝票等
指導形態
集団指導
集団的個別指導
都道府県個別指導
共同指導(省、地方事務局)
特定共同指導
指導監査の実際
個別指導のため持参すべき書類等
歯科診療録(カルテ)
エックス線フィルム(画像診断及び口腔内写真)
スタディーモデル(マル模)
未装着物
外注技工指示書及び技工納品書
購入伝票(歯科材料・金属・薬剤等)
その他(特に指定されたもの)
まとめ
健康保険法・社会保険診療制度の指導監査の実務上の取扱において、外注技工指示書及び歯科技工所が発行する技工納品書等が、その資料となる。
歯科技工士・歯科技工所は、健康保険法・社会保険診療制度の直接の支配を受けない。
「7が決まれば、3が決まって 10が決まる」
実勢技工料金が、診療報酬点数に反映する。
製作技工に要する費用+製作管理に要する費用=歯冠修復及び欠損補綴料
この意味を解剖すれば、
a=製作技工に要する費用
b=製作管理に要する費用
c=歯冠修復及び欠損補綴料
であるから
a+b=c 7:3≒a:b 3a≒7b b≒3a/7
と置き換えることが出来る。
次回改定に関しては、点数改定の政策目的・政策目標をαとすると
±α(正確に表現すれば+α表記)=政策目的・政策目標
改定点数≒a´+3a´/7±α
改定点数≒ a´(実勢歯科技工料金調査結果)+3a ´(実勢歯科技工料金調査結果) /7±α
昭和63年5月30日付 厚生省告示第165号の意義
昭和63年5月30日付厚生省告示第165号の意義は、初めて歯冠修復及び欠損補綴料の「積算基準・根拠、算定基準」を、歯科技工料の実勢価格を基礎に示した事である。これを示すことで、点数改定の根拠が担保された。
しかしながら、社会保険歯科診療における歯科技工士の位置と委託歯科技工料が担保されたものではない。
「7:3」大臣告示の誤解・解明不足が、歯科技工士・歯科技工所・歯科技工界の一部に混乱を招いたことは残念なことである。
結論
健康保険法・社会保険診療制度における歯科技工士および歯科技工所の位置づけは、直接の位置を占めていない。歯科技工所の発行する納品書・請求書は、健康保険法・保険医療機関及び保険医療養担当規則を根拠とした、指導・監査において歯科診療関係書類として活用される。
参考資料
診療報酬のあり方に関する総合的調査研究その1 論点整理 平成16年3月 財団法人日本総合研究所
今期執行部の歯科技工料金に対する考え方 平成14年7月 日本歯科技工士会
第79回代議員会挨拶 平成16年3月20日 日本歯科技工士会
診療報酬のあり方に関する一考察 平成15年1月21日 日医総研
日本歯科技工士会 点数分析表 平成16年4月1日実施
参照サイト
国会議事録検索システムhttp://kokkai.ndl.go.jp/
厚生労働省法令等データベースシステムhttp://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/index.html
(本稿は、2003.11.09社団法人秋田県歯科技工士会生涯研修会原稿を一部改変した。)
2005.06.11記