123 - 衆 - 予算委員会第四分科会 - 1号
平成04年03月11日
○浅井分科員 厚生大臣、きょう私は、非常に社会的な問題となっておる今日的な話題、入れ歯の問題とエイズの問題、二つについて取り上げてみたいと思っております。
大臣はお年がお年なのですけれども、入れ歯をお入れになっていますか。
○山下国務大臣 入れております。
○浅井分科員 大臣はおいしく食べられていますか。
○山下国務大臣 何と言ったらいいのでしょうか、とにかく歯医者さんは、あなたがどんなたくあんでも食べられるように絶対に私がしてあげますと言うので、それがやっと最近完成したような状態で、かたいものを食べるという点において、これで何でもとにかく食べられるなという自信を持ってまいりましたけれども、やはりそれは本当の歯みたいな味わいみたいなものはないかもしれません。しかし、何とか今のところしのいでおります。
○浅井分科員 大臣はまだ幸運な方でありまして、この間NHKの「入れ歯のハナシ」という番組がございましたが、大臣「あれはごらんになられましたか。
○山下国務大臣 残念ながら見ておりません。
○浅井分科員 それでは私から、その入れ歯のNHKの報道が非常に反響が大きかったものですから、その概略を御説明をしながら、大臣にお考えいただいて特段の御配慮をいただきたいと思うわけで、質問いたします。
「痛い、噛めない、話せない。こと入れ歯に関しては大なり小なり悩みはつきもののようだが、「健康保険でまともな入れ歯を作るのは難しい」と指摘したテレビ番組が大きな反響を呼んでいる。それはNHKスペシャル「入れ歯のハナシ」(一月二十九日放映)。自分の口に合った義歯は自由診療で数十万円出さなければ望めないとなると、全国に一千万人いる“入れ歯老人”は絶望するしかない。」こういうショッキングな番組でございました。私はちょうどそのNHKの番組を見ておりまして、確かにこの問題は、高齢社会を迎えた我が国にとって重要なことを含んでいる番組だということで、真剣にこの番組を拝見いたしました。
六十五歳以上の老人の方一千人に対してアンケートをとり、歯科医師一千人に対してもアンケートをとったわけです。その中で、老人に対して入れ歯を使ったことがありますか、使ったことのあるその入れ歯のぐあいはどうですか、こういうアンケートをいたしました。六十五歳以上の方々の返答が、八八%の人が入れ歯の経験があった、五二%の人がぐあいがいい、四八%の人がぐあいが悪い、こういう回答だったということが報道されております。
今、我が国では義歯人口は一千万人と言われております。二〇二〇年になりますと全人口の四分の一が義歯人口になるという状況の中でございます。ですから、入れ歯が合わないで、かめないで、食事の際、入れ歯を飾り物にして外して食事をしておる人の姿も映っておりました。まさにナンセンスという状況でございますけれども、非常にこの問題については深刻な老人の悩みになっております。痛い、かめない、笑えない、話せない、肩こり、頭痛、この原因になっているのだ、こういう状況が映し出されてきたわけでございます。
このような状況は、入れ歯を入れておる約半数の人たちが、余りぐあいがよくないということになぜなったのか。その原因について河辺先生という人は、現在のいわゆる臨床教育、お医者さんの養成ですね、歯科医の養成の臨床教育がよくない、もう一つは医療制度が悪い刀この両方は厚生省の所管として非常に重要な要素を持っておると私は思うわけでございます。この点についてどういうふうにお考えになりますか。
○山下国務大臣 これは、古い話でございますが、私が非常に印象的だったのは、終戦直後、マッカーサーが厚木におりてきました。その後ろからサムスという軍医大佐がおりてきまして、この人が日本の医療行政を全部引き受けて数カ月後に言った言葉の中に、日本は歯科医療がおくれている、それは今日まで歯科には大学がなかったからであると言いました。そのとおり、終戦までは歯科医専と言われる専門学校しかなかったんであります。
そういうことがあったりしまして、それから急
速に歯科医科大学がたくさんできまして、非常に日本の歯科教育というものがレベルアップしまして、今日においては、補綴に限らずすべての問題について、私は歯科の技術、歯科医療というものは遜色がないと思っております。
実際、日本人の年齢が非常に延びて世界一になった。それで一番困るのは、やはり歯と目であろうと思います。老齢化すればこれが一番故障が起きやすいんであります。私自身もかなり歯が悪うございまして、妙な話でございますが、最近おかゆの缶詰というのがございまして、私は常時これを持っているんでございます。痛かったり歯の調子が悪いときにはすぐ、おかゆというのは時間がかかりますけれども、缶詰は実によくできておりまして、それを食べながら思うのは、本当に歯がよかったらなということをしばしば思うんでございます。
特に、先生も私も同じで、先ほど三つお挙げになりました、痛い、かめない、話せない、私どもの職業というものは話せないということは重大な問題でございまして、確かに入れ歯をいたしておりますと、時々やはり自分自身で言語が不明確であるなということに気がっくんでございます。
これから医学の発達も、さらに歯科医学の発達も望まなければなりませんが、今おっしゃいました臨床教育等につきましても、私どもはさらに格段の、厚生省としましてもちゃんと専門家もおりますし、またそういう方々と話をする機会もあります。他の部門に比べて歯科というものは決して私は、先ほど戦後の例をとりましたけれども、今はおくれているとは思いませんけれども、そういう意味におきましても八〇二〇運動というものを推進しながら、ひとつ国民全般のために努力してまいらなければならぬと思っております。
○浅井分科員 大臣、なかなか御見識がありまして、今私はいい入れ歯ができない原因に二つあると申し上げました、学校教育と医療制度。
まず、その医療制度の方から問題点をちょっと述べてみたいと思うのです。
いい入れ歯のできない構造的な原因は医療制度にある。保険診療と自費診療というのがございます。特に歯の場合は自費で、保険ではできない貴金属等を使う自費診療というのがありまして、そういう自費診療と保険診療とありますけれども、いろいろなケースがありますから、これはなかなか説明しにくいわけですが、歯科医に、おたくは保険診療と自費診療との割合はどのぐらいかというようにアンケートをとりますと、ほとんど保険てやっておりますというのが五三%の歯科医なんです。半数ですね。保険が多いというのが三六%です。自費と保険が半々ですというのが一一%なんです。
そこで、患者さんに保険を勧める理由を聞いてみると、歯医者は患者の経済状態を考えて、この人は経済負担ができないからというので、四四%の人に対しては経済状態を考えて保険を勧めている。保険でも十分つくれますよという説明をして、保険でやっている人も三三%、その他が二三%、こういう状況なんです。
ところが大臣、ここに問題があるわけです。この歯科医の方は保険診療だけ、保険診療を一〇〇%やっていたら経営が成り立つかどうか。そうすると、これに対するアンケートは、このNHKの番組では、成り立つというのが三四%なんです。成り立たないというのが六五%なんです。その他が一%。ですから、保険診療では成り立たないというのは六五%もあるというこの数字が僕は大きな問題だろうと思うのです。
そして、この入れ歯をつくれば赤字になるということが、その報道で引き続いて放映されてきたわけです。千葉県の歯科医の例をとりまして、これは延々と報道されたわけですけれども、人件費が一万六千五百円、材料代が薬品を含めて八千七百十円、技工代が一万九千六百円、設備や光熱費などが二万三千六百四十一円。こういうふうになりますと、保険の診療点数は上下の入れ歯を入れて五万八百二十円なんです。今の人件費、材料費、薬品代、技工代、設備、光熱費など入れますと、一万七千六百三十一円の赤字になるのです。
大臣、私も歯医者の学校を出ておりまして、私の同窓生がいっぱい歯医者をやっております。東京都内にも何人もおりまして、昔から健康保険で入れ歯をつくると赤字になってしょうがないのだという苦情はもう何回も聞いてきたわけです。今回こうやって思い切って、私も厚生大臣の歯科医師の免許証をもらったわけですから厚生省を尊敬しているんですけれども、これはどうしても一遍、ちょうど山下大臣なんだから聞いてもらおうというわけで、この問題を取り上げているわけです。
ここで、僕の友人、知人の中で知っておりますのがつくってくれました資料に基づいて申し上げてみたいと思うのですけれども、これは総義歯の保険診療報酬と実際にかかる経費、それから外注費、ここに幾らかかるかということです。
これは都内の中心部の賃借ビルなんです。今、東京都内の高いマンションの部屋代を払ってやる開業医というのはだんだんなくなると言われるほど、このマンション代が高いわけですけれども、この間接経費、いわゆる歯科医療の一時間に幾ら経費がかかっているかを調べたところ、全体で、いわゆる歯科医師が五人いる中で、そのほかに受付の女子あるいはまた衛生士、それから助手、保険事務、経理、こういう者を含めて十九名おる診療所なんです。これで見ますると、この間接経費というのは、いわゆる一時間当たり三千八百六十七円なんです。これは、歯科医師の一時間当たりの賃金は全然この中に入ってないのです。その歯医者は一人でやっているわけじゃないですから、助手もいれば受付もいればそれから技工士もいれば、ほかにいろいろな周辺にスタッフがいるわけです。スタッフの間接経費が、二枚目にございますように、修理費、医器修繕費、会議費、研究費、法定福利費。これは、この人が平成二年に税務署に提出した経費を各項目別に次の数字で割ったものですから、基礎は税務署申告の数字で出てきております。
三枚目にございますように、今のは間接経費ですけれども、今度は直接経費。この歯科医師一人当たり一時間幾らかかっているか。人件費でございますけれども、技工士一、衛生士、助手、受付、保険事務、経理含め十九名。平成二年一月から十二月までの全支給額が十九人で三千八百八十八万六千四百六十円。これを一番最初に出ております九千六百分の一、この数字で割ると四千五十円になりますので、人件費としては一時間で四千五十円。ただし、この人件費は歯科医師の人件費は含まれていないのです。
技工料が上下で、ここに数字がありますが、基礎床を含む咬合、人工歯排列、歯肉形成、重合、研磨、こういうふうにa、b、cでございますけれども、この技工所に一万九千円払っているわけです。それで今度は材料費が三つ目にございます。これは、人工歯、前歯、臼歯が千三百八十円、それから石こうが上下で二百二十グラム使って六十七円、硬石こうがやはり二百二十グラム使用で百十円、印象材が四百円、カーボン紙等で七十四円、合計二千三十一円、こうなるわけです。
今度は、この四枚目にございます「総義歯制作時の歯科医師の所要時間」というところで、診査が十分、模型用の印象が二十分、印象採得が四十分、診断設計が二十分、咬合採得が六十分、試適が三十分、六番の装着が六十分、七番の義歯調整が十五分。この四番の咬合採得、「人口」と書いてありますが、これはミスプリントでございますけれども、これは人工歯という歯を選ぶのが入っております。これで大体二百五十五分で、四時間十五分かかるわけです。
その次が、今度は改定の表になっております。今回の改定で、今までの五千二十八点が改正案では五千百七十点になるという、この四月からの改定分の表です。
それで大臣、一番最後のページを見ていただきたいわけですけれども、「総義歯の収入は二・
七%アップの改正後でも、わずか千四百二十円アップの五万一千七百円に過ぎない。」と。総義歯制作による四時間十五分の歯科医師の制作時間に対し、一時間で間接経費の三千八百六十七円と、直接経費のうちの人件費四千五十円に四時間十五分を掛けますと、三万三千六百四十七円になるというわけです。bは、先ほど申し上げました外注技工料で一万九千円。材料費が二千三十一円。合計、この一、二、三を足しますと五万四千六百七十八円です。
平成二年度の経費でさえこれだけ、五万四千六百七十八円かかっておる。ですから、五万一千七百円というふうに総義歯報酬が今度アップされたといっても、この歯科医師の技術料あるいはこの四時間十五分彼がやったそういういろいろなことについての報酬は、一つもここに加わっていないのです。だから、この数字を見ていただければわかるように、健康保険で上下の義歯をつくればつくるほど赤字になってしまうのです。やる人がだんだんいなくなってしまうぞというわけです。
この彼が言っています。「現在、自費患者がそのマイナス面を負担している形になっているが、患者全体の二〇%の自費患者が八〇%の保険患者のマイナスを補っていることになり、割高感はいなめないがこれなくては歯科はやっていけない状態で、なんともやりきれない気持で毎日の診療を続けているのが現実の姿である。」これが長く今続いているということです。どうでしょうか、大臣。
○山下国務大臣 いろいろ御指摘ございました。率直に申し上げまして、一般の医師に比べるということは語弊があるかもしれませんが、要するに一般の医師と違うところは、もう歯医者さん自身が自分の体でもってすべて治療をしている。いろいろな科学的な治療というものはないのでありまして、一つ一つ自分の手先でやる。言うなれば体が資本であるという率が非常に高い。ですから、三分診療というのはなかなかあり得ないのでありまして、一日にこなせる量というのは決まっているわけでございますから、そういう意味においては、そういう面も十分考慮しなければならぬし、今申し上げましたように検査も少ない。歯医者さんでなくてできるものは、衛生士のスケーリングぐらいなものだと思います。
そういう意味におきましては、そういう医者の技術、また一日にこなせる量とか、そういうものを計算に入れながら保険の単価というものは決めていかなければならぬ。しかし、今年度の改定におきましては二・七でございますから、これはあらゆる角度から見ても、一般の医師よりも少しはよく見たのかなと私は思っておるわけでございますが、今おっしゃるような数字から見れば、とても追いつくものではございません。
ただ、私もあちこちで歯医者さんを見ますが、中には本当に一人の患者を熱心にやっているところと、診療台に四人ぐらい並べて、はい今度はこっちというわけで、しょっちゅう行ったり来たりしているような人、これを合理性というのかわかりませんが、いろいろあるわけでございまして、本当に良心的にやれば、その良心的な技術というものはもっと評価しなければならぬのかなという気持ちは私も持っております。
○浅井分科員 大変御理解のある御答弁なのですけれども、私はこう思うわけですね、大臣。
健康保険でこれだけ赤字だ赤字だと言われて、全国的にも放映されたNHKの番組を見た今度は受診者側ですね。今我が国は国民皆保険なのです。保険で医療をしてもらうために掛金をかけているわけです、老人医療は別でございますけれども。そういう状況の中で、赤字になって丁寧に診てもらえない、それが入れ歯が合わない原因になっているのだ。赤字になっているのだから、患者さんの方は二回も三回も合わせに行く、専門用語で調整しに行くというのですが、それに行きにくいという状況があります。
私は歯科医であるとともに、この問題をなぜこうやって取り上げるかといえば、国民皆保険で、保険で診療を受ける人たちが肩身が狭いということについて厚生省は痛みを感じないかということであります。保険がありながら十二分に診療を受けられない、保険でありながら肩身が狭い、そして十二分な満足のいく入れ歯をつくってもらえない。だから、この歯医者でだめだったら今度は次の歯医者へ行きましょう、その歯医者でだめだったらあっちへ行きましょうという、それこそ入れ南流浪の民みたいに、今は半年に一度しかつくれないという原則があるそうでございますけれども、A医院、B医院、C医院と渡り歩いていかなければならないような人生をやっておるという、その患者さん側の論理にもう少し立ってもらいたいと思うのですよ。
今大臣もいみじくもおっしゃいました、今回二・七%上がったから多少はいいと。しかしながら、ほかの部分は上がったにしても、せっかく私の友人が二日がかりでつくってくれたこの貴重な資料によっても、改定後も何ら赤字は解消しません。大きな赤字が残されたままなのです。ですから、ほかの部分のことをやってもらう患者さんは大威張りで行けるかもしれませんけれども、この上下の総義歯を入れてもらう患者さんはあくまでもまだ赤字なのです。歯医者も、これは赤字ですよ、もうからないのですよと平然とみんなが言うわけです。そういう中で受ける受診者側の心理はどのように考えたらいいか。大臣、どうでしょうか。
○山下国務大臣 幾つか例をとられましたが、一概にはそうとは私自身は思い切れないのであります。
A医師、B医師、C医師と次々に渡り歩いて入れ歯をつくるというお話がございました。昔笑い話に、そういうおばあさんは入れ歯をつくる趣味があって、旅行をするときには袋いっぱい入れ歯を持って回るなんという話を聞いたことがあるのでございますが、今はそうじゃなくて、本当にいい歯があればそれで済むわけでございますから、私自身は、かえの入れ歯を持っておりません。そして保険でいつもやっておる。厚生省の診療所ですからそれは良心的にやってくれますけれども、私はそういう意味において、A、B、C、と渡り歩くこと自体、本当にそんなにうまい歯ができないのかなと、実は先生の御質問の中で、ちょっとそこのところが一致しないと申し上げたのです。
お医者さんとの間でもっとよく詰めていけば、私はもっといい歯がそのお医者さんでもできると思うのでございますが、そこらあたり、もしそういうのがあるとすれば、それはどうも極めてよくない、ある意味においては不合理な話だなと思うのでございます。
○浅井分科員 そこが問題点なんですよ。これは専門家が言う言葉なんですけれども、保険の入れ歯が合わないのは当然なんだ、どんな技術のあるお医者さんでも一回でぴたっと合う入れ歯をつくるのは難しいことなんだ、手間暇かけて何回も調整しなければ、ここは痛い、ここは出っ張っている、ここはへっこんでいるというのを何回もやらなければ、まともなものをつくることはできないんだ、それをやることが最低条件なんだということなんです。保険の入れ歯は合わないから、患者の方は懐は痛まないので、さっき言ったように、あっち行ったりこっち行ったり、もっと上手な人があるんじゃないかとか、そういうふうな形になって、医療費のむだ遣いになっているということなんです。こうした悪循環が繰り返され、膨大な数の役に立たない入れ歯が生み出されていくのは、まことに嘆かわしいことだということであります。これは明らかに医療費のむだ遣いであります。
今大臣がおっしゃいましたけれども、ある週刊誌にも出ておりますけれども、「「保険の義歯が悪ければ、保険をやめるという声が出てもいいはずですが、そんな声は出ていないでしょう。みな合意の上でやっているわけでしてね、保険のが悪いなんてことはないはずですよ。技術、材料とも自由診療の義歯と差はありません。また、保険の方は医者の儲けがずいぶん薄いじゃないかと言われ
ますが、赤字になることはありません。逆に工ーッというくらい利益が出てくるのですよ」と、保険局医療課の担当者は保険の義歯に問題はないと言い切る。」と出ています。
私から言わせれば、ここからが問題なんです、「その上で、「入れ歯は人工臓器と同じですから、自ずと限界があります。異物が口に入れば、多少は合わなくて痛いとか、うまく噛めないことがあるのは仕方ありませんよ。口腔内は舌や粘膜があり、非常に敏感なところですから、入れ歯を入れると不満が出るのは当然でしょう」」、この認識は私はやめてもらいたいと思うのです。これは入れ歯じゃないのですよ。異物感がある、痛いのが当たり前、そういう考え方ではそれは入れ歯とは言えないのです。専門家に言わせたら、そんなばかな話はないのです。自分の自然の歯に最も近いものをつくる、それが歯科医師に与えられている役割なんです。それを平然と自分の考え方で、こういうことを保険局の医療課の方がおっしゃるという厚生省の考え方というのは、私は問題だと思うのです。どうでしょうか。
○山下国務大臣 これは一定年齢以上の比較的老齢の方々でございますけれども、私もその部類に入るかもしれません。歯なり歯茎というものは一定の形でもって永続性があるかというと、一定の年齢以上になりますと、刻々歯が変わって動いてきたり、歯茎の形が変わってきたりいたしますから、そういう意味においては、一つには非常に合った歯がいつまでも使えるということにはならないのではないだろうか。そこらあたりも考えながら厚生省の係の者も言っていると思いますし、それは少し良心的におとりいただければいいんじゃないかと思います。
○浅井分科員 ちょっと納得いきかねますが、今のお話を聞きますと、とりようによっては入れ歯が合わなくても我慢しろと聞こえる。
○山下国務大臣 いや、そうじゃなくて、形が変わればやはりそれをかえなければなりませんので。
平成04年03月11日
○浅井分科員 厚生大臣、きょう私は、非常に社会的な問題となっておる今日的な話題、入れ歯の問題とエイズの問題、二つについて取り上げてみたいと思っております。
大臣はお年がお年なのですけれども、入れ歯をお入れになっていますか。
○山下国務大臣 入れております。
○浅井分科員 大臣はおいしく食べられていますか。
○山下国務大臣 何と言ったらいいのでしょうか、とにかく歯医者さんは、あなたがどんなたくあんでも食べられるように絶対に私がしてあげますと言うので、それがやっと最近完成したような状態で、かたいものを食べるという点において、これで何でもとにかく食べられるなという自信を持ってまいりましたけれども、やはりそれは本当の歯みたいな味わいみたいなものはないかもしれません。しかし、何とか今のところしのいでおります。
○浅井分科員 大臣はまだ幸運な方でありまして、この間NHKの「入れ歯のハナシ」という番組がございましたが、大臣「あれはごらんになられましたか。
○山下国務大臣 残念ながら見ておりません。
○浅井分科員 それでは私から、その入れ歯のNHKの報道が非常に反響が大きかったものですから、その概略を御説明をしながら、大臣にお考えいただいて特段の御配慮をいただきたいと思うわけで、質問いたします。
「痛い、噛めない、話せない。こと入れ歯に関しては大なり小なり悩みはつきもののようだが、「健康保険でまともな入れ歯を作るのは難しい」と指摘したテレビ番組が大きな反響を呼んでいる。それはNHKスペシャル「入れ歯のハナシ」(一月二十九日放映)。自分の口に合った義歯は自由診療で数十万円出さなければ望めないとなると、全国に一千万人いる“入れ歯老人”は絶望するしかない。」こういうショッキングな番組でございました。私はちょうどそのNHKの番組を見ておりまして、確かにこの問題は、高齢社会を迎えた我が国にとって重要なことを含んでいる番組だということで、真剣にこの番組を拝見いたしました。
六十五歳以上の老人の方一千人に対してアンケートをとり、歯科医師一千人に対してもアンケートをとったわけです。その中で、老人に対して入れ歯を使ったことがありますか、使ったことのあるその入れ歯のぐあいはどうですか、こういうアンケートをいたしました。六十五歳以上の方々の返答が、八八%の人が入れ歯の経験があった、五二%の人がぐあいがいい、四八%の人がぐあいが悪い、こういう回答だったということが報道されております。
今、我が国では義歯人口は一千万人と言われております。二〇二〇年になりますと全人口の四分の一が義歯人口になるという状況の中でございます。ですから、入れ歯が合わないで、かめないで、食事の際、入れ歯を飾り物にして外して食事をしておる人の姿も映っておりました。まさにナンセンスという状況でございますけれども、非常にこの問題については深刻な老人の悩みになっております。痛い、かめない、笑えない、話せない、肩こり、頭痛、この原因になっているのだ、こういう状況が映し出されてきたわけでございます。
このような状況は、入れ歯を入れておる約半数の人たちが、余りぐあいがよくないということになぜなったのか。その原因について河辺先生という人は、現在のいわゆる臨床教育、お医者さんの養成ですね、歯科医の養成の臨床教育がよくない、もう一つは医療制度が悪い刀この両方は厚生省の所管として非常に重要な要素を持っておると私は思うわけでございます。この点についてどういうふうにお考えになりますか。
○山下国務大臣 これは、古い話でございますが、私が非常に印象的だったのは、終戦直後、マッカーサーが厚木におりてきました。その後ろからサムスという軍医大佐がおりてきまして、この人が日本の医療行政を全部引き受けて数カ月後に言った言葉の中に、日本は歯科医療がおくれている、それは今日まで歯科には大学がなかったからであると言いました。そのとおり、終戦までは歯科医専と言われる専門学校しかなかったんであります。
そういうことがあったりしまして、それから急
速に歯科医科大学がたくさんできまして、非常に日本の歯科教育というものがレベルアップしまして、今日においては、補綴に限らずすべての問題について、私は歯科の技術、歯科医療というものは遜色がないと思っております。
実際、日本人の年齢が非常に延びて世界一になった。それで一番困るのは、やはり歯と目であろうと思います。老齢化すればこれが一番故障が起きやすいんであります。私自身もかなり歯が悪うございまして、妙な話でございますが、最近おかゆの缶詰というのがございまして、私は常時これを持っているんでございます。痛かったり歯の調子が悪いときにはすぐ、おかゆというのは時間がかかりますけれども、缶詰は実によくできておりまして、それを食べながら思うのは、本当に歯がよかったらなということをしばしば思うんでございます。
特に、先生も私も同じで、先ほど三つお挙げになりました、痛い、かめない、話せない、私どもの職業というものは話せないということは重大な問題でございまして、確かに入れ歯をいたしておりますと、時々やはり自分自身で言語が不明確であるなということに気がっくんでございます。
これから医学の発達も、さらに歯科医学の発達も望まなければなりませんが、今おっしゃいました臨床教育等につきましても、私どもはさらに格段の、厚生省としましてもちゃんと専門家もおりますし、またそういう方々と話をする機会もあります。他の部門に比べて歯科というものは決して私は、先ほど戦後の例をとりましたけれども、今はおくれているとは思いませんけれども、そういう意味におきましても八〇二〇運動というものを推進しながら、ひとつ国民全般のために努力してまいらなければならぬと思っております。
○浅井分科員 大臣、なかなか御見識がありまして、今私はいい入れ歯ができない原因に二つあると申し上げました、学校教育と医療制度。
まず、その医療制度の方から問題点をちょっと述べてみたいと思うのです。
いい入れ歯のできない構造的な原因は医療制度にある。保険診療と自費診療というのがございます。特に歯の場合は自費で、保険ではできない貴金属等を使う自費診療というのがありまして、そういう自費診療と保険診療とありますけれども、いろいろなケースがありますから、これはなかなか説明しにくいわけですが、歯科医に、おたくは保険診療と自費診療との割合はどのぐらいかというようにアンケートをとりますと、ほとんど保険てやっておりますというのが五三%の歯科医なんです。半数ですね。保険が多いというのが三六%です。自費と保険が半々ですというのが一一%なんです。
そこで、患者さんに保険を勧める理由を聞いてみると、歯医者は患者の経済状態を考えて、この人は経済負担ができないからというので、四四%の人に対しては経済状態を考えて保険を勧めている。保険でも十分つくれますよという説明をして、保険でやっている人も三三%、その他が二三%、こういう状況なんです。
ところが大臣、ここに問題があるわけです。この歯科医の方は保険診療だけ、保険診療を一〇〇%やっていたら経営が成り立つかどうか。そうすると、これに対するアンケートは、このNHKの番組では、成り立つというのが三四%なんです。成り立たないというのが六五%なんです。その他が一%。ですから、保険診療では成り立たないというのは六五%もあるというこの数字が僕は大きな問題だろうと思うのです。
そして、この入れ歯をつくれば赤字になるということが、その報道で引き続いて放映されてきたわけです。千葉県の歯科医の例をとりまして、これは延々と報道されたわけですけれども、人件費が一万六千五百円、材料代が薬品を含めて八千七百十円、技工代が一万九千六百円、設備や光熱費などが二万三千六百四十一円。こういうふうになりますと、保険の診療点数は上下の入れ歯を入れて五万八百二十円なんです。今の人件費、材料費、薬品代、技工代、設備、光熱費など入れますと、一万七千六百三十一円の赤字になるのです。
大臣、私も歯医者の学校を出ておりまして、私の同窓生がいっぱい歯医者をやっております。東京都内にも何人もおりまして、昔から健康保険で入れ歯をつくると赤字になってしょうがないのだという苦情はもう何回も聞いてきたわけです。今回こうやって思い切って、私も厚生大臣の歯科医師の免許証をもらったわけですから厚生省を尊敬しているんですけれども、これはどうしても一遍、ちょうど山下大臣なんだから聞いてもらおうというわけで、この問題を取り上げているわけです。
ここで、僕の友人、知人の中で知っておりますのがつくってくれました資料に基づいて申し上げてみたいと思うのですけれども、これは総義歯の保険診療報酬と実際にかかる経費、それから外注費、ここに幾らかかるかということです。
これは都内の中心部の賃借ビルなんです。今、東京都内の高いマンションの部屋代を払ってやる開業医というのはだんだんなくなると言われるほど、このマンション代が高いわけですけれども、この間接経費、いわゆる歯科医療の一時間に幾ら経費がかかっているかを調べたところ、全体で、いわゆる歯科医師が五人いる中で、そのほかに受付の女子あるいはまた衛生士、それから助手、保険事務、経理、こういう者を含めて十九名おる診療所なんです。これで見ますると、この間接経費というのは、いわゆる一時間当たり三千八百六十七円なんです。これは、歯科医師の一時間当たりの賃金は全然この中に入ってないのです。その歯医者は一人でやっているわけじゃないですから、助手もいれば受付もいればそれから技工士もいれば、ほかにいろいろな周辺にスタッフがいるわけです。スタッフの間接経費が、二枚目にございますように、修理費、医器修繕費、会議費、研究費、法定福利費。これは、この人が平成二年に税務署に提出した経費を各項目別に次の数字で割ったものですから、基礎は税務署申告の数字で出てきております。
三枚目にございますように、今のは間接経費ですけれども、今度は直接経費。この歯科医師一人当たり一時間幾らかかっているか。人件費でございますけれども、技工士一、衛生士、助手、受付、保険事務、経理含め十九名。平成二年一月から十二月までの全支給額が十九人で三千八百八十八万六千四百六十円。これを一番最初に出ております九千六百分の一、この数字で割ると四千五十円になりますので、人件費としては一時間で四千五十円。ただし、この人件費は歯科医師の人件費は含まれていないのです。
技工料が上下で、ここに数字がありますが、基礎床を含む咬合、人工歯排列、歯肉形成、重合、研磨、こういうふうにa、b、cでございますけれども、この技工所に一万九千円払っているわけです。それで今度は材料費が三つ目にございます。これは、人工歯、前歯、臼歯が千三百八十円、それから石こうが上下で二百二十グラム使って六十七円、硬石こうがやはり二百二十グラム使用で百十円、印象材が四百円、カーボン紙等で七十四円、合計二千三十一円、こうなるわけです。
今度は、この四枚目にございます「総義歯制作時の歯科医師の所要時間」というところで、診査が十分、模型用の印象が二十分、印象採得が四十分、診断設計が二十分、咬合採得が六十分、試適が三十分、六番の装着が六十分、七番の義歯調整が十五分。この四番の咬合採得、「人口」と書いてありますが、これはミスプリントでございますけれども、これは人工歯という歯を選ぶのが入っております。これで大体二百五十五分で、四時間十五分かかるわけです。
その次が、今度は改定の表になっております。今回の改定で、今までの五千二十八点が改正案では五千百七十点になるという、この四月からの改定分の表です。
それで大臣、一番最後のページを見ていただきたいわけですけれども、「総義歯の収入は二・
七%アップの改正後でも、わずか千四百二十円アップの五万一千七百円に過ぎない。」と。総義歯制作による四時間十五分の歯科医師の制作時間に対し、一時間で間接経費の三千八百六十七円と、直接経費のうちの人件費四千五十円に四時間十五分を掛けますと、三万三千六百四十七円になるというわけです。bは、先ほど申し上げました外注技工料で一万九千円。材料費が二千三十一円。合計、この一、二、三を足しますと五万四千六百七十八円です。
平成二年度の経費でさえこれだけ、五万四千六百七十八円かかっておる。ですから、五万一千七百円というふうに総義歯報酬が今度アップされたといっても、この歯科医師の技術料あるいはこの四時間十五分彼がやったそういういろいろなことについての報酬は、一つもここに加わっていないのです。だから、この数字を見ていただければわかるように、健康保険で上下の義歯をつくればつくるほど赤字になってしまうのです。やる人がだんだんいなくなってしまうぞというわけです。
この彼が言っています。「現在、自費患者がそのマイナス面を負担している形になっているが、患者全体の二〇%の自費患者が八〇%の保険患者のマイナスを補っていることになり、割高感はいなめないがこれなくては歯科はやっていけない状態で、なんともやりきれない気持で毎日の診療を続けているのが現実の姿である。」これが長く今続いているということです。どうでしょうか、大臣。
○山下国務大臣 いろいろ御指摘ございました。率直に申し上げまして、一般の医師に比べるということは語弊があるかもしれませんが、要するに一般の医師と違うところは、もう歯医者さん自身が自分の体でもってすべて治療をしている。いろいろな科学的な治療というものはないのでありまして、一つ一つ自分の手先でやる。言うなれば体が資本であるという率が非常に高い。ですから、三分診療というのはなかなかあり得ないのでありまして、一日にこなせる量というのは決まっているわけでございますから、そういう意味においては、そういう面も十分考慮しなければならぬし、今申し上げましたように検査も少ない。歯医者さんでなくてできるものは、衛生士のスケーリングぐらいなものだと思います。
そういう意味におきましては、そういう医者の技術、また一日にこなせる量とか、そういうものを計算に入れながら保険の単価というものは決めていかなければならぬ。しかし、今年度の改定におきましては二・七でございますから、これはあらゆる角度から見ても、一般の医師よりも少しはよく見たのかなと私は思っておるわけでございますが、今おっしゃるような数字から見れば、とても追いつくものではございません。
ただ、私もあちこちで歯医者さんを見ますが、中には本当に一人の患者を熱心にやっているところと、診療台に四人ぐらい並べて、はい今度はこっちというわけで、しょっちゅう行ったり来たりしているような人、これを合理性というのかわかりませんが、いろいろあるわけでございまして、本当に良心的にやれば、その良心的な技術というものはもっと評価しなければならぬのかなという気持ちは私も持っております。
○浅井分科員 大変御理解のある御答弁なのですけれども、私はこう思うわけですね、大臣。
健康保険でこれだけ赤字だ赤字だと言われて、全国的にも放映されたNHKの番組を見た今度は受診者側ですね。今我が国は国民皆保険なのです。保険で医療をしてもらうために掛金をかけているわけです、老人医療は別でございますけれども。そういう状況の中で、赤字になって丁寧に診てもらえない、それが入れ歯が合わない原因になっているのだ。赤字になっているのだから、患者さんの方は二回も三回も合わせに行く、専門用語で調整しに行くというのですが、それに行きにくいという状況があります。
私は歯科医であるとともに、この問題をなぜこうやって取り上げるかといえば、国民皆保険で、保険で診療を受ける人たちが肩身が狭いということについて厚生省は痛みを感じないかということであります。保険がありながら十二分に診療を受けられない、保険でありながら肩身が狭い、そして十二分な満足のいく入れ歯をつくってもらえない。だから、この歯医者でだめだったら今度は次の歯医者へ行きましょう、その歯医者でだめだったらあっちへ行きましょうという、それこそ入れ南流浪の民みたいに、今は半年に一度しかつくれないという原則があるそうでございますけれども、A医院、B医院、C医院と渡り歩いていかなければならないような人生をやっておるという、その患者さん側の論理にもう少し立ってもらいたいと思うのですよ。
今大臣もいみじくもおっしゃいました、今回二・七%上がったから多少はいいと。しかしながら、ほかの部分は上がったにしても、せっかく私の友人が二日がかりでつくってくれたこの貴重な資料によっても、改定後も何ら赤字は解消しません。大きな赤字が残されたままなのです。ですから、ほかの部分のことをやってもらう患者さんは大威張りで行けるかもしれませんけれども、この上下の総義歯を入れてもらう患者さんはあくまでもまだ赤字なのです。歯医者も、これは赤字ですよ、もうからないのですよと平然とみんなが言うわけです。そういう中で受ける受診者側の心理はどのように考えたらいいか。大臣、どうでしょうか。
○山下国務大臣 幾つか例をとられましたが、一概にはそうとは私自身は思い切れないのであります。
A医師、B医師、C医師と次々に渡り歩いて入れ歯をつくるというお話がございました。昔笑い話に、そういうおばあさんは入れ歯をつくる趣味があって、旅行をするときには袋いっぱい入れ歯を持って回るなんという話を聞いたことがあるのでございますが、今はそうじゃなくて、本当にいい歯があればそれで済むわけでございますから、私自身は、かえの入れ歯を持っておりません。そして保険でいつもやっておる。厚生省の診療所ですからそれは良心的にやってくれますけれども、私はそういう意味において、A、B、C、と渡り歩くこと自体、本当にそんなにうまい歯ができないのかなと、実は先生の御質問の中で、ちょっとそこのところが一致しないと申し上げたのです。
お医者さんとの間でもっとよく詰めていけば、私はもっといい歯がそのお医者さんでもできると思うのでございますが、そこらあたり、もしそういうのがあるとすれば、それはどうも極めてよくない、ある意味においては不合理な話だなと思うのでございます。
○浅井分科員 そこが問題点なんですよ。これは専門家が言う言葉なんですけれども、保険の入れ歯が合わないのは当然なんだ、どんな技術のあるお医者さんでも一回でぴたっと合う入れ歯をつくるのは難しいことなんだ、手間暇かけて何回も調整しなければ、ここは痛い、ここは出っ張っている、ここはへっこんでいるというのを何回もやらなければ、まともなものをつくることはできないんだ、それをやることが最低条件なんだということなんです。保険の入れ歯は合わないから、患者の方は懐は痛まないので、さっき言ったように、あっち行ったりこっち行ったり、もっと上手な人があるんじゃないかとか、そういうふうな形になって、医療費のむだ遣いになっているということなんです。こうした悪循環が繰り返され、膨大な数の役に立たない入れ歯が生み出されていくのは、まことに嘆かわしいことだということであります。これは明らかに医療費のむだ遣いであります。
今大臣がおっしゃいましたけれども、ある週刊誌にも出ておりますけれども、「「保険の義歯が悪ければ、保険をやめるという声が出てもいいはずですが、そんな声は出ていないでしょう。みな合意の上でやっているわけでしてね、保険のが悪いなんてことはないはずですよ。技術、材料とも自由診療の義歯と差はありません。また、保険の方は医者の儲けがずいぶん薄いじゃないかと言われ
ますが、赤字になることはありません。逆に工ーッというくらい利益が出てくるのですよ」と、保険局医療課の担当者は保険の義歯に問題はないと言い切る。」と出ています。
私から言わせれば、ここからが問題なんです、「その上で、「入れ歯は人工臓器と同じですから、自ずと限界があります。異物が口に入れば、多少は合わなくて痛いとか、うまく噛めないことがあるのは仕方ありませんよ。口腔内は舌や粘膜があり、非常に敏感なところですから、入れ歯を入れると不満が出るのは当然でしょう」」、この認識は私はやめてもらいたいと思うのです。これは入れ歯じゃないのですよ。異物感がある、痛いのが当たり前、そういう考え方ではそれは入れ歯とは言えないのです。専門家に言わせたら、そんなばかな話はないのです。自分の自然の歯に最も近いものをつくる、それが歯科医師に与えられている役割なんです。それを平然と自分の考え方で、こういうことを保険局の医療課の方がおっしゃるという厚生省の考え方というのは、私は問題だと思うのです。どうでしょうか。
○山下国務大臣 これは一定年齢以上の比較的老齢の方々でございますけれども、私もその部類に入るかもしれません。歯なり歯茎というものは一定の形でもって永続性があるかというと、一定の年齢以上になりますと、刻々歯が変わって動いてきたり、歯茎の形が変わってきたりいたしますから、そういう意味においては、一つには非常に合った歯がいつまでも使えるということにはならないのではないだろうか。そこらあたりも考えながら厚生省の係の者も言っていると思いますし、それは少し良心的におとりいただければいいんじゃないかと思います。
○浅井分科員 ちょっと納得いきかねますが、今のお話を聞きますと、とりようによっては入れ歯が合わなくても我慢しろと聞こえる。
○山下国務大臣 いや、そうじゃなくて、形が変わればやはりそれをかえなければなりませんので。