才能の饗宴, 2010/8/25
By 歯職人
時代の記憶を呼び戻す力において歌謡曲は優位にある。本作品集は、昭和の歌謡曲を素材に、多数の才能が個々の歌謡曲から得た連想と解釈を各自の短編に託しその技量を披露し合ったオムニバスです。
才能の饗宴の効果の積極側面が、随所に溢れている。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000W6MCF8/ref=cm_cr_mts_prod_img
歌謡曲だよ、人生は [DVD]
出演: 青木崇高, 伴杏里, 六平直政, 下元史朗
監督: 磯村一路, 七字幸久
製作者: 桝井省志
形式: Color, Dolby, Widescreen
言語 日本語
リージョンコード: リージョン2 (このDVDは、他の国では再生できない可能性があります。詳細についてはこちらをご覧ください DVDの仕様。)
画面サイズ: 1.78:1
ディスク枚数: 2
販売元: ポニーキャニオン
DVD発売日: 2007/12/05
時間: 130 分
http://www.kayomusic.jp/movie/index.html
オープニング
「ダンシング・セブンティーン」
作詞:橋本淳 / 作曲:筒美京平/ 歌:オックス / ビクターエンタテインメント
[曲解説] 1968年(昭和43年)9月5日リリース
作詞の橋本淳はグループサウンズ(GS)ヒット曲の約7割を手掛けたと言われている。作曲の筒美京平はヒットチャートベスト10入りが203曲あり、そのうち1位は38曲もある日本のポップス界を代表する“不世出の作曲家”である。1969年、オックスの人気は留まることを知らず、浅草のブロマイド店マルベル堂ではタイガース、テンプターズを押さえて年間売上げ男子の部、第1位を獲得する。さらに、ステージでは観客巻き込んでの失神パフォーマンスを繰り広げ、話題をさらった。
第一話
「僕は泣いちっち」
監督・脚本:磯村一路
作詞・作曲:浜口庫之助 / 歌:守屋浩 / コロムビアミュージックエンタテイメント
[ストーリー] 男女の青春、そして夢と挫折を昭和のムードを漂わせ、磯村一路監督が叙情的に描く。
[曲解説] 1959年(昭和34年)9月15日リリース。
1959年以前に、作詞・作曲の浜口庫之助の自信作であるこの曲を二人の歌手が歌ったが、残念ながらヒットには至らなかった。そこで、独特の歌い回しで味がある守屋浩を次に大抜擢したところ、念願のヒットとなる。また、この曲は“ナンセンス歌謡”と呼ばれ、“ちっち”という言葉が流行語となった。この“ナンセンス”で意味をなさない“ちっち”という言葉遊びが耳に心地よくテンポよく残るのは守屋の歌い回しのせいである。
第二話
「これが青春だ」
監督・脚本:七字幸久
作詞:岩谷時子 / 作曲:いずみたく / 歌:布施明 / キングレコード
[ストーリー] 何をやってもへまばかりの大工・藤木貢がひょんなことからエアギター選手権に出場することに。元<MEGADETH>のマーティ・フリードマンによる「これが青春だ」のヘビメタバージョンに合わせ、エアギターをかき鳴らす!
[曲解説] 1966年(昭和41年)12月20日リリース
この曲は竜雷太主演の学園青春ドラマの主題歌。布施明は1965年「君に涙とほほえみを」でデビューし、その後も「霧の摩周湖」「恋」でヒットを飛ばし甘いルックスと渋い歌声でファンを魅了する。作詞は越路吹雪の元マネジャー岩谷時子で、越路が歌うシャンソンの訳詞を手掛けたのをきっかけに作詞家・訳詞家としての活動を始める。作曲のいずみたくは「太陽がくれた季節」や「見上げてごらん夜の星を」など後世に残る名曲を数多く作っている。
第三話
「小指の想い出」
監督・脚本:タナカ・T
作詞:有馬三恵子 / 作曲:鈴木淳 / 歌:伊東ゆかり / キングレコード
[ストーリー] 初老の男、古いアパート、若い娘。夢想の中で偏執的な愛を抱く男を大杉漣が熱演
[曲解説] 1967年(昭和42年)2月10リリース。
伊東ゆかりはバンドマンだった父親にジャズを習い7歳の頃から進駐軍のキャンプ回りをする。その後、1958年にデビューし、1963年には中尾ミエ、園まりとともに3人娘として人気を博す。1967年、「小指の想い出」で大ブレイクし第9回日本レコード大賞・歌唱賞を受賞する。その後も「恋のしずく」「朝の口づけ」「知らなかったの」と次々とヒットを飛ばし、昭和歌謡史に残る名曲を残している。
第四話
「ラブユー東京」
監督・脚本:片岡英子
作詞:上原尚 / 作曲:中川博之 / 歌:黒沢明とロス・プリモス / 日本クラウン
[ストーリー] 太古の昔、男と女が出会い、たちまち恋に落ちた。しかし非情な運命から、二人は引き離されてしまう。
[曲解説] 1966年(昭和41年)4月1日リリース。
1961年、黒沢明とロス・プリモスはラテンコーラスグループとして結成し、1965年にはメインボーカルに森聖二を迎え、歌謡コーラスグループとなる。30年代初頭に和田弘とマヒナ・スターズがムードコーラスの世界を切り拓き、40年代に入ってこのジャンルを一気に開花させたのが、黒沢明とロス・プリモスであった。このデビュー曲で記念すべき第1回目のオリコンチャート(1968年1月4日付)第1位となり、更に連続9週1位を獲得する。この曲は、発売当初B面だったが、その後のヒットによりA面にひっくり返り、年をまたいでの大ヒットとなる。
第五話
「女のみち」
監督・脚本:三原光尋
作詞:宮史郎 / 作曲:並木ひろし / 歌:宮史郎 / コロムビアミュージックエンタテイメント
[ストーリー] 銭湯のサウナで正治は友人と我慢比べをしていた。そこにおじさんが入ってきて…。大ヒット曲「女のみち」の宮史郎を主演に描くド演歌コメディ
[曲解説] 1972年(昭和47年)5月10日リリース
宮史郎は兄の五郎と並木ひろしとともにお笑いグループ、ぴんからトリオを結成し人気を博していた。彼らのデビュー曲「女のみち」のレコードジャケットには、たまたま居合わせた二人と一緒に撮った記念写真を使用している。当初300枚だけ自主制作でプレスされたこの曲は、地元姫路の有線放送で流されるやいなや、ホステスさんたちを中心に爆発的な人気を呼んだ。その結果、レコードは300万枚以上も売れ、一番驚きを隠せなかったのは当の本人たちであった。
第六話
「ざんげの値打ちもない」
監督・脚本:水谷俊之
作詞:阿久悠 / 作曲:村井邦彦 / 歌:北原ミレイ / 東芝EMI
[ストーリー] 海沿いの町でひっそりと暮らす女の前に、昔の男が訪ねてくるが…。男と女の情念の世界で運命の歯車が廻り始める。
[曲解説] 1970年(昭和45年)10月5日リリース。
1970年、南玲子から北原ミレイと芸名を変え歌ったこの曲が大ヒットし、彼女の転機となった。この曲で北原ミレイは歌謡レコード史上最も凄絶な“捨て節”を定着させた。作詞の阿久悠は、ポルトガル辺りで教会へ続く石畳の坂道でよろめいている黒いベールの女性の姿をイメージして書いたという。「時代の虚偽を衝いたから売れたかな」と阿久悠はこの曲のことをのちに語っている。作曲の村井邦彦は「エメラルドの伝説」や「翼をください」など、60年~70年代の青春歌の顔となる数々のヒット曲を作り、またその後もプロデューサーとして、赤い鳥や荒井由実、YMOらを世に送り出した。
第七話
「いとしのマックス」
監督・脚本:蛭子能収
作詞・作曲・歌:荒木一郎 / ビクターエンタテインメント
[ストーリー] 地味で目立たない沢口良子は、いつも会社でいじめられている。そんな良子を見守ることしかできない一郎。蛭子能収監督が得意とする不条理ワールドが炸裂した怪作。
[曲解説] 1967年(昭和42年)5月15日リリース。
同年、この曲はビクターレコードの売上げ第1位を記録するミリオンセラーとなり、荒木一郎は第18回紅白歌合戦に初出場を果たす。その当時、荒木はよく加山雄三と比較された。共にシンガーソングライターであり、自らエレキギターを弾きバックバンドを従えるといった類似点はあるが、各々が全く違う個性を放っていた。常に加山は太陽のような存在で荒木は月のような存在であったが、当時の若者は荒木の飾らない自然体の言動に共感した。繊細な若者の心理を見事に体現した荒木こそ時代のヒーローであった。
第八話
「乙女のワルツ」
監督・脚本:宮島竜治
作詞:阿久悠 / 作曲:三木たかし / 歌:伊藤咲子 / 東芝EMI
[ストーリー] 若い頃、横浜・本牧でバンドを組んでいたマモル。今はしがない喫茶店のマスター経営していた。そこへお客として来た女性に昔の彼女の面影をみつけ。
[曲解説] 1975年(昭和50年)7月5日リリース。
テレビのオーディション番組『スター誕生』は“花の中3トリオ”と呼ばれた桜田淳子、山口百恵、森昌子らを始めとするスターを世に送り出した。歌手の登竜門であるこの番組に伊藤咲子も登場し、阿久悠に認められ「ひまわり娘」でデビューを果たす。アイドルでありながら、当初から実力歌手としての評価も得ていた。そして、伊藤のシングル曲の半数近くは作詞が阿久悠、作曲は黛ジュンの実兄でもありポップスから演歌まで手掛けた三木たかしである。
第九話
「逢いたくて逢いたくて」
監督・脚本:矢口史靖
作詞:岩谷時子 / 作曲:宮川泰 / 歌:園まり / 渡辺音楽出版
[ストーリー] アパートに引越して来たばかりの鈴木夫妻は、ゴミ置き場から「連絡済み 五郎丸」と貼り紙のある文机を拾ってくる。その引き出しには、五郎丸が女性に宛てて書いた手紙が大量に隠されていた
[曲解説] 1966年(昭和41年)1月5日リリース。
1965年、園まりはこの曲で第16回紅白歌合戦出場を果たす。その後も「夢は夜ひらく」、続いて「愛は惜しみなく」でヒットを飛ばし、持ち前の透明感のある歌声でファンを魅了し続けた。作曲の宮川泰は、ザ・ピーナッツの育ての親として知られ「恋のバカンス」などのポップソングを数多く手掛ける。しかし、昨年3月に多くの歌手、ファンに惜しまれつつも亡くなった。のちに、園は「今があるのも先生のお蔭」と語り、宮川を敬愛していたことが窺える。
第十話
「みんな夢の中」
監督・脚本:おさだたつや
作詞・作曲:浜口庫之助 / 歌:高田恭子 / キングレコード
[ストーリー] 美津江は同窓会が行われる小学校を訪れ、懐かしい旧友たちと再会する。そして校庭から掘り起こしたタイムカプセルの中に入っていた8ミリフィルムの上映が行われる…。夢見る大人のファンタジードラマ。
[曲解説] 1969年(昭和44年)3月1日リリース。
高田恭子は、中学生の頃から関西でフォークソングを歌い始め、その後、マイク真木にスカウトされ上京する。そして、マイク真木率いるザ・マイクスで活動していたが、解散後は心機一転し第1回カンツォーネコンクールに出場。そして優勝したことをきっかけに作詞・作曲家の浜口庫之助に認められ「みんな夢の中」を書いてもらう。この曲が高田恭子のデビューヒット曲となる。浜口は40歳から作詞・作曲を始め、時代を超え世代を超えてファンに愛される曲を生み出し、その数約4000曲以上に及ぶ。
エンディング
「東京ラプソディ」
監督・脚本:山口晃ニ
作詞:門田ゆたか / 作曲:古賀政男 / 歌:渥美二郎
[ストーリー] "はっとバス"のバスガイドに扮する瀬戸朝香が渥美二郎の歌う「東京ラプソディ」にのせて21世紀の東京観光へと誘う
[曲解説] この曲は藤山一郎が唄い1936年(昭和11年)6月15日、テイチクレコードより発売されたのが最初である。作曲の古賀政男は、買ったばかりのフォードのクーペで、夜の神宮外苑をドライブしている時、軽快に走る車と夜空の星、木陰からのぞく街の灯などのイメージを重ねこのメロディーを誕生させた。作詞の門田ゆたかは曲ありきで詞を作ることとなり大変苦労したが、曲に合わせ変則的な詞をつけたところ、曲とマッチして大ヒットにつながった。今回、演歌界のプリンス渥美二郎が渋谷のライブハウス、クロコダイルでライブレコーディングしたものを映画で使用している。
By 歯職人
時代の記憶を呼び戻す力において歌謡曲は優位にある。本作品集は、昭和の歌謡曲を素材に、多数の才能が個々の歌謡曲から得た連想と解釈を各自の短編に託しその技量を披露し合ったオムニバスです。
才能の饗宴の効果の積極側面が、随所に溢れている。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000W6MCF8/ref=cm_cr_mts_prod_img
歌謡曲だよ、人生は [DVD]
出演: 青木崇高, 伴杏里, 六平直政, 下元史朗
監督: 磯村一路, 七字幸久
製作者: 桝井省志
形式: Color, Dolby, Widescreen
言語 日本語
リージョンコード: リージョン2 (このDVDは、他の国では再生できない可能性があります。詳細についてはこちらをご覧ください DVDの仕様。)
画面サイズ: 1.78:1
ディスク枚数: 2
販売元: ポニーキャニオン
DVD発売日: 2007/12/05
時間: 130 分
http://www.kayomusic.jp/movie/index.html
オープニング
「ダンシング・セブンティーン」
作詞:橋本淳 / 作曲:筒美京平/ 歌:オックス / ビクターエンタテインメント
[曲解説] 1968年(昭和43年)9月5日リリース
作詞の橋本淳はグループサウンズ(GS)ヒット曲の約7割を手掛けたと言われている。作曲の筒美京平はヒットチャートベスト10入りが203曲あり、そのうち1位は38曲もある日本のポップス界を代表する“不世出の作曲家”である。1969年、オックスの人気は留まることを知らず、浅草のブロマイド店マルベル堂ではタイガース、テンプターズを押さえて年間売上げ男子の部、第1位を獲得する。さらに、ステージでは観客巻き込んでの失神パフォーマンスを繰り広げ、話題をさらった。
第一話
「僕は泣いちっち」
監督・脚本:磯村一路
作詞・作曲:浜口庫之助 / 歌:守屋浩 / コロムビアミュージックエンタテイメント
[ストーリー] 男女の青春、そして夢と挫折を昭和のムードを漂わせ、磯村一路監督が叙情的に描く。
[曲解説] 1959年(昭和34年)9月15日リリース。
1959年以前に、作詞・作曲の浜口庫之助の自信作であるこの曲を二人の歌手が歌ったが、残念ながらヒットには至らなかった。そこで、独特の歌い回しで味がある守屋浩を次に大抜擢したところ、念願のヒットとなる。また、この曲は“ナンセンス歌謡”と呼ばれ、“ちっち”という言葉が流行語となった。この“ナンセンス”で意味をなさない“ちっち”という言葉遊びが耳に心地よくテンポよく残るのは守屋の歌い回しのせいである。
第二話
「これが青春だ」
監督・脚本:七字幸久
作詞:岩谷時子 / 作曲:いずみたく / 歌:布施明 / キングレコード
[ストーリー] 何をやってもへまばかりの大工・藤木貢がひょんなことからエアギター選手権に出場することに。元<MEGADETH>のマーティ・フリードマンによる「これが青春だ」のヘビメタバージョンに合わせ、エアギターをかき鳴らす!
[曲解説] 1966年(昭和41年)12月20日リリース
この曲は竜雷太主演の学園青春ドラマの主題歌。布施明は1965年「君に涙とほほえみを」でデビューし、その後も「霧の摩周湖」「恋」でヒットを飛ばし甘いルックスと渋い歌声でファンを魅了する。作詞は越路吹雪の元マネジャー岩谷時子で、越路が歌うシャンソンの訳詞を手掛けたのをきっかけに作詞家・訳詞家としての活動を始める。作曲のいずみたくは「太陽がくれた季節」や「見上げてごらん夜の星を」など後世に残る名曲を数多く作っている。
第三話
「小指の想い出」
監督・脚本:タナカ・T
作詞:有馬三恵子 / 作曲:鈴木淳 / 歌:伊東ゆかり / キングレコード
[ストーリー] 初老の男、古いアパート、若い娘。夢想の中で偏執的な愛を抱く男を大杉漣が熱演
[曲解説] 1967年(昭和42年)2月10リリース。
伊東ゆかりはバンドマンだった父親にジャズを習い7歳の頃から進駐軍のキャンプ回りをする。その後、1958年にデビューし、1963年には中尾ミエ、園まりとともに3人娘として人気を博す。1967年、「小指の想い出」で大ブレイクし第9回日本レコード大賞・歌唱賞を受賞する。その後も「恋のしずく」「朝の口づけ」「知らなかったの」と次々とヒットを飛ばし、昭和歌謡史に残る名曲を残している。
第四話
「ラブユー東京」
監督・脚本:片岡英子
作詞:上原尚 / 作曲:中川博之 / 歌:黒沢明とロス・プリモス / 日本クラウン
[ストーリー] 太古の昔、男と女が出会い、たちまち恋に落ちた。しかし非情な運命から、二人は引き離されてしまう。
[曲解説] 1966年(昭和41年)4月1日リリース。
1961年、黒沢明とロス・プリモスはラテンコーラスグループとして結成し、1965年にはメインボーカルに森聖二を迎え、歌謡コーラスグループとなる。30年代初頭に和田弘とマヒナ・スターズがムードコーラスの世界を切り拓き、40年代に入ってこのジャンルを一気に開花させたのが、黒沢明とロス・プリモスであった。このデビュー曲で記念すべき第1回目のオリコンチャート(1968年1月4日付)第1位となり、更に連続9週1位を獲得する。この曲は、発売当初B面だったが、その後のヒットによりA面にひっくり返り、年をまたいでの大ヒットとなる。
第五話
「女のみち」
監督・脚本:三原光尋
作詞:宮史郎 / 作曲:並木ひろし / 歌:宮史郎 / コロムビアミュージックエンタテイメント
[ストーリー] 銭湯のサウナで正治は友人と我慢比べをしていた。そこにおじさんが入ってきて…。大ヒット曲「女のみち」の宮史郎を主演に描くド演歌コメディ
[曲解説] 1972年(昭和47年)5月10日リリース
宮史郎は兄の五郎と並木ひろしとともにお笑いグループ、ぴんからトリオを結成し人気を博していた。彼らのデビュー曲「女のみち」のレコードジャケットには、たまたま居合わせた二人と一緒に撮った記念写真を使用している。当初300枚だけ自主制作でプレスされたこの曲は、地元姫路の有線放送で流されるやいなや、ホステスさんたちを中心に爆発的な人気を呼んだ。その結果、レコードは300万枚以上も売れ、一番驚きを隠せなかったのは当の本人たちであった。
第六話
「ざんげの値打ちもない」
監督・脚本:水谷俊之
作詞:阿久悠 / 作曲:村井邦彦 / 歌:北原ミレイ / 東芝EMI
[ストーリー] 海沿いの町でひっそりと暮らす女の前に、昔の男が訪ねてくるが…。男と女の情念の世界で運命の歯車が廻り始める。
[曲解説] 1970年(昭和45年)10月5日リリース。
1970年、南玲子から北原ミレイと芸名を変え歌ったこの曲が大ヒットし、彼女の転機となった。この曲で北原ミレイは歌謡レコード史上最も凄絶な“捨て節”を定着させた。作詞の阿久悠は、ポルトガル辺りで教会へ続く石畳の坂道でよろめいている黒いベールの女性の姿をイメージして書いたという。「時代の虚偽を衝いたから売れたかな」と阿久悠はこの曲のことをのちに語っている。作曲の村井邦彦は「エメラルドの伝説」や「翼をください」など、60年~70年代の青春歌の顔となる数々のヒット曲を作り、またその後もプロデューサーとして、赤い鳥や荒井由実、YMOらを世に送り出した。
第七話
「いとしのマックス」
監督・脚本:蛭子能収
作詞・作曲・歌:荒木一郎 / ビクターエンタテインメント
[ストーリー] 地味で目立たない沢口良子は、いつも会社でいじめられている。そんな良子を見守ることしかできない一郎。蛭子能収監督が得意とする不条理ワールドが炸裂した怪作。
[曲解説] 1967年(昭和42年)5月15日リリース。
同年、この曲はビクターレコードの売上げ第1位を記録するミリオンセラーとなり、荒木一郎は第18回紅白歌合戦に初出場を果たす。その当時、荒木はよく加山雄三と比較された。共にシンガーソングライターであり、自らエレキギターを弾きバックバンドを従えるといった類似点はあるが、各々が全く違う個性を放っていた。常に加山は太陽のような存在で荒木は月のような存在であったが、当時の若者は荒木の飾らない自然体の言動に共感した。繊細な若者の心理を見事に体現した荒木こそ時代のヒーローであった。
第八話
「乙女のワルツ」
監督・脚本:宮島竜治
作詞:阿久悠 / 作曲:三木たかし / 歌:伊藤咲子 / 東芝EMI
[ストーリー] 若い頃、横浜・本牧でバンドを組んでいたマモル。今はしがない喫茶店のマスター経営していた。そこへお客として来た女性に昔の彼女の面影をみつけ。
[曲解説] 1975年(昭和50年)7月5日リリース。
テレビのオーディション番組『スター誕生』は“花の中3トリオ”と呼ばれた桜田淳子、山口百恵、森昌子らを始めとするスターを世に送り出した。歌手の登竜門であるこの番組に伊藤咲子も登場し、阿久悠に認められ「ひまわり娘」でデビューを果たす。アイドルでありながら、当初から実力歌手としての評価も得ていた。そして、伊藤のシングル曲の半数近くは作詞が阿久悠、作曲は黛ジュンの実兄でもありポップスから演歌まで手掛けた三木たかしである。
第九話
「逢いたくて逢いたくて」
監督・脚本:矢口史靖
作詞:岩谷時子 / 作曲:宮川泰 / 歌:園まり / 渡辺音楽出版
[ストーリー] アパートに引越して来たばかりの鈴木夫妻は、ゴミ置き場から「連絡済み 五郎丸」と貼り紙のある文机を拾ってくる。その引き出しには、五郎丸が女性に宛てて書いた手紙が大量に隠されていた
[曲解説] 1966年(昭和41年)1月5日リリース。
1965年、園まりはこの曲で第16回紅白歌合戦出場を果たす。その後も「夢は夜ひらく」、続いて「愛は惜しみなく」でヒットを飛ばし、持ち前の透明感のある歌声でファンを魅了し続けた。作曲の宮川泰は、ザ・ピーナッツの育ての親として知られ「恋のバカンス」などのポップソングを数多く手掛ける。しかし、昨年3月に多くの歌手、ファンに惜しまれつつも亡くなった。のちに、園は「今があるのも先生のお蔭」と語り、宮川を敬愛していたことが窺える。
第十話
「みんな夢の中」
監督・脚本:おさだたつや
作詞・作曲:浜口庫之助 / 歌:高田恭子 / キングレコード
[ストーリー] 美津江は同窓会が行われる小学校を訪れ、懐かしい旧友たちと再会する。そして校庭から掘り起こしたタイムカプセルの中に入っていた8ミリフィルムの上映が行われる…。夢見る大人のファンタジードラマ。
[曲解説] 1969年(昭和44年)3月1日リリース。
高田恭子は、中学生の頃から関西でフォークソングを歌い始め、その後、マイク真木にスカウトされ上京する。そして、マイク真木率いるザ・マイクスで活動していたが、解散後は心機一転し第1回カンツォーネコンクールに出場。そして優勝したことをきっかけに作詞・作曲家の浜口庫之助に認められ「みんな夢の中」を書いてもらう。この曲が高田恭子のデビューヒット曲となる。浜口は40歳から作詞・作曲を始め、時代を超え世代を超えてファンに愛される曲を生み出し、その数約4000曲以上に及ぶ。
エンディング
「東京ラプソディ」
監督・脚本:山口晃ニ
作詞:門田ゆたか / 作曲:古賀政男 / 歌:渥美二郎
[ストーリー] "はっとバス"のバスガイドに扮する瀬戸朝香が渥美二郎の歌う「東京ラプソディ」にのせて21世紀の東京観光へと誘う
[曲解説] この曲は藤山一郎が唄い1936年(昭和11年)6月15日、テイチクレコードより発売されたのが最初である。作曲の古賀政男は、買ったばかりのフォードのクーペで、夜の神宮外苑をドライブしている時、軽快に走る車と夜空の星、木陰からのぞく街の灯などのイメージを重ねこのメロディーを誕生させた。作詞の門田ゆたかは曲ありきで詞を作ることとなり大変苦労したが、曲に合わせ変則的な詞をつけたところ、曲とマッチして大ヒットにつながった。今回、演歌界のプリンス渥美二郎が渋谷のライブハウス、クロコダイルでライブレコーディングしたものを映画で使用している。