○和田静夫君 まず厚生省の関係で、昨年の十二月に報道されました大分県の歯科医師会の振替請求をめぐる諸問題について質問をするのでありますが、実は委員長、いま私がここへ座りましたら、国税庁の国会の担当の方が見えまして、要求をしてありました国税庁長官が出席をできないと、こういうことであります。
きょうとあしたは参議院の決算委員会を開くということはもう十二月から決めていることです。大蔵大臣も実はきょうは、これは外国でありますが、しかもまあ私たちが知らぬうちに出かけられた。国税庁長官は国内のどこかにいる。出てこれない。冒頭の質問は実は国税庁長官なのであります。決算委員会を予算委員会並みに重視をするということは、これは両院を通じてずっと確認をしてきたことであるにもかかわらず、大蔵関係の主要なトップクラスが全部決算をボイコットする。じゃ総理に出てきてもらうという以外になくなるわけですが、ともあれ国税庁長官出てこないので質問に入るわけにいかぬわけです。委員長にこの取り扱いを御協議願いたいと思いますがね。
○委員長(竹田四郎君) これは大蔵省どうなっておりますか。
○政府委員(塚原俊平君) 大蔵省の政務次官でございます。
まず大臣につきまして、外交日程で外遊をいたしておりまして、大変に先生からおしかりを受けたわけでございますけれども、かねてより総理の方からも御答弁申し上げておりますとおり、大蔵省十分に決算委員会の最重要性というものを認識して今日まで行動をいたしてまいったわけでございますが、国税庁長官につきましても、どうしても本日前々からの日程でございまして出張ということと重なってしまいまして、和田先生からのおしかり、まことにもう私ども申しわけない限りでございますけれども、どうか、政務次官それから直税部長出席をいたしております、何とぞよろしく御配慮のほどお願いを申し上げます。
○和田静夫君 これはちょっと私、了承できないんです。特に国税庁の守秘義務問題で論議をしようというときでありまして、しかもいま大蔵政務次官の御答弁がありましたから、大蔵政務次官に別に反論しようと思わないですが、いままでの国会対策のことから考えてみますと、大蔵省の政府委員室というのは直接的には国税庁問題には関与しない、国税庁は国税庁のいわゆる国会対策の係がいろいろの協議に応じていくんですというのがこれは公式のあり方でした。そういう立場でずっと接触をしてきました。いまここに質問者が座ったら初めて国税庁の国会担当者が来て、国税庁長官は出ることはできません、こういう言い方というのは不見識もはなはだしいと私は思いますよ。これぐらい決算委員会が愚弄されて、そして了承して事を運ぶと、そんなわけに私はいかぬ。
○委員長(竹田四郎君) ちょっと速記をとめてください。
〔午前十時十八分速記中止〕
〔午前十時三十四分速記開始〕
○委員長(竹田四郎君) 速記を起こして。
○和田静夫君 国税庁の次長にまず質問いたしますが、昨年年末にこの大分県を初めとする日本の歯科医師の不正請求事件について幾つかの報道がありました。
大分県の歯科医師の振替請求といいますか、不正請求といいますか、内容的には、ニッケルクロム合金を治療に用いながら、金銀パラジウムを用いたとして不正請求が行われたというのが税務調査でおわかりになったということになりますね、これは。
○政府委員(酒井健三君) 私ども国税当局、昭和五十五年分の事後調査の一環といたしまして、一昨年の八月以来医師及び歯科医師の社会保険診療報酬に係る必要経費の特例計算に関する調査を行っておりましたが、その後、大分県におきまして二、三の歯科医師を調査いたしました関連から、県内の各所の歯科医師から自主的に修正申告が出されたというふうに聞いております。
○和田静夫君 ニッケルクロム合金が金銀パラジウムに比べて著しく安い、加工がしやすくなった、にもかかわらず、保険対象にすることが放置をされてきたわけですね。今回の事件の発生というのはここにあるわけでしょうけれども、いわば技術的なそういう一因、そういうこの技術改良に対する行政の立ちおくれというのは、これは厚生大臣、問題としてありませんか。
○国務大臣(林義郎君) ニッケルクロム合金に変えるという話は前からいろいろと議論をされておりましたし、懸案になっておったところの問題で
ございますし、今回の事件があったからということではなくて、前から議論のありました問題でありましたから、今回の診療報酬の改正で解決をしたところでございます。
○和田静夫君 それだから私は、二月からそうやられることを知らぬわけじゃありませんが、行政上のやっぱりおくれというのが技術革新等の関係ではあったんじゃないだろうかということを考えるんですが、その辺はいかがなんですかね。
○国務大臣(林義郎君) 技術的な問題でございますから、担当の局長からお答えさせます。
○政府委員(吉村仁君) お答えを申し上げます。
ニッケルクロムの鋳造は約十年前ぐらいから一応可能ということで、私どもといたしましては、鉤だとかあるいは冠用には製品化されたものを保険に取り入れておりました。しかしながら鋳造歯冠修復のために使うニッケルクロムにつきましては、材質のかたさだとかあるいは鋳造技術のむずかしさ等がいろいろ問題でございましたので、この改良が行われるのを待っておったわけでございますが、一応そういう改良というものが可能になったのが、私どもとしては二、三年前ぐらいからだと、こういうように聞いております。したがってそういうものが可能になったとすれば、一応学会の意見も聞きまして、保険の中に取り入れるべきかどうかということを検討してまいったわけでございます。そして今回の診療報酬の改定におきまして、学会の方からもよかろうと、こういう一応の御意見をいただきましたんで、それに基づきまして今回の改定で取り上げたと、こういうことでございます。
確かに学問の進歩あるいはそういう技術の進歩に伴いまして、それを保険診療の中に遅滞なく取り入れていくと、こういうことは、これは非常に重要なことでございまして、私どももそういう方向でいろいろやってまいってきたつもりでございますが、若干中医協の審議だとかそういう学会の御答申をいただくとか、そういうようなことで若干のおくれが出てくるということも、これは先生御指摘のとおりではないかと、こういうように思います。
○和田静夫君 昨年の六月にこの診療報酬を改定したわけですが、その後診療報酬は横ばいないし微増程度でふえていない。これは一体どういうことだろう。これは何も歯科医師に限りませんがね、医師、歯科医師含んで。こういう事実というのは、やっぱり不正請求が存在をしている客観的なバロメーターの一つじゃないだろうか。これは大臣どうです。
○国務大臣(林義郎君) 不正請求の一つのバロメーターかどうかと、こういうお話でございますが、私はいま局長から御答弁申し上げましたように、医療技術、いろんな新しい技術が出てくるし、それを取り入れていくということはもちろんやっていかなければなりませんが、やはり医療でございますから相当確実な技術、確定、安定された技術ということにならなければやはりいかぬのだろうと、こう思うのです。だから、そこが単に取り上げるのがおくれたからそれが不正請求の、というところにはすぐには私は結びつかないんではないだろうかというふうに考えております。
○和田静夫君 いまの同じ質問、どうです、保険局長。
○政府委員(吉村仁君) 確かに先生御指摘のように、医療費の伸びが若干鈍化をしていることは、これは事実でございます。私ども医療費が一つ世間の非常に大きな問題になっておりますし、臨調におきましても非常に大きな問題として取り上げられておるのが現状でありますが、したがって医療費の適正化については厚生省といたしまして、あるいは保険局といたしましても十分力を注いできておるつもりでございます。それから、診療報酬の改定におきましても、やはり乱用が起こらないような形で診療報酬の改定を行ってきておるつもりでございます。あれやこれやでやはり医療費の伸びが少し鈍化をしておると、こういうことだと私どもは思っておりますが、そういう鈍化をしたがゆえに片一方で不正請求が行われているというようには私どもは解しておりません。
○和田静夫君 大分県の今度の問題で、歯科医師のうちに大体何割ぐらい不正請求をしたというふうに判断されていますか。実は私、非常に短時間の持ち時間ですから、簡単に答弁してください。
○政府委員(吉村仁君) 何割ということはわかりかねます。
○和田静夫君 私は、実はこの問題というのは、組織ぐるみで行われたというふうに見ています。たとえば別府市あるいは大分市の歯科医師の非常に多くの部分が、同一のような形でもって振替請求を行っているわけですね。俗な言葉で言えば不正請求を行っている。それが結果的にはさっき冒頭国税庁次長が答弁をしたように、自発的な修正申告と言われますが、修正申告が指導されるという状態でもって修正申告が行われるという状態になったんですが、これらの調査は当然厚生省として今後お進めになりますまね。これが一つ。
それからもう一つは、大分だけではなくてね、全国的に広がっている可能性がこれはあります。もうきょうは時間がありませんからたくさんのことを申しませんが、たとえば毛利大分県歯科医師会長のインタビューの記事をずうっと読んでみますと、「東京や大阪でもやっているだろう。むしろ大分あたりは東京より三、四年遅れている」というような談話があってみたり、「こうした請求の仕方は大分に限っているわけではない。」という率直な述べ方があってみたり、いろいろしていること、これは報道の関係でありますから、御本人がどう言われたか別として、そういうことがある。そうすると、少なくとも特定をされている東京、大阪というような地域についても、これは当然調査がされてしかるべきだと、そう思いますが、そういう対処をされますか。二つ目ですね。
それから三つ目は、「不正受給で得た収入は保険者が支払ったもので、本来は保険者に返還されるべきではないか。」という設問に対して、「ニッケルクロムは金銀パラジウムに劣らず、あるいはより優れた性質を持った材料。そのニッケルクロムで治療した以上、医療の質は保たれていると考えている」。これは新聞記事で明らかにしている。読売の十二月二十日の記事ですね。こういうふうに答えられているとすれば、この辺はやはり非常に問題なんですよね、三つ目は。
これらについてどういうふうに厚生省お考えになるんですか。
○政府委員(吉村仁君) 第一の大分県に関する調査につきましては、現在大分県に指示をいたしまして調査をやっております。したがって、今後も継続して調査を行います。
それから、第二点のその他の地域におきましてもそういう同じ事例があるんではないか、こういう点に関しましては、私ども大分県以外の都道府県に対しましても同様な指示をいたしまして、不正の根絶とそれから要すれば調査をするように指示をしております。
それから、第三番目の返還の問題でございますが、私は不正が行われておるならば当然返還を要求すべきものだと、こういうように思っております。
○和田静夫君 そこで、国税庁ね、診療報酬の不正請求に関して税務調査をされたということになるわけですが――いや、まず厚生省に聞きますがね、厚生省はこの国税庁の調査の内容を正確におつかみになっていますか。
○政府委員(吉村仁君) 個々の歯医者さんがどういうことをされたかということについてはつかんでおりませんが、先ほど先生御指摘のようなニッケルクロムを使いながら金銀パラジウム合金の値段で請求をした、それが修正申告のもとになっておる、この事実は知っております。
○和田静夫君 そうするとね、この振替請求をした場合に、その保険医に対する処分というのは大体一般的にはどんなものですか。
○政府委員(吉村仁君) 不正の態様それから量と申しますか、何人に対してやったかというようなことと関連をいたしますが、一般的に申し上げますならば、不正請求をした場合には取り消しと、
そして若干軽い場合には戒告処分と、こういうのが通例でございます。
○和田静夫君 国税庁ね、国税犯則取締法二十二条の一項、扇動犯があるわけですがね、今回の場合の不正請求が仮に組織ぐるみである、だれかが指導していた場合はこの容疑が出てくると思いますが、そうでしょうか。
○政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。
先生御指摘のように、国税犯則取締法第二十二条に扇動犯の規定がございまして、若干省略して申し上げますと、国税の虚偽の申告をなすことを扇動した者には罰則を科すというふうに規定してございますが、国税犯則取締法第一条に言う「国税ニ関スル犯則事件」という前提がございまして、国税の犯則を扇動したという話になるのかどうか。不正の申告というか、請求をなさるという事実はあったのかもしれませんけれども、国税の犯則というところになるのか。その辺がこの国犯法で言う国税犯則には含まれなくて国犯法の調査及び処分の対象となっていない。したがいまして、具体的な事実関係が国犯法二十二条の構成要件に該当するかどうかちょっといまの段階では申し上げかねる状況でございます。
○和田静夫君 国税庁、これは報道でありますからあれですが、大分税務署が県歯科医師会との交渉の中で、まず第一に修正は五十五、五十六年の二年間限りとする、それから二つ目は、厚生省には不正の事実は知らせないと約束をしたと。これは事実であるとすれば大変な問題であるわけですが、この事実関係は確認されますか。
○政府委員(酒井健三君) 私ども新聞報道でそういうことを耳にいたしておりまして、早速国税局を通じまして大分県の税務署に照会をいたしましたが、今回の大分県の歯科医師の社会保険診療報酬の不正請求に関しまして、大分県下の税務署が御指摘のような条件つきで修正申告を行った事実はないというふうに聞いておりまして、先ほど申し上げましたように歯科医師から自主的に修正申告が提出されたという報告を受けておる次第でございます。
○和田静夫君 そうすると、その五十五年、五十六年の修正申告だけというのはどういうわけですか、これは。
○政府委員(酒井健三君) 私どもまず最初に大分県で事後調査の一環といたしまして二、三の歯科医師に対して調査を行ったわけですが、もちろんその調査を受けた五十五年分の調査を主体としておりまして、それの関係で五十五年の修正申告が出てきたということを聞いております。それから五十六年につきましては、一度申告書が出されて、その後に修正申告が出てきたということではないと、最初から不正請求にかかるものについては特例を適用しない形で出てきているというふうに聞いております。
○和田静夫君 大分県の歯科医師会としていわゆる修正申告に応ずべきだという形でもって一つの指令とまではいきませんが、統一した見解が流されると、その前提には熊本国税局あるいは大分税務署との協議があってそういう形になってくるということになったわけですがね、これはやっぱり組織的ですよね、そうなれば。いや、あなたの方が組織的と言うんじゃないですよ、相手方がさ。
○政府委員(酒井健三君) 私どもが報告を受けておるところでは、その五十五年分の所得について二、三の歯科医師の方を調査をしたと、そうしたらその歯科医師の方々が歯科医師会の方には御相談をなさったと、どういうふうにしたらいいかと。そういうことがあったやに聞いておりますが、歯科医師会の方が歯科医師の皆さんに対してどういうような御指導をなさったのか私どもは承知いたしておりません。
○和田静夫君 これはおいおい厚生省の調査が進めば組織的であるかどうかわかってきましょうから、その時点でもう一遍問題にするということにするとしまして、大蔵政務次官、非常に恐縮なんですが、実は五十六年の予算委員会の論議で私と渡辺大蔵大臣、園田厚生大臣との論議がございまして、東洋信販問題というのがございましたね。これもまあ医師の脱税に関する問題であったわけです。この医師の脱税の問題に関して論議をしていく過程で、言ってみれば守秘義務問題との関係で幾つかの論議がありました。この種問題については大蔵大臣と厚生大臣で協議をしながら不正申告には今後対処をいたしますという答弁になってきているわけです。したがって、それは当然今日の両大臣にも引き継がれていると思うのでありますが、大分歯科医師の今度の問題に端を発する不正申告問題については、当然予算委員会におけるところの私に対する答弁の趣旨が守られて大蔵、厚生両大臣のもとにおける不正申告問題についての協議が行われてしかるべきである、こういうふうに考えていますが、大蔵省の側はその態度は変わりませんでしょうね。
○政府委員(塚原俊平君) 今回の税務調査を行うに当たりましても、国税当局が厚生省当局からもいろいろな示唆をいただいておるわけでございますし、一方、国税当局といたしましても今回の調査で国税当局が把握をした不正請求の手口やその調査のやり方等についても厚生当局に示す等の協力をしてまいっております。ですから今後とも厚生省に対しましてもできるだけ協力させたいというふうに考えております。
○和田静夫君 検察庁、今度の事件というのは刑法の詐欺罪には当たりませんか。
○政府委員(前田宏君) 具体的な事案につきましてどういう犯罪が成立するかということになりますと、その事実関係を明確に把握しませんと確定的なことは申し上げられないわけでございますけれども、いわゆる不正請求といいますか、それが水増しであるとかあるいは架空であるとか、いろいろな問題があろうかと思いますが、そういう場合には一応詐欺罪ということが問題になろうかと思います。
○和田静夫君 今度のこの報道を中心とする事件について、検察庁は重大な関心をお持ちでしょうか。
○和田静夫君 警察庁ですが、この事件に対してどういうふうな対処をされていますか。
○政府委員(金澤昭雄君) お答えをいたします。
警察といたしましては、現在大分県警察におきまして関係機関、関係者、いろいろと事情聴取を行うなどいたしまして、現在実態把握に努めておるところでございます。
○和田静夫君 もう時間がありませんから何ですが、国税庁ね、守秘義務との問題で少し論議をしたかったんですが、時間がなくなりましたから大蔵委員会その他に譲ってもいいと思っていますが、健保法違反容疑者ですね、今度の場合、健康保険法の違反容疑者を結果としてかくまうというような役割りを演ぜられることはないでしょうね。
○政府委員(酒井健三君) 私どもの方はもちろん税法に基づきまして適正な税務を執行するということが基本でございまして、いかなる事案につきましてもその基本に基づいて行って、ほかの何らかの意図を持って行動することはございません。
○和田静夫君 国税庁ね、これちょっと発展をしていくとある意味じゃ刑事事件になる。いま検察、警察両方がお答えになった推移を見なければなりませんが、私もそれを静かに見ていますけれ
ども、つまり犯人を隠すおそれのある行為といいますか、守秘義務を盾にとってそういうことになりかねないことも実は考えられるんですね。いま思えば、大平大蔵大臣とここで守秘義務問題でいろいろ、私、論議をしたことを思い出しますけれども、守秘義務について、あらゆる場合に秘密を漏らしていけないのかどうかということですね。国家公務員法百条その他の問題との関係では、いまはどういうふうに国税庁お考えになっていますか。
きょうとあしたは参議院の決算委員会を開くということはもう十二月から決めていることです。大蔵大臣も実はきょうは、これは外国でありますが、しかもまあ私たちが知らぬうちに出かけられた。国税庁長官は国内のどこかにいる。出てこれない。冒頭の質問は実は国税庁長官なのであります。決算委員会を予算委員会並みに重視をするということは、これは両院を通じてずっと確認をしてきたことであるにもかかわらず、大蔵関係の主要なトップクラスが全部決算をボイコットする。じゃ総理に出てきてもらうという以外になくなるわけですが、ともあれ国税庁長官出てこないので質問に入るわけにいかぬわけです。委員長にこの取り扱いを御協議願いたいと思いますがね。
○委員長(竹田四郎君) これは大蔵省どうなっておりますか。
○政府委員(塚原俊平君) 大蔵省の政務次官でございます。
まず大臣につきまして、外交日程で外遊をいたしておりまして、大変に先生からおしかりを受けたわけでございますけれども、かねてより総理の方からも御答弁申し上げておりますとおり、大蔵省十分に決算委員会の最重要性というものを認識して今日まで行動をいたしてまいったわけでございますが、国税庁長官につきましても、どうしても本日前々からの日程でございまして出張ということと重なってしまいまして、和田先生からのおしかり、まことにもう私ども申しわけない限りでございますけれども、どうか、政務次官それから直税部長出席をいたしております、何とぞよろしく御配慮のほどお願いを申し上げます。
○和田静夫君 これはちょっと私、了承できないんです。特に国税庁の守秘義務問題で論議をしようというときでありまして、しかもいま大蔵政務次官の御答弁がありましたから、大蔵政務次官に別に反論しようと思わないですが、いままでの国会対策のことから考えてみますと、大蔵省の政府委員室というのは直接的には国税庁問題には関与しない、国税庁は国税庁のいわゆる国会対策の係がいろいろの協議に応じていくんですというのがこれは公式のあり方でした。そういう立場でずっと接触をしてきました。いまここに質問者が座ったら初めて国税庁の国会担当者が来て、国税庁長官は出ることはできません、こういう言い方というのは不見識もはなはだしいと私は思いますよ。これぐらい決算委員会が愚弄されて、そして了承して事を運ぶと、そんなわけに私はいかぬ。
○委員長(竹田四郎君) ちょっと速記をとめてください。
〔午前十時十八分速記中止〕
〔午前十時三十四分速記開始〕
○委員長(竹田四郎君) 速記を起こして。
○和田静夫君 国税庁の次長にまず質問いたしますが、昨年年末にこの大分県を初めとする日本の歯科医師の不正請求事件について幾つかの報道がありました。
大分県の歯科医師の振替請求といいますか、不正請求といいますか、内容的には、ニッケルクロム合金を治療に用いながら、金銀パラジウムを用いたとして不正請求が行われたというのが税務調査でおわかりになったということになりますね、これは。
○政府委員(酒井健三君) 私ども国税当局、昭和五十五年分の事後調査の一環といたしまして、一昨年の八月以来医師及び歯科医師の社会保険診療報酬に係る必要経費の特例計算に関する調査を行っておりましたが、その後、大分県におきまして二、三の歯科医師を調査いたしました関連から、県内の各所の歯科医師から自主的に修正申告が出されたというふうに聞いております。
○和田静夫君 ニッケルクロム合金が金銀パラジウムに比べて著しく安い、加工がしやすくなった、にもかかわらず、保険対象にすることが放置をされてきたわけですね。今回の事件の発生というのはここにあるわけでしょうけれども、いわば技術的なそういう一因、そういうこの技術改良に対する行政の立ちおくれというのは、これは厚生大臣、問題としてありませんか。
○国務大臣(林義郎君) ニッケルクロム合金に変えるという話は前からいろいろと議論をされておりましたし、懸案になっておったところの問題で
ございますし、今回の事件があったからということではなくて、前から議論のありました問題でありましたから、今回の診療報酬の改正で解決をしたところでございます。
○和田静夫君 それだから私は、二月からそうやられることを知らぬわけじゃありませんが、行政上のやっぱりおくれというのが技術革新等の関係ではあったんじゃないだろうかということを考えるんですが、その辺はいかがなんですかね。
○国務大臣(林義郎君) 技術的な問題でございますから、担当の局長からお答えさせます。
○政府委員(吉村仁君) お答えを申し上げます。
ニッケルクロムの鋳造は約十年前ぐらいから一応可能ということで、私どもといたしましては、鉤だとかあるいは冠用には製品化されたものを保険に取り入れておりました。しかしながら鋳造歯冠修復のために使うニッケルクロムにつきましては、材質のかたさだとかあるいは鋳造技術のむずかしさ等がいろいろ問題でございましたので、この改良が行われるのを待っておったわけでございますが、一応そういう改良というものが可能になったのが、私どもとしては二、三年前ぐらいからだと、こういうように聞いております。したがってそういうものが可能になったとすれば、一応学会の意見も聞きまして、保険の中に取り入れるべきかどうかということを検討してまいったわけでございます。そして今回の診療報酬の改定におきまして、学会の方からもよかろうと、こういう一応の御意見をいただきましたんで、それに基づきまして今回の改定で取り上げたと、こういうことでございます。
確かに学問の進歩あるいはそういう技術の進歩に伴いまして、それを保険診療の中に遅滞なく取り入れていくと、こういうことは、これは非常に重要なことでございまして、私どももそういう方向でいろいろやってまいってきたつもりでございますが、若干中医協の審議だとかそういう学会の御答申をいただくとか、そういうようなことで若干のおくれが出てくるということも、これは先生御指摘のとおりではないかと、こういうように思います。
○和田静夫君 昨年の六月にこの診療報酬を改定したわけですが、その後診療報酬は横ばいないし微増程度でふえていない。これは一体どういうことだろう。これは何も歯科医師に限りませんがね、医師、歯科医師含んで。こういう事実というのは、やっぱり不正請求が存在をしている客観的なバロメーターの一つじゃないだろうか。これは大臣どうです。
○国務大臣(林義郎君) 不正請求の一つのバロメーターかどうかと、こういうお話でございますが、私はいま局長から御答弁申し上げましたように、医療技術、いろんな新しい技術が出てくるし、それを取り入れていくということはもちろんやっていかなければなりませんが、やはり医療でございますから相当確実な技術、確定、安定された技術ということにならなければやはりいかぬのだろうと、こう思うのです。だから、そこが単に取り上げるのがおくれたからそれが不正請求の、というところにはすぐには私は結びつかないんではないだろうかというふうに考えております。
○和田静夫君 いまの同じ質問、どうです、保険局長。
○政府委員(吉村仁君) 確かに先生御指摘のように、医療費の伸びが若干鈍化をしていることは、これは事実でございます。私ども医療費が一つ世間の非常に大きな問題になっておりますし、臨調におきましても非常に大きな問題として取り上げられておるのが現状でありますが、したがって医療費の適正化については厚生省といたしまして、あるいは保険局といたしましても十分力を注いできておるつもりでございます。それから、診療報酬の改定におきましても、やはり乱用が起こらないような形で診療報酬の改定を行ってきておるつもりでございます。あれやこれやでやはり医療費の伸びが少し鈍化をしておると、こういうことだと私どもは思っておりますが、そういう鈍化をしたがゆえに片一方で不正請求が行われているというようには私どもは解しておりません。
○和田静夫君 大分県の今度の問題で、歯科医師のうちに大体何割ぐらい不正請求をしたというふうに判断されていますか。実は私、非常に短時間の持ち時間ですから、簡単に答弁してください。
○政府委員(吉村仁君) 何割ということはわかりかねます。
○和田静夫君 私は、実はこの問題というのは、組織ぐるみで行われたというふうに見ています。たとえば別府市あるいは大分市の歯科医師の非常に多くの部分が、同一のような形でもって振替請求を行っているわけですね。俗な言葉で言えば不正請求を行っている。それが結果的にはさっき冒頭国税庁次長が答弁をしたように、自発的な修正申告と言われますが、修正申告が指導されるという状態でもって修正申告が行われるという状態になったんですが、これらの調査は当然厚生省として今後お進めになりますまね。これが一つ。
それからもう一つは、大分だけではなくてね、全国的に広がっている可能性がこれはあります。もうきょうは時間がありませんからたくさんのことを申しませんが、たとえば毛利大分県歯科医師会長のインタビューの記事をずうっと読んでみますと、「東京や大阪でもやっているだろう。むしろ大分あたりは東京より三、四年遅れている」というような談話があってみたり、「こうした請求の仕方は大分に限っているわけではない。」という率直な述べ方があってみたり、いろいろしていること、これは報道の関係でありますから、御本人がどう言われたか別として、そういうことがある。そうすると、少なくとも特定をされている東京、大阪というような地域についても、これは当然調査がされてしかるべきだと、そう思いますが、そういう対処をされますか。二つ目ですね。
それから三つ目は、「不正受給で得た収入は保険者が支払ったもので、本来は保険者に返還されるべきではないか。」という設問に対して、「ニッケルクロムは金銀パラジウムに劣らず、あるいはより優れた性質を持った材料。そのニッケルクロムで治療した以上、医療の質は保たれていると考えている」。これは新聞記事で明らかにしている。読売の十二月二十日の記事ですね。こういうふうに答えられているとすれば、この辺はやはり非常に問題なんですよね、三つ目は。
これらについてどういうふうに厚生省お考えになるんですか。
○政府委員(吉村仁君) 第一の大分県に関する調査につきましては、現在大分県に指示をいたしまして調査をやっております。したがって、今後も継続して調査を行います。
それから、第二点のその他の地域におきましてもそういう同じ事例があるんではないか、こういう点に関しましては、私ども大分県以外の都道府県に対しましても同様な指示をいたしまして、不正の根絶とそれから要すれば調査をするように指示をしております。
それから、第三番目の返還の問題でございますが、私は不正が行われておるならば当然返還を要求すべきものだと、こういうように思っております。
○和田静夫君 そこで、国税庁ね、診療報酬の不正請求に関して税務調査をされたということになるわけですが――いや、まず厚生省に聞きますがね、厚生省はこの国税庁の調査の内容を正確におつかみになっていますか。
○政府委員(吉村仁君) 個々の歯医者さんがどういうことをされたかということについてはつかんでおりませんが、先ほど先生御指摘のようなニッケルクロムを使いながら金銀パラジウム合金の値段で請求をした、それが修正申告のもとになっておる、この事実は知っております。
○和田静夫君 そうするとね、この振替請求をした場合に、その保険医に対する処分というのは大体一般的にはどんなものですか。
○政府委員(吉村仁君) 不正の態様それから量と申しますか、何人に対してやったかというようなことと関連をいたしますが、一般的に申し上げますならば、不正請求をした場合には取り消しと、
そして若干軽い場合には戒告処分と、こういうのが通例でございます。
○和田静夫君 国税庁ね、国税犯則取締法二十二条の一項、扇動犯があるわけですがね、今回の場合の不正請求が仮に組織ぐるみである、だれかが指導していた場合はこの容疑が出てくると思いますが、そうでしょうか。
○政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。
先生御指摘のように、国税犯則取締法第二十二条に扇動犯の規定がございまして、若干省略して申し上げますと、国税の虚偽の申告をなすことを扇動した者には罰則を科すというふうに規定してございますが、国税犯則取締法第一条に言う「国税ニ関スル犯則事件」という前提がございまして、国税の犯則を扇動したという話になるのかどうか。不正の申告というか、請求をなさるという事実はあったのかもしれませんけれども、国税の犯則というところになるのか。その辺がこの国犯法で言う国税犯則には含まれなくて国犯法の調査及び処分の対象となっていない。したがいまして、具体的な事実関係が国犯法二十二条の構成要件に該当するかどうかちょっといまの段階では申し上げかねる状況でございます。
○和田静夫君 国税庁、これは報道でありますからあれですが、大分税務署が県歯科医師会との交渉の中で、まず第一に修正は五十五、五十六年の二年間限りとする、それから二つ目は、厚生省には不正の事実は知らせないと約束をしたと。これは事実であるとすれば大変な問題であるわけですが、この事実関係は確認されますか。
○政府委員(酒井健三君) 私ども新聞報道でそういうことを耳にいたしておりまして、早速国税局を通じまして大分県の税務署に照会をいたしましたが、今回の大分県の歯科医師の社会保険診療報酬の不正請求に関しまして、大分県下の税務署が御指摘のような条件つきで修正申告を行った事実はないというふうに聞いておりまして、先ほど申し上げましたように歯科医師から自主的に修正申告が提出されたという報告を受けておる次第でございます。
○和田静夫君 そうすると、その五十五年、五十六年の修正申告だけというのはどういうわけですか、これは。
○政府委員(酒井健三君) 私どもまず最初に大分県で事後調査の一環といたしまして二、三の歯科医師に対して調査を行ったわけですが、もちろんその調査を受けた五十五年分の調査を主体としておりまして、それの関係で五十五年の修正申告が出てきたということを聞いております。それから五十六年につきましては、一度申告書が出されて、その後に修正申告が出てきたということではないと、最初から不正請求にかかるものについては特例を適用しない形で出てきているというふうに聞いております。
○和田静夫君 大分県の歯科医師会としていわゆる修正申告に応ずべきだという形でもって一つの指令とまではいきませんが、統一した見解が流されると、その前提には熊本国税局あるいは大分税務署との協議があってそういう形になってくるということになったわけですがね、これはやっぱり組織的ですよね、そうなれば。いや、あなたの方が組織的と言うんじゃないですよ、相手方がさ。
○政府委員(酒井健三君) 私どもが報告を受けておるところでは、その五十五年分の所得について二、三の歯科医師の方を調査をしたと、そうしたらその歯科医師の方々が歯科医師会の方には御相談をなさったと、どういうふうにしたらいいかと。そういうことがあったやに聞いておりますが、歯科医師会の方が歯科医師の皆さんに対してどういうような御指導をなさったのか私どもは承知いたしておりません。
○和田静夫君 これはおいおい厚生省の調査が進めば組織的であるかどうかわかってきましょうから、その時点でもう一遍問題にするということにするとしまして、大蔵政務次官、非常に恐縮なんですが、実は五十六年の予算委員会の論議で私と渡辺大蔵大臣、園田厚生大臣との論議がございまして、東洋信販問題というのがございましたね。これもまあ医師の脱税に関する問題であったわけです。この医師の脱税の問題に関して論議をしていく過程で、言ってみれば守秘義務問題との関係で幾つかの論議がありました。この種問題については大蔵大臣と厚生大臣で協議をしながら不正申告には今後対処をいたしますという答弁になってきているわけです。したがって、それは当然今日の両大臣にも引き継がれていると思うのでありますが、大分歯科医師の今度の問題に端を発する不正申告問題については、当然予算委員会におけるところの私に対する答弁の趣旨が守られて大蔵、厚生両大臣のもとにおける不正申告問題についての協議が行われてしかるべきである、こういうふうに考えていますが、大蔵省の側はその態度は変わりませんでしょうね。
○政府委員(塚原俊平君) 今回の税務調査を行うに当たりましても、国税当局が厚生省当局からもいろいろな示唆をいただいておるわけでございますし、一方、国税当局といたしましても今回の調査で国税当局が把握をした不正請求の手口やその調査のやり方等についても厚生当局に示す等の協力をしてまいっております。ですから今後とも厚生省に対しましてもできるだけ協力させたいというふうに考えております。
○和田静夫君 検察庁、今度の事件というのは刑法の詐欺罪には当たりませんか。
○政府委員(前田宏君) 具体的な事案につきましてどういう犯罪が成立するかということになりますと、その事実関係を明確に把握しませんと確定的なことは申し上げられないわけでございますけれども、いわゆる不正請求といいますか、それが水増しであるとかあるいは架空であるとか、いろいろな問題があろうかと思いますが、そういう場合には一応詐欺罪ということが問題になろうかと思います。
○和田静夫君 今度のこの報道を中心とする事件について、検察庁は重大な関心をお持ちでしょうか。
○和田静夫君 警察庁ですが、この事件に対してどういうふうな対処をされていますか。
○政府委員(金澤昭雄君) お答えをいたします。
警察といたしましては、現在大分県警察におきまして関係機関、関係者、いろいろと事情聴取を行うなどいたしまして、現在実態把握に努めておるところでございます。
○和田静夫君 もう時間がありませんから何ですが、国税庁ね、守秘義務との問題で少し論議をしたかったんですが、時間がなくなりましたから大蔵委員会その他に譲ってもいいと思っていますが、健保法違反容疑者ですね、今度の場合、健康保険法の違反容疑者を結果としてかくまうというような役割りを演ぜられることはないでしょうね。
○政府委員(酒井健三君) 私どもの方はもちろん税法に基づきまして適正な税務を執行するということが基本でございまして、いかなる事案につきましてもその基本に基づいて行って、ほかの何らかの意図を持って行動することはございません。
○和田静夫君 国税庁ね、これちょっと発展をしていくとある意味じゃ刑事事件になる。いま検察、警察両方がお答えになった推移を見なければなりませんが、私もそれを静かに見ていますけれ
ども、つまり犯人を隠すおそれのある行為といいますか、守秘義務を盾にとってそういうことになりかねないことも実は考えられるんですね。いま思えば、大平大蔵大臣とここで守秘義務問題でいろいろ、私、論議をしたことを思い出しますけれども、守秘義務について、あらゆる場合に秘密を漏らしていけないのかどうかということですね。国家公務員法百条その他の問題との関係では、いまはどういうふうに国税庁お考えになっていますか。