126 - 参 - 厚生委員会 - 2号
平成05年03月02日
○木暮山人君
○政府委員(古川貞二郎君)
○政府委員(岡光序治君)
○木暮山人君 厚生大臣、御就任まことにおめでとうございます。
先日、豊富な識見と御経験あふれる所信表明を拝聴いたしました。どれもこれも我が国の厚生行政に欠かすことのできない問題ばかりでございましたが、今世紀末、厚生行政の正念場を迎えるに当たりまして、この中で最重要施策として取り上げるとしたらどの問題が重要であり、そしてまた、それに対応するところの御決意をひとつ簡単に御披瀝をお願いしたいと思います。
○国務大臣(丹羽雄哉君) もう今さら申し上げるまでもなく、厚生行政は国民の生活に直接関連する大変大きな課題を抱えておるわけでございます。私は、大臣の就任に当たりまして、とにかく国民の皆様方にとってぬくもりのある厚生行政、こういうものを目指していきたい、こういう決意を披瀝させていただいたわけでございます。
今後の具体的な問題といたしましては、高齢化社会における社会保障の基盤の整備として、まず厚生年金の支給開始の引き上げ問題、さらに公的年金の一元化を中心とした年金制度の改革へ向けて取り組んでいきたい、これがまず第一点でございます。
それから、給付と負担の公平化などを含めたい
わゆる医療保険制度改革への取り組み、さらに高齢者保健福祉推進十カ年戦略、いわゆるゴールドプラン、これを平成二年からスタートいたしておるわけでございますけれども、着実にこれも整備していかなければならない、このように考えております。
そのほか、次代を担う子供たちが健やかに生まれ育つような環境づくり、こういった面のほか、先生も大変御関心がおありと思いますけれども、最近エイズ問題が大変大きな問題となっております。おかげさまで、今衆議院段階で御審議をいただいております予算の中で、エイズにつきましても前年より五倍の百一億の予算が計上されておるわけでございます。このエイズ問題につきましても、ひとつ私は先頭に立って取り組んでいきたい、このように考えているような次第でございます。
そのほか、いわゆるごみ処理の問題も大変大きな問題でございます。一人の人間が一日一キログラム当たりのごみを排出するという、生活雑排水の問題、それから企業などが出しますいわゆる産業廃棄物の問題、こういった問題につきまして、いずれにいたしましても、国民の皆さん方が本当に生活大国にふさわしいいわゆる豊かな国民生活を享受できるような厚生行政の推進のためにひとつ全力で取り組んでいく決意でございます。
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
御決意のほど御立派でございまして、今後やはり日本の不平等の中で、そしてまた規格的に厚生行政が進められている姿というものは立派であるけれども、長年の間にそこを生じた部分についてはどこかで是正していかなければいけない問題につきましても、ひとつぜひお心を添えていただきたいと思います。
また、今世界的に猛威を振るっておりますエイズ、これの感染防止策等につきましてはいろいろ厚生省でも指導をなさっております。また、国際条約でバーゼル条約というごみの問題を取り上げる条約が締結されて、それの国内法が今施行されております。これによりますところの廃棄物の処理、そしてまた特に医療廃棄物等の処理、こういう問題を一つずつ取り上げてみますと、まずそれがいずれもコストが相当かかっておることでございまして、先ほどの大浜先生の御質問にもありましたように、行政担当の方々に、ただ言葉だけ、そしてまた指示だけじゃなくて、財政の裏づけ等の中に処理コストを評価して保険の点数の中にちゃんと出していっていただかなければ、その負担をこうむり犠牲をこうむるのは担当させられている立場の者だけに限られていくと思います。こういう点、即国民の期待に反することなくやれるような医療保険の整備をひとつ考えていただきたい。
時間がございませんもので質問を全般的にやっていきたいと思いますけれども、後でまとめてひとつ御返答のほどをお願いしたいと思います。
第二点といたしましては、我が国の医療制度の医療行為の中に相当不平等な点があるのではないか、そしてまたいわゆる医療担当者の置かれている立場、これが大変束縛された中に置いておかれますもので、何か余り強い発言ができなくなっている。がんじがらめの医療機関の中に立たされているわけでありまして、私はそういう意味で医療というものが行政そのものの方向にどんどん推移、移行させられていく。そのために、かつてインフォームド・コンセントということは、いわゆる町の名医という評判、この中に生きていたわけでありましたが、昭和二十三年に基金法ができ、三十四年に国民皆保険になりますと、もう医は算術になってしまいまして、どんどん厚生省の指導の方向に進まなければ経営が成り立たないという現状に追いやられてきております。
いろんな問題がまだあるわけでありますが、その中の一つを私は歯科医の立場で申し上げます。
歯科医は医療行為を法的にすることはできません。しかし、医師は歯科医の行為を準じてやることが可能であります。違法にはなりません。
簡単に言いますと、歯を一つ抜く問題を考えますと、医師でも歯を抜くことはできます。しかし、医師が歯を抜いた場合と歯を抜く専門医の歯科医が歯を抜いた場合どれぐらい違うかということです。一番簡単な歯を抜く場合大体一本千二百円ぐらいで抜けます。そして一番高い歯は約九千円ぐらいになって、平均二千七、八百円から三千円ぐらいであります。こういう歯が年間二千三百万本ぐらい歯科医及び医師によって抜歯されております。しかし、医師と歯科医の歯を抜いたときの格差というものが約千六百二十円あります。
この千六百二十円という金額の格差というもの、専門医が安くて専門医じゃない方が高いというのはこれはやはり不平等なんじゃないか。これを年間に計算しますと、お金のことを言って恐縮なんでございますけれども、約三百七十二億円ぐらい収入減になっているわけであります。それが今まで三十五年も是正されずにきていますから、約一兆円ぐらい歯科界に来るべきお金が来ていない。それだけ歯科界というのは医師の世界で不平等に取り扱われております。
そういうことがあってはいけないと思うのでありますが、同じ口の中の手術をした場合、扁桃腺の摘出手術というのがございます。これは歯科と医科の境界の治療でございますけれども、扁桃腺、肉の塊みたいなものを切除するわけであります。これを切除すると、医科の方では二千三百点、要するに二万三千円の評価を受けております。しかし、皆さんも御存じのように親知らずというまだ生えてこない痛い歯があります。どこにあるかわからないような歯を歯科医が汗を流して一生懸命抜歯してもこれは九百点、九千円であります。こんなところに、私は、技術的にいろんな評価をまだまだ考えてもらわなければいけないんではないか。
まだ次に挙げますと、例えば歯科医が皮下注射、筋肉注射を打ちますと、これは込みでただであります。しかし医師が注射をすると十五点、百五十円です。また検査料もそのとおり、いろんな格差があります。また、抜歯後の洗浄、これを洗浄しましても歯医者の方は歯を抜いた中に含まれておりますが、医師が抜いた後これを洗浄しますと、約二百円、三百円、四百五十円、七百円ぐらいを傷口の大小により支給されております。これなどもひとつ考えていただきたい。
それともう一つは、麻酔というのは今、無痛抜歯といいましてなるべく全身麻酔で抜くような傾向になっております。しかし、これがなかなかうまく考えられておりません。麻酔によって事故を起こした場合、心電図とか肺機能検査とかいろんなことをします。これが約五千円ぐらいになりますが、なかなかこれがうまく評価されないで給付されないような現況にあります。こんなような現況をぜひ考えていただきたいということでございます。
もう一つ加えまするに、歯科で使われている材料、この材料というものはもう五十年も前に認定されたような材料を使っているわけであります。しかし、一番大事なこと、もうここのところ十年ぐらい衆議院でも方々で論ぜられておりますが、みんな最後の結論を出しておりません。私は、それにつきましてしっかりした結論をひとつお願いしたいと思いまして、参考までにここに披瀝させていただきたい問題があります。
歯科の入れ歯に使っておりますプラスチック、これは学名メチルメタクリレートと申しております。このメチルメタクリレートというのは、粉と液を二つまぜてそれで熱をかけてかたいプラスチックにするわけであります。これは学問的に言いますとラジカル重合反応といいまして、その定数によって計算してみますと、過酸化ベンゾイル十のマイナス四乗モル濃度とメチルメタクリレートモノマーが一モル濃度によって重合して一つの物体になるわけであります。しかし、そういう物体になりましてもこれが完全に一つのものになっているかといいますと、学問的に計算しますと九三%から九五%しか結合できないと言われております。それを一〇〇%近く重合させるには、その後熱処理を行い完全重合に向かっての努力をする
わけでありますが、歯科の入れ歯を熱処理しますと収縮して変形してしまいます。そのためにこれは不可能であります。
そうしますと、九三%から九五%ぐらいの関係で今の入れ歯というものができていますと、その後の残された、いわゆる口の中に入れて流れ出る残留モノマー、これはがんの発生素因になる物質でありますが、これがどんどん流れ出る。その流れ出た後には水が吸収されて劣化して入れ歯が壊れてしまう。しかし、食品衛生法では、残留モノマーが大体一五ppm以上のものをあのサンドイッチ等を入れる器に使ってはいけないと言われています。また眼内レンズ、これは〇・一ppmないしは〇・〇〇一ppm以上の残留モノマーがあったら使ってはいけないと自主規制されています。しかし、歯科の入れ歯はどうやっても二〇ppm、大きい場合は二〇〇ppmという残留モノマーがある。
これにつきまして、厚生省は正確にこれの安全性を確認しておいでになるのか、また学会ではそういうことを安全だと言っているのか、そこら辺をひとつ加えてお話ししていただきたいと思います。
持ち時間の関係で、以下の質問は次回にさせていただきまして、大体そんなところで厚生省の御答弁を拝聴したいと思います。
○政府委員(古川貞二郎君) たくさん御質問をいただきましたが、一つは医療廃棄物等の処理コストの問題、それからもう一つは医科、歯科の診療報酬体系の格差の問題、その二つにつきまして私の方から御説明を申し上げたいと思います。
まず第一点でありますけれども、御案内のとおり、診療報酬につきましては、人件費とか物件費の動向とかあるいは医業収入の動向等を総合的に勘案いたしまして、全体として医療機関の経営が確保されるように改定しているところでございます。
そこで、お尋ねの医療廃棄物の処理に必要な費用につきましては、これは医業経営に必要なコストであるということで、こういった医業経営に必要なコストについては全体として医療経済実態調査によりこれを把握いたしまして、中医協の御議論を踏まえまして診療報酬上適切な措置を講じてまいりたい、かように考えております。
なお、MRSA対策に必要な経費につきましても基本的には同じでございますけれども、この問題については先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、診療報酬上の対応について勉強してまいりたい、かように考えておるところでございます。
それから第二点の医科、歯科の診療報酬体系に格差があるのではないか、こういったお尋ねでございますけれども、医科と歯科におきましては診療の対象となる傷病の性質とかあるいは診療行為の内容等が異なるために、医療の特性を踏まえて医科、歯科それぞれの診療行為全体を勘案しつつ個別の点数を決めているものでございまして、共通の技術につきましては基本的に同一の評価を行っている、こういう実情にございます。
このような趣旨から、例えば初診時基本診療料とかあるいは再診時基本診療料につきましては、初診、再診行為の違いというようなことで医科、歯科で異なっている。また、お話の筋肉内注射につきましては、歯科医療上は基本的な医療行為として基本診療料に含まれておるわけでございますが、医科においては独立して評価されている。これは、いわゆる基本診療料の評価の違いということからこうなっているわけでございます。
ただ、先ほど申し上げましたように、共通の技術につきましては基本的に同一の評価と、こう申し上げたわけですが、先生御指摘の事例のうちで、抜歯とか麻酔とか検査につきましては医科、歯科同一の点数になっている、こういう実情でございまして、そういったそれぞれの評価の違いからそういう扱いになっているということを御理解賜りたいと思います。
○政府委員(岡光序治君) 義歯床用のアクリル樹脂の安全性の問題でございますが、これは御指摘がありましたように、開発以来五十数年にわたって世界各国で使用されているものでございまして、その安全性につきましては特段の問題はないというふうに認識をいたしております。しかし、残留モノマーの実態を的確に把握することは必要でございますので、厚生科学研究によりましてその面につきましての研究を現在進めているところでございます。
○木暮山人君 どうもありがとうございました。またいずれ続きをやらせていただきます。
平成05年03月02日
○木暮山人君
○政府委員(古川貞二郎君)
○政府委員(岡光序治君)
○木暮山人君 厚生大臣、御就任まことにおめでとうございます。
先日、豊富な識見と御経験あふれる所信表明を拝聴いたしました。どれもこれも我が国の厚生行政に欠かすことのできない問題ばかりでございましたが、今世紀末、厚生行政の正念場を迎えるに当たりまして、この中で最重要施策として取り上げるとしたらどの問題が重要であり、そしてまた、それに対応するところの御決意をひとつ簡単に御披瀝をお願いしたいと思います。
○国務大臣(丹羽雄哉君) もう今さら申し上げるまでもなく、厚生行政は国民の生活に直接関連する大変大きな課題を抱えておるわけでございます。私は、大臣の就任に当たりまして、とにかく国民の皆様方にとってぬくもりのある厚生行政、こういうものを目指していきたい、こういう決意を披瀝させていただいたわけでございます。
今後の具体的な問題といたしましては、高齢化社会における社会保障の基盤の整備として、まず厚生年金の支給開始の引き上げ問題、さらに公的年金の一元化を中心とした年金制度の改革へ向けて取り組んでいきたい、これがまず第一点でございます。
それから、給付と負担の公平化などを含めたい
わゆる医療保険制度改革への取り組み、さらに高齢者保健福祉推進十カ年戦略、いわゆるゴールドプラン、これを平成二年からスタートいたしておるわけでございますけれども、着実にこれも整備していかなければならない、このように考えております。
そのほか、次代を担う子供たちが健やかに生まれ育つような環境づくり、こういった面のほか、先生も大変御関心がおありと思いますけれども、最近エイズ問題が大変大きな問題となっております。おかげさまで、今衆議院段階で御審議をいただいております予算の中で、エイズにつきましても前年より五倍の百一億の予算が計上されておるわけでございます。このエイズ問題につきましても、ひとつ私は先頭に立って取り組んでいきたい、このように考えているような次第でございます。
そのほか、いわゆるごみ処理の問題も大変大きな問題でございます。一人の人間が一日一キログラム当たりのごみを排出するという、生活雑排水の問題、それから企業などが出しますいわゆる産業廃棄物の問題、こういった問題につきまして、いずれにいたしましても、国民の皆さん方が本当に生活大国にふさわしいいわゆる豊かな国民生活を享受できるような厚生行政の推進のためにひとつ全力で取り組んでいく決意でございます。
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
御決意のほど御立派でございまして、今後やはり日本の不平等の中で、そしてまた規格的に厚生行政が進められている姿というものは立派であるけれども、長年の間にそこを生じた部分についてはどこかで是正していかなければいけない問題につきましても、ひとつぜひお心を添えていただきたいと思います。
また、今世界的に猛威を振るっておりますエイズ、これの感染防止策等につきましてはいろいろ厚生省でも指導をなさっております。また、国際条約でバーゼル条約というごみの問題を取り上げる条約が締結されて、それの国内法が今施行されております。これによりますところの廃棄物の処理、そしてまた特に医療廃棄物等の処理、こういう問題を一つずつ取り上げてみますと、まずそれがいずれもコストが相当かかっておることでございまして、先ほどの大浜先生の御質問にもありましたように、行政担当の方々に、ただ言葉だけ、そしてまた指示だけじゃなくて、財政の裏づけ等の中に処理コストを評価して保険の点数の中にちゃんと出していっていただかなければ、その負担をこうむり犠牲をこうむるのは担当させられている立場の者だけに限られていくと思います。こういう点、即国民の期待に反することなくやれるような医療保険の整備をひとつ考えていただきたい。
時間がございませんもので質問を全般的にやっていきたいと思いますけれども、後でまとめてひとつ御返答のほどをお願いしたいと思います。
第二点といたしましては、我が国の医療制度の医療行為の中に相当不平等な点があるのではないか、そしてまたいわゆる医療担当者の置かれている立場、これが大変束縛された中に置いておかれますもので、何か余り強い発言ができなくなっている。がんじがらめの医療機関の中に立たされているわけでありまして、私はそういう意味で医療というものが行政そのものの方向にどんどん推移、移行させられていく。そのために、かつてインフォームド・コンセントということは、いわゆる町の名医という評判、この中に生きていたわけでありましたが、昭和二十三年に基金法ができ、三十四年に国民皆保険になりますと、もう医は算術になってしまいまして、どんどん厚生省の指導の方向に進まなければ経営が成り立たないという現状に追いやられてきております。
いろんな問題がまだあるわけでありますが、その中の一つを私は歯科医の立場で申し上げます。
歯科医は医療行為を法的にすることはできません。しかし、医師は歯科医の行為を準じてやることが可能であります。違法にはなりません。
簡単に言いますと、歯を一つ抜く問題を考えますと、医師でも歯を抜くことはできます。しかし、医師が歯を抜いた場合と歯を抜く専門医の歯科医が歯を抜いた場合どれぐらい違うかということです。一番簡単な歯を抜く場合大体一本千二百円ぐらいで抜けます。そして一番高い歯は約九千円ぐらいになって、平均二千七、八百円から三千円ぐらいであります。こういう歯が年間二千三百万本ぐらい歯科医及び医師によって抜歯されております。しかし、医師と歯科医の歯を抜いたときの格差というものが約千六百二十円あります。
この千六百二十円という金額の格差というもの、専門医が安くて専門医じゃない方が高いというのはこれはやはり不平等なんじゃないか。これを年間に計算しますと、お金のことを言って恐縮なんでございますけれども、約三百七十二億円ぐらい収入減になっているわけであります。それが今まで三十五年も是正されずにきていますから、約一兆円ぐらい歯科界に来るべきお金が来ていない。それだけ歯科界というのは医師の世界で不平等に取り扱われております。
そういうことがあってはいけないと思うのでありますが、同じ口の中の手術をした場合、扁桃腺の摘出手術というのがございます。これは歯科と医科の境界の治療でございますけれども、扁桃腺、肉の塊みたいなものを切除するわけであります。これを切除すると、医科の方では二千三百点、要するに二万三千円の評価を受けております。しかし、皆さんも御存じのように親知らずというまだ生えてこない痛い歯があります。どこにあるかわからないような歯を歯科医が汗を流して一生懸命抜歯してもこれは九百点、九千円であります。こんなところに、私は、技術的にいろんな評価をまだまだ考えてもらわなければいけないんではないか。
まだ次に挙げますと、例えば歯科医が皮下注射、筋肉注射を打ちますと、これは込みでただであります。しかし医師が注射をすると十五点、百五十円です。また検査料もそのとおり、いろんな格差があります。また、抜歯後の洗浄、これを洗浄しましても歯医者の方は歯を抜いた中に含まれておりますが、医師が抜いた後これを洗浄しますと、約二百円、三百円、四百五十円、七百円ぐらいを傷口の大小により支給されております。これなどもひとつ考えていただきたい。
それともう一つは、麻酔というのは今、無痛抜歯といいましてなるべく全身麻酔で抜くような傾向になっております。しかし、これがなかなかうまく考えられておりません。麻酔によって事故を起こした場合、心電図とか肺機能検査とかいろんなことをします。これが約五千円ぐらいになりますが、なかなかこれがうまく評価されないで給付されないような現況にあります。こんなような現況をぜひ考えていただきたいということでございます。
もう一つ加えまするに、歯科で使われている材料、この材料というものはもう五十年も前に認定されたような材料を使っているわけであります。しかし、一番大事なこと、もうここのところ十年ぐらい衆議院でも方々で論ぜられておりますが、みんな最後の結論を出しておりません。私は、それにつきましてしっかりした結論をひとつお願いしたいと思いまして、参考までにここに披瀝させていただきたい問題があります。
歯科の入れ歯に使っておりますプラスチック、これは学名メチルメタクリレートと申しております。このメチルメタクリレートというのは、粉と液を二つまぜてそれで熱をかけてかたいプラスチックにするわけであります。これは学問的に言いますとラジカル重合反応といいまして、その定数によって計算してみますと、過酸化ベンゾイル十のマイナス四乗モル濃度とメチルメタクリレートモノマーが一モル濃度によって重合して一つの物体になるわけであります。しかし、そういう物体になりましてもこれが完全に一つのものになっているかといいますと、学問的に計算しますと九三%から九五%しか結合できないと言われております。それを一〇〇%近く重合させるには、その後熱処理を行い完全重合に向かっての努力をする
わけでありますが、歯科の入れ歯を熱処理しますと収縮して変形してしまいます。そのためにこれは不可能であります。
そうしますと、九三%から九五%ぐらいの関係で今の入れ歯というものができていますと、その後の残された、いわゆる口の中に入れて流れ出る残留モノマー、これはがんの発生素因になる物質でありますが、これがどんどん流れ出る。その流れ出た後には水が吸収されて劣化して入れ歯が壊れてしまう。しかし、食品衛生法では、残留モノマーが大体一五ppm以上のものをあのサンドイッチ等を入れる器に使ってはいけないと言われています。また眼内レンズ、これは〇・一ppmないしは〇・〇〇一ppm以上の残留モノマーがあったら使ってはいけないと自主規制されています。しかし、歯科の入れ歯はどうやっても二〇ppm、大きい場合は二〇〇ppmという残留モノマーがある。
これにつきまして、厚生省は正確にこれの安全性を確認しておいでになるのか、また学会ではそういうことを安全だと言っているのか、そこら辺をひとつ加えてお話ししていただきたいと思います。
持ち時間の関係で、以下の質問は次回にさせていただきまして、大体そんなところで厚生省の御答弁を拝聴したいと思います。
○政府委員(古川貞二郎君) たくさん御質問をいただきましたが、一つは医療廃棄物等の処理コストの問題、それからもう一つは医科、歯科の診療報酬体系の格差の問題、その二つにつきまして私の方から御説明を申し上げたいと思います。
まず第一点でありますけれども、御案内のとおり、診療報酬につきましては、人件費とか物件費の動向とかあるいは医業収入の動向等を総合的に勘案いたしまして、全体として医療機関の経営が確保されるように改定しているところでございます。
そこで、お尋ねの医療廃棄物の処理に必要な費用につきましては、これは医業経営に必要なコストであるということで、こういった医業経営に必要なコストについては全体として医療経済実態調査によりこれを把握いたしまして、中医協の御議論を踏まえまして診療報酬上適切な措置を講じてまいりたい、かように考えております。
なお、MRSA対策に必要な経費につきましても基本的には同じでございますけれども、この問題については先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、診療報酬上の対応について勉強してまいりたい、かように考えておるところでございます。
それから第二点の医科、歯科の診療報酬体系に格差があるのではないか、こういったお尋ねでございますけれども、医科と歯科におきましては診療の対象となる傷病の性質とかあるいは診療行為の内容等が異なるために、医療の特性を踏まえて医科、歯科それぞれの診療行為全体を勘案しつつ個別の点数を決めているものでございまして、共通の技術につきましては基本的に同一の評価を行っている、こういう実情にございます。
このような趣旨から、例えば初診時基本診療料とかあるいは再診時基本診療料につきましては、初診、再診行為の違いというようなことで医科、歯科で異なっている。また、お話の筋肉内注射につきましては、歯科医療上は基本的な医療行為として基本診療料に含まれておるわけでございますが、医科においては独立して評価されている。これは、いわゆる基本診療料の評価の違いということからこうなっているわけでございます。
ただ、先ほど申し上げましたように、共通の技術につきましては基本的に同一の評価と、こう申し上げたわけですが、先生御指摘の事例のうちで、抜歯とか麻酔とか検査につきましては医科、歯科同一の点数になっている、こういう実情でございまして、そういったそれぞれの評価の違いからそういう扱いになっているということを御理解賜りたいと思います。
○政府委員(岡光序治君) 義歯床用のアクリル樹脂の安全性の問題でございますが、これは御指摘がありましたように、開発以来五十数年にわたって世界各国で使用されているものでございまして、その安全性につきましては特段の問題はないというふうに認識をいたしております。しかし、残留モノマーの実態を的確に把握することは必要でございますので、厚生科学研究によりましてその面につきましての研究を現在進めているところでございます。
○木暮山人君 どうもありがとうございました。またいずれ続きをやらせていただきます。