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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 ただいまお気に入り TPPと医療の産業化 二木立(著)

2012年12月29日 | 日本歯技


日本歯技
2013年1月号

ただいまお気に入り

『TPPと医療の産業化』二木立(著)
●単行本: 222ページ
●出版社: 勁草書房 (2012/5/12)
●価格: ¥2,625 (税込)
●著者略歴
 1947年生
 1972年 東京医科歯科大学医学部卒業 代々木病院リハビリテーション科科長・病棟医療部長・理事等を経て
 現在 日本福祉大学教授・副学長・常任理事
 2013年4月1日より日本福祉大学学長就任予定

 昨年末の衆議院議員総選挙において、「争点」の一つに挙げられたTPP(環太平洋戦略的連携協定)は、「言葉は踊る、されど理解は進まず」の様相を脱することは無かったのではないでしょうか。
 大量の報道と言う名の情報の洪水の中、TPPと医療の関係については、農業分野の遥か後景にあり、その姿は見えず、一部に「TPPにより日本の医療提供体制が崩壊する」との「地獄のシナリオ」が語られましたが、その根拠と詳細なプロセスを明らかにする者はいなかったと思います。
 本書は、医師の経験を踏まえ、医療経済・政策学の研究者の立場からの分析を時評として継続的に発表し続ける二木立先生のTPP問題を中心とした所論を編んだ一冊です。
学者・研究者の文章は、難解あるいは読み難い、取つき難いとの印象がありますが、この著者がお書きになるものは、端正でかつ論理が明瞭であり、読んでいる途中で方向感覚を失うことがありません。
 著者の基本姿勢が、「あるべき医療」(最適でユニバーサルな医療)と現実に「ある医療」の相克を明らかにした上で、現下の問題について原資料を時系列に丁寧に辿り、問題の本質に迫るという手堅い分析手法を用い、対象の事柄に対し「批判的に、しかし複眼的に」論理を深めていくもので、論理の断絶や飛躍、牽強付会がありません。
本年夏には、参議院議員通常選挙が予定されています。政治の世界が語られる医療問題は、多くの場合には財政であり、負担の問題です。個別具体的な事柄へのアプローチは、当事者による提起が必須のものと思います。
 なお、本書を読む際には、インターネットでダウンロード可能な日本医師会総合政策研究機構(日医総研)坂口一樹研究員のTPP関連のレポート(日医総合研ワーキングペーパー)の併読をお勧めします。

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