歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

浅井分科員 123 - 衆 - 予算委員会第四分科会 - 1号

1992年03月11日 | 国会議事録
123 - 衆 - 予算委員会第四分科会 - 1号
平成04年03月11日

○浅井分科員 そこでお聞きしたいのですけれども、国民所得の伸び以下に抑制された医療費で、最近随所にその悪影響が出てきているわけです。
 歯科診療の報酬でございますけれども、平成元年度の歯科医療費の伸びは対前年比が一・八%で、診療所の数の増加によって、一診療所当たり対前年比は一・一%と減少しました。歯科補綴関連め低医療費政策で、歯科医の補綴関連の医療の衰退、研修面のおくれ、新規材料等研究意欲なし、歯科技工士の職離れ、技工士学校の入学急減、人材離れも顕著であります。技工士は、歯医者の技工士をやっているよりも、指輪をつくったり、リングをつくりに行った方が給料は倍になる。技工士をやっておるよりも、ほかに転職した方が有利なんだというふうな声もしばしば聞かれます。
 将来、二十年、三十年後には、いい入れ歯をつくる人、歯科医と技工士はいなくなるだろう。人件費の高騰、他業種に比し高賃金が払えず、看護婦問題と同様に、技工士、衛生士、助手、受付等にいい人材が集まらず、これらの養成学校はどこも大変である。そして、土地の急騰により入室料、家賃急上昇、都心で新規に開業する者がいない。新規の開業者は夜九時から十時までやっている者も多い。これは、国民全体が余暇をつくるという、こういう方向にもかかわらず、逆行しております。しかし、頑張らないと、借金をしている以上、それを返せない。そういう状況に迫い込まれているわけです。
 ですから、見かけよりも歯科医師というのは非常に今苦労しているということは、これはおわかりいただきたいと思うわけでございます。私は、その意味において、このいわゆる保険診療という問題について本当にお考えをいただきたいと思うわけでございます。
 もう一つの問題として、中医協の問題です。
 中医協で、国民の健康、生命と直接に結びついている医療にあっても、このいわゆる消費税の問題が浮かびました。福祉関係、出産関係等の一部は除いておりますけれども、この消費税の対象に医療がなりました。その影響をということで、去年六月に中医協において医療経済実態調査を実施したと伝えられております。しかし、中医協において実態調査の概況が密室の中で一部報告されただけで、我々国民の前には医療経済実態調査の結果、その正確な情報公開はいまだになされていない。なぜ速やかにこれが公表されないのか、お伺いしたいと思います。

○黒木政府委員 中医協で医業経営実態調査に基づきます結果を取りまとめまして、発表していないのではなくて、調査の都度発表いたしているわけでありますけれども、公表の時期は例年どおり夏ごろになっていまして、今回もその予定で進んでいるわけでございます。
 医業経営実態というのは、御案内のように中医協が行っている調査でございまして、中医協が病院経営の、歯科診療所の経営の収支差がどうなっているか等々を含めまして承知をした上で、必要な改定率の幅等を判断をしていく材料になるものでございます。
 したがって、中医協の調査ということで取りまとめをしているわけでございますけれども、御要請があるということで、さらに私どもは調査の結果を誠実に取りまとめ、あるいは分析した上で中医協の方から公表される、こういうことになっております。
    〔甘利主査代理退席、唐沢主査代理着席〕

○浅井分科員 この実態調査は医業経営の安定ということからやっているわけで、今回、この四月の医療費の改定があるわけです。それに対しての資料にすればいいわけなんであって、もっと早くきちっとまとめればいいのを、昨年の六月にやって、まだまとまらないというのが問題だと私は言っているわけです。
 伊東中医協委員は、医療経済実態調査小委員長は、去年の十二月の六日、九一年六月に実施した医療経済実態調査の結果について、今回の調査では、医業経営の現状は、前回と比べ医業収支率は総じて低下の傾向にあると記者会見で述べたが、同日の中医協で政府は、調査結果を公表しないとした。その中でも歯科は特に落ち込みが大きかったと言われております。しかし、中医協は、全員懇で事実上、改定幅を政府に一任する取りまとめを行った。これは、改定を実態調査の結果を勘案してどの立場を事実上放棄しているじゃないですか。結果的にマイナス改定を招くことになるんじゃないかということなんです。
 さっき私がこの資料を大臣にも差し上げましたけれども、もっともっと真剣にやっていけば、このいわゆる引き上げのときに、改定のときにこの実態が生かされるではないか。実態が生かされてないから、公表をなぜしないのかと私は問うているわけですよ。
○黒木政府委員 医業経営実態調査につきましては、私どもは六月で調査をいたすわけでありますけれども、例年、十二月の時期に診療報酬改定の大詰めの議論になるわけでございまして、そこで改定の要否とか改定の考え方が出るわけでございまして、私どもの事務局あるいは中医協の小委員会として、その時点に速報値と申しますか、とりあえずのデータを取りまとめた形で中医協は御議論をいただく。そして、改定についての判断をした上で、その後のデータについてはさらに詳細に分析等を加えた上で国民に夏ごろ公表する、こういう手はずに前回はなっているわけでございまして、今回もそのような取り運びになるだろうと思います。
○浅井分科員 医療費の改定は、国民の社会保障の大きな柱である医療保険制度の充実を図るために必要なことなんです。その裏づけは、医療経済実態調査のデータを反映すべきなんです。それを中間報告のようなあいまいなものでやるからそういうことになって、もっと速やかに実態調査をまとめて、そして、反映されたものの上において医療費改定が行われるべきだと私は言いたいわけです。正確にそのデータを尊重したものであるのか
どうか、疑わしいわけです。
 今回の改定幅とそのデータとの相関関係はどうなっているのか、本当に私はこの問題について今度公表したときもう一遍詳しく調べますけれども、診療報酬の改定については、医業経営の安定や医療費適正化の見地を十分配慮して行うということが、これがうたわれておるわけなんです。ところが、医業経営の安定ではないじゃないですか。実際問題は赤字が出てくるじゃないですか。不安定じゃないですか。こんなものが真の改定がと私は言いたいわけですよ。
○黒木政府委員 私どもは、今回の改定によりまして、歯科診療の経営というものは安定するであろうと見ているわけでございます。御指摘のデータ等は、これから貴重なデータとして、参考として分析させていただきますけれども、問題は、一つはぜひ御理解いただきたいのは、診療報酬は全国平均の考え方でございます。したがいまして、これは医科でも同じでございますけれども、今の診療報酬が地域差のない全国一本の形になっておることから、都会等についてはやや経営がきつくなっているというのは、医科についても同様の傾向があるのは承知をいたしております。
 さらに、補綴の関係、入れ歯の関係の赤字の御指摘がございました。
 これも資料によって分析をさせていただきますけれども、診療報酬の考え方というのは、全体の各技術の評価によって経営が成り立つという発想をいたしておりまして、医科におきましても、例えば今までは手術部門が不採算であるとか、この部門が不採算であるということがあったわけでございますけれども、不採算であるがゆえに、そこのところだけとられて、そこの診療が著しく質の悪い診療になるということはあり得ないものと私どもは考えております。
 私ども、入れ歯の調査は具体的にはいたしておりませんけれども、NHKの報道がありまして、何か適当な資料はないかというふうに検索をいたしたわけでありますが、幸い、平成二年に日本口腔保健協会が行った高齢者に対する歯の咀嚼機能回復モデル事業調査によりますと、上下に義歯を入れている三千人からの回答で、上下ともぐあいが悪いと答えた人は八%、上下いずれかがぐあいが悪いとした人は九%でございまして、この結果を見ましても、私どもは、保険診療なるがゆえに、診療報酬がそこのところだけが低いがゆえに粗悪など申しますか、まずい入れ歯が入れられるというのはないだろうし、また、お医者さんの良心としても、やはり最適な入れ歯が、その患者にふさわしいものをつくって調整してあげられるだろうというふうに考えております。
 さらに、週刊誌の御引用がございましたが、私どもの職員がやや乱暴な発言をしたように書いてございますけれども、真意は、入れ歯を入れた直後は、もう先生御案内のようにやはりいろいろ調整が必要であるわけですけれども、それはもう当然私どもはその調整の費用も見ているわけでございますが、その過程においてぐあいが悪いという人が出てくるのは間々あること、というよりも、かなり出るだろうというようなことを申し上げた結果が、そういう記事になったというふうに報告を受けておるわけでございます。
○浅井分科員 余り弁解はしてもらいたくないと僕は思うんです。もう少し謙虚に受けとめてもらいたい。それは役所ですからやってきたことに対して批判されることについては、痛いことであり、嫌なことであろうと思いますけれども、我々は過ちを改むるにはばかることなかれということであって、いろいろなことについて失敗は失敗として認めて、あるいはまた至らざるところは至らざるところを補うということでやってもらいたいと思うわけであって、こっちが質問していることに対して反論だけしているのでは、何ら改善の余地はないと思うのです。
 もう一つ、先ほど申し上げましたいい入れ歯のできない原因は、医療制度がよくないということと臨床教育の問題と二つあるわけです。臨床教育の問題に私はここから入りたいと思いますが、時間が迫っていますので、簡単に答弁してもらいたいと思います。
 臨床教育がなってないというこの件、やはりNHKの報道でございました。現在、我が国に二十七大学二十九学部の歯科教育機関があります。予科二年、本科四年、百八十八単位の学習をしておるそうでありますけれども、国家試験がいわゆるペーパーテストに追われておるために、臨床実習はほとんどなくて、見学主体、見学実習に追われているそうであります。この国家試験への実地の復活についてはどういうふうに考えておられますか、簡単に。
○古市政府委員 現在、国家試験の中での臨床実地試験というものは考えておりません。これは、現在やっております試験の臨床実地問題の充実と、卒後に実施いたしております臨床研修を奨励するということによって、この問題点は是正していきたいと思っております。
○浅井分科員 国家試験で学科だけになったので、技術が全く無視されて、歯科医の技術力の低下は著しく、医科と同様の研修医二年必修の国家予算を早く実施することを望まれているという話がございます。いわゆる国家試験合格者の二年間の臨床研修の法制化の実施、そして歯科医師法の一部改正、法制化実施への検討会の設置、こういうものについて大臣、いかがでしょうか。
 現在、一部研修費も出されておりますけれども、これも大幅に増額してやっていかないと、これは私は時間がないので簡単に申し上げましたけれども、技工士依存体質になってきて、その技工士もだんだんいなくなってくる。そういう状況の中で、いわゆる技術の低下というものは否めないわけなのです。医師の場合は二年間の研修があるわけです。これは義務化されています。法制化されています。ところが、歯科医師の場合は一年ということになっていますけれども、やっているのは三〇%なのです。
 ドイツの場合は、国家試験というものが終わった後、今度保険医になるためにこの研修制度を設けて、そしてきちんと二年間働くことを義務づけて、それから保険医としての資格を与えているわけです。学生時代のいわゆる五年生の中で臨床実習をドイツでは行っているわけなのです。私たちが専門学校の歯科医のときは、ドイツが大体歯科の先鞭でございました。ただ、何といいますか、ちょうど日米戦争がございましたので、ドイツ、ドイツということでドイツとの医学提携がございましたけれども、ドイツはいまだにこのように実地の研修を行い、そして卒業後も、保険医の資格を与えるためにそういうことを実施しているわけです。我が国においては、卒業直後の歯科医師臨床研修というものの必要性が早くから言われております。これは予算も伴うことなんで、これについていかがかとお聞きしたいわけでございます。
○古市政府委員 御指摘のように実施率が三五%前後でございますが、この充実は図っていきたいと思っております。また、国訳によって大学における教育がゆがむというのは、これは本末転倒でございまして、そういう影響があるということは遺憾なことでございますが、ここのところで歯科部会の先生方とも御相談して、何らかの工夫ができるかどうかということは検討してまいりたいと思っております。既に愛知学院大学歯学部でございますか、二〇%の大学では正しい歯科医師の教育ということで、実習に力を入れていただいているということも報道されておりましたので、そのような例も参考にして、文部省ともひとつ協議をしたいと思います。
○浅井分科員 最後に大臣、いろいろなことを申し上げましたけれども、高齢社会を迎えて、老人の老後の喜びというのは、食べることは非常に大事なことなんですね。おいしく物がいただけるということは、人生に対して非常に大きな喜びを与えることになります。動物も、歯がなくなって物が食べられなくなったら死ぬと言われております。楽しく会話ができ、そして健康で、健康を維持するためにもいい入れ歯の確保というのは非常
に重要なことだと思います。医療を心から愛して、一生懸命まじめに取り組んでいる歯科医師もたくさんおります。そういう人たちが喜んで健康保険の義歯がつくれるような、そういう体制を本当に一日も早くつくっていただきたいと、私は心から願っているものでございます。
 どうかこの点について、今いろいろな政治不信が高まっている社会の中でございますけれども、厚生行政はすばらしい、この間、ちょうど白内障の問題で大臣が勇断を下されたわけですけれども、この入れ歯の問題についても「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の着実な実施という言葉に沿うように、早速この実情を中医協にも伝えていただいて、二年後を待たないで何らかの早急な善処方を私はぜひ望みたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○山下国務大臣 私の考えといいますか、私の知っていることが間違いなければ、戦後間もなくのころからずっと見てみまして、前は歯医者さんのせがれが、ちゃんと立派な診療所があるにもかかわらず後継ぎをしないで、一般の医学部に行ったという例がもうしばしばでございました。私の知る範囲内でそれは比較的少なくなって、まあたまにはありますけれども、それはそれだけ歯科医師の地位が高くなった。それは保険その他における収益の面から見ても同じといいますか、かなり接近したといいますか、いい線にいっているんではないか。これは、そんなことを言うとしかられるかもしれませんが、そう思っております。
 また、私が歯医者さんなんかへ行って見る限りにおいては、例えば技工士なんか今まで歯科医師に従属しておったのですが、これからは歯科医師一人に対して技工一二人というのは必要なのかどうかという点まで考えてみますと、やはり技工士としての一つの業として、たくさんの歯科医師からそれをちょうだいして技工するというようなふうに、だんだん合理化が歯科医師の間でももっと進んでいけば、さらに歯科医師の収入はふえていくんじゃないかと私は思いますし、いろいろな面から見ればやはりもっと改善しなければならぬ点、また私どもも考えなければならぬ面もあると思いますが、努力をしてまいりたいと思います。
○浅井分科員 中医協によく相談していただきたいのですけれども、この点ちょっとお約束していただきたいと思いますが。
○山下国務大臣 よくわかりました。その点は私どもからもよく伝えたいと思います。

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