自民党政治の機能不全の病状診断, 2008/9/15
By 歯職人
田中角栄に人格的に代表される自民党政権システムと、現在の安倍福田と続く政権崩壊・自民党システムの機能不全の歴史的意味を解き明かす一冊です。
著者の野中は、戦後を「戦争と外交の無い江戸期」と対比しその文化的意味を解き明かす。そして、冷戦後・旧ソ連圏の崩壊を期にアメリカから自立せざる負えない日本の政治経済的背景が語られる。
自民党がかくも長く政権を維持し続けた一端を、中選挙区制、個人後援会、自民党の相対的に巨大な本部システム、派閥による人材発掘・育成と党による利害調整・統合システムの優位性、利益配分を可能とした経済成長、官僚組織との共栄・共存、憲法規定による議会での党優位、議会与党権力の優位性等から解き明かす。
小沢一郎が、自民党権力中枢を一度は手にしながらそれらを破壊する側に回る逆説は、やや説明不足と思われる。
小泉純一郎が、「自民党をぶっ壊す」と叫び実態としては、旧田中派・経世会(郵政・道路公団)との権力闘争を繰り広げる政局の小泉個人の動機は了解できるが、竹中に代表される「改革」派の動機と時代背景については、解明不足か。
本書は、現行憲法の下、第二次大戦後から冷戦終了までその役割と機能を果たした自民党と、時代に適応する道を探りながら今だ探り当てることなく機能不全を露にした現在の自民党の姿を描く。
最後に野中は、「ヨーロッパ標準の議院内閣制への本格的転換」を希望するが、日本における民主主義の歴史と選挙民の成熟度を考えれば、それは叶わぬ夢と言えまいか。
ジミントウセイジノオワリ チクマシンショ
自民党政治の終わり
野中 尚人【著】
(2008/09/10 出版)
253p / 18×11cm
ISBN: 9784480064462
NDC分類: 315.1
価格: ¥798 (税込)
詳細
戦後日本の長きにわたって政権党であり続けた自由民主党。
派閥ごとに結束し、年功序列型の人事制度をもち、後援会と各種業界団体に支えられたこの巨大政党は今、機能不全を起こし、そのシステムの骨格は既に崩壊している。
かつて自民党が圧倒的な強さを発揮しえたのはなぜか、それがいま存在感を失いつつあるのはなぜか。
歴史の視点、さらには国際比較の視点をも交えながらその来歴を明らかにし、これからの日本政治を展望する。
第1章 自民党システムへの反逆者、小沢一郎―小沢一郎と自民党システム(政治改革への執念と内部抗争;小沢の成功と失敗)
第2章 救世主にして破壊者、小泉純一郎―小泉純一郎と自民党システム(反経世会の政治手法;郵政民営化;小泉は自民党を壊したか?)
第3章 自民党システムとは何か?(「自然な与党」であり得た理由;人事のルールとそのシステム;合意を重視する意思決定)
第4章 歴史と比較から見た自民党システム(江戸から見た戦後日本政治;国際比較から見た自民党システムの成立)
第5章 自民党システムの終焉(自民党型「戦後合意」の崩壊;「戦後」から「冷戦後」、そしてグローバル化へ;新しい政治システムへの展望)
著者紹介
野中尚人[ノナカナオト]
1958年高知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻博士課程修了。博士(学術)。比較政治学を専攻。現在、学習院大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
By 歯職人
田中角栄に人格的に代表される自民党政権システムと、現在の安倍福田と続く政権崩壊・自民党システムの機能不全の歴史的意味を解き明かす一冊です。
著者の野中は、戦後を「戦争と外交の無い江戸期」と対比しその文化的意味を解き明かす。そして、冷戦後・旧ソ連圏の崩壊を期にアメリカから自立せざる負えない日本の政治経済的背景が語られる。
自民党がかくも長く政権を維持し続けた一端を、中選挙区制、個人後援会、自民党の相対的に巨大な本部システム、派閥による人材発掘・育成と党による利害調整・統合システムの優位性、利益配分を可能とした経済成長、官僚組織との共栄・共存、憲法規定による議会での党優位、議会与党権力の優位性等から解き明かす。
小沢一郎が、自民党権力中枢を一度は手にしながらそれらを破壊する側に回る逆説は、やや説明不足と思われる。
小泉純一郎が、「自民党をぶっ壊す」と叫び実態としては、旧田中派・経世会(郵政・道路公団)との権力闘争を繰り広げる政局の小泉個人の動機は了解できるが、竹中に代表される「改革」派の動機と時代背景については、解明不足か。
本書は、現行憲法の下、第二次大戦後から冷戦終了までその役割と機能を果たした自民党と、時代に適応する道を探りながら今だ探り当てることなく機能不全を露にした現在の自民党の姿を描く。
最後に野中は、「ヨーロッパ標準の議院内閣制への本格的転換」を希望するが、日本における民主主義の歴史と選挙民の成熟度を考えれば、それは叶わぬ夢と言えまいか。
ジミントウセイジノオワリ チクマシンショ
自民党政治の終わり
野中 尚人【著】
(2008/09/10 出版)
253p / 18×11cm
ISBN: 9784480064462
NDC分類: 315.1
価格: ¥798 (税込)
詳細
戦後日本の長きにわたって政権党であり続けた自由民主党。
派閥ごとに結束し、年功序列型の人事制度をもち、後援会と各種業界団体に支えられたこの巨大政党は今、機能不全を起こし、そのシステムの骨格は既に崩壊している。
かつて自民党が圧倒的な強さを発揮しえたのはなぜか、それがいま存在感を失いつつあるのはなぜか。
歴史の視点、さらには国際比較の視点をも交えながらその来歴を明らかにし、これからの日本政治を展望する。
第1章 自民党システムへの反逆者、小沢一郎―小沢一郎と自民党システム(政治改革への執念と内部抗争;小沢の成功と失敗)
第2章 救世主にして破壊者、小泉純一郎―小泉純一郎と自民党システム(反経世会の政治手法;郵政民営化;小泉は自民党を壊したか?)
第3章 自民党システムとは何か?(「自然な与党」であり得た理由;人事のルールとそのシステム;合意を重視する意思決定)
第4章 歴史と比較から見た自民党システム(江戸から見た戦後日本政治;国際比較から見た自民党システムの成立)
第5章 自民党システムの終焉(自民党型「戦後合意」の崩壊;「戦後」から「冷戦後」、そしてグローバル化へ;新しい政治システムへの展望)
著者紹介
野中尚人[ノナカナオト]
1958年高知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻博士課程修了。博士(学術)。比較政治学を専攻。現在、学習院大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)