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歯科技工士・岩澤 毅

歯科保険医療 危機の現実

2009年05月31日 | 草の根研究会・みんなの歯科ネットワーク
歯科保険医療 危機の現実
鈴木伸幸

歯科の保健医療が崩壊の危機に瀕している。医療費抑制の波にもまれ、診療報酬は低迷。しかも、歯科医師の数は過剰で過当競争。背に腹は代えられず、「保険はやめた」と患者負担の大きい保険外診療(自由診療)に走る歯科医師は増加中だ。そのうちに「保険の患者はお断り」という歯科医院ばかりとなり、庶民が治療を受けられない時代がやってくるかも。

患者思い・・・・・年収445万円

「お恥ずかしい限りですが、一昨年の年収は377万円、昨年はちょっと上がって445万円です」。確定申告書を手に、歯科医師の山田真氏(38)は自嘲気味に話し出した。 東北地方でただひとつの政令指定都市、仙台市の住宅街にある歯科医院。祖母の代から続く三代目で、地元では「丁寧に治療してくれる」と評判だ。ところが「保健医療にこだわり、患者さんの利益だけを考えると、収入はこのぐらいです」。
 山田歯科医院の経営状況は、ざっとこんな具合だ。歯科衛生士を三人抱え、受け付け業務などでパートを二人雇用。74歳の母親が古くからの患者を一日に一人、二人診ているが、ほとんどの患者は山田氏が治療する。
 一日の患者数は全国平均より多い三十人弱で、月間の診療報酬は320万円前後。これに対して従業員の人件費は80万円。治療用の材料費で20万円、補綴物などの外注で65万円、さらには設備投資の借入金返済や機器リース料の40万円は黙っていても出て行く。
 115万円が残るが、そこからボーナス支給のための準備金や、各種の研修会や会議に出席するための必要経費、その他の臨時の出費をやりくりすると、最終的に山田氏の年収は400万円前後。しかも、年功序列の給与とは違い、今後、収入増の保証はない。
 「5歳と2歳の子どもは保育園に預けて妻は市役所で働いている。もともと土地があったので、何とかやっていけるが、妻が専業主婦だったら、とても無理」と実情を明かした。

診療報酬低迷「頑張るほど経営圧迫」

 高度の特殊技能を持つ歯科医師の収入が、どうしてここまで低くなってしまうのか。「そもそも保険制度がおかしい。患者のために頑張って治療すればするほど、経済的には厳しくなる」と山田氏はため息をついた。
 まずは、日本の保険の診療報酬は異常に低い。他先進国と比べて四分の一程度とのデータがあるほどだ。しかも、治療の質は問われず、同じ治療に、たっぷり30分かけて丁寧に処置しても、10分で終わらせても報酬は同じ。
 山田氏はこう指摘する。「医療者として『患者の利益』を第一に考えて治療に当たるべきだが、こんな現状では、お金の計算を先にしながらの治療になってしまう。患者からすれば、そんな歯科医に体を預けていいとは思わないでしょう」


東京新聞 2009年5月31日 掲載

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