公立大学法人横浜市立大学は、幸せな大学である。, 2011/8/6
By 歯職人
本書は、民間企業でキャリアを積み海外経験も豊富なビジネスパーソンが、「異界」の公立大学法人の学生向けキャリア支援室勤務で経験した、公立大学という組織の「物語」である。
著者の菊地達昭氏は、民間企業を経て公立大学法人横浜市立大学に職を得た事による、複眼的視点を持ち得ている。その見聞録の本書は、大学への告発の書と言うよりは、愛のある横浜市と大学法人に対する提言の書といったところである。
本書の中心は、大学の事務組織・経営組織が、業務遂行能力を欠ける様とその組織文化的背景を描き出していることである。
菊地氏が持つ幅広い視点からすると、この大学の経営組織は、大学以前に業務組織としての能力に欠け、組織としてのていを成していないとのことであろう。
職を離れた後に、具体的事例を挙げて改善策を提言されているのであるから、公立大学法人横浜市立大学は、幸せな大学である。
この大学は、過去を振り返れば、1999年に、心臓疾患の患者と肺疾患の患者を取り違えて手術するという、医療ミスを起こしている。
更に最近では、2010年12月医学部長でもある神経内科の黒岩教授が友人たちと会食した際、次期理事長について意見を述べたという理由で、2011年の1月に学長と理事長に呼び出され法律・規則の裏付けも無く医学部長辞任を迫られた。拒否すると2月に再び、同様に迫られ、再度拒否すると4月7日付で「解任通知」を送付され、地位保全を求めて裁判となった。
紆余曲折があり、これは黒岩教授が折れて7月31日付で「医学部長辞任」ということで、両者の和解が成立している。
他にも本書で取り上げている博士号に係る幾つかの事件等がある。
このような教員による「事件」は、新聞沙汰になることにより「情報公開」されるが、本書の内容の主な部分となる事務局内のあれこれや、経営母体の横浜市との関係等は事件性からはやや遠い故に、本書が貴重な「情報公開」となっている。著者の菊地達昭氏は、本書出版による法的ゴタゴタも視野に入れ、事実関係の確認には手間暇をかけている様である。であるから、本書の大半の部分は、根拠のあるものと思われる。
大学関係者、大学を持つ自治体関係者にお勧めしたい。そして、他の世界の見聞は狭いであろう在学生にとっては、現在地を知るために必須の書と言えるだろう。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862234836/ref=cm_cr_mts_prod_img
キャリアボウガイ アルコウリツダイガクノキャリアシエンシツデノケイケン
キャリア妨害―ある公立大学のキャリア支援室での経験
菊地 達昭【著】
東京図書出版 リフレ出版〔発売〕 (2011/06/08 出版)
291p / 19cm / B6判
ISBN: 9784862234834
NDC分類: 377.1
価格: ¥1,680 (税込)
詳細
職を失う危険の全くない彼らは、毎日のように仕事を先送りし、時代遅れの規則にとらわれながら「貴重な税金」を使い続けている―。
民間企業では考えられない公立大学の恐るべき実態。
第1章 役人たちの仕事の現実(就任早々に言われたことば;多すぎる起案のハンコ ほか)
第2章 大学の現実(進路調査は学部として一切協力できないと言い放った学部長;TOEFL500点が目標? ほか)
第3章 キャリア支援としてやってきたこと(求人票配信システム;図書・DVD貸出管理システム ほか)
第4章 どう変革を進めるのか(役人の育成に関して;公務員の採用 ほか)
著者紹介
菊地達昭[キクチタツアキ]
1949年神奈川県に生まれる。1973年北海道大学法学部法律学科を卒業、NEC入社。2002年多摩大学大学院経営情報学研究科を修了。2005年NEC退職、Y大学へ転職。2011年Y大学を退職。これまでに、日本キャリアデザイン学会常務理事(2004‐2010)、文部科学省現代GP取組選定委員会委員(2006‐208)、独立行政法人日本学術振興会教育GP推進委員会専門委員(2008‐2009)、横浜商工会議所産学連携委員会委員(2007‐2009)を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
By 歯職人
本書は、民間企業でキャリアを積み海外経験も豊富なビジネスパーソンが、「異界」の公立大学法人の学生向けキャリア支援室勤務で経験した、公立大学という組織の「物語」である。
著者の菊地達昭氏は、民間企業を経て公立大学法人横浜市立大学に職を得た事による、複眼的視点を持ち得ている。その見聞録の本書は、大学への告発の書と言うよりは、愛のある横浜市と大学法人に対する提言の書といったところである。
本書の中心は、大学の事務組織・経営組織が、業務遂行能力を欠ける様とその組織文化的背景を描き出していることである。
菊地氏が持つ幅広い視点からすると、この大学の経営組織は、大学以前に業務組織としての能力に欠け、組織としてのていを成していないとのことであろう。
職を離れた後に、具体的事例を挙げて改善策を提言されているのであるから、公立大学法人横浜市立大学は、幸せな大学である。
この大学は、過去を振り返れば、1999年に、心臓疾患の患者と肺疾患の患者を取り違えて手術するという、医療ミスを起こしている。
更に最近では、2010年12月医学部長でもある神経内科の黒岩教授が友人たちと会食した際、次期理事長について意見を述べたという理由で、2011年の1月に学長と理事長に呼び出され法律・規則の裏付けも無く医学部長辞任を迫られた。拒否すると2月に再び、同様に迫られ、再度拒否すると4月7日付で「解任通知」を送付され、地位保全を求めて裁判となった。
紆余曲折があり、これは黒岩教授が折れて7月31日付で「医学部長辞任」ということで、両者の和解が成立している。
他にも本書で取り上げている博士号に係る幾つかの事件等がある。
このような教員による「事件」は、新聞沙汰になることにより「情報公開」されるが、本書の内容の主な部分となる事務局内のあれこれや、経営母体の横浜市との関係等は事件性からはやや遠い故に、本書が貴重な「情報公開」となっている。著者の菊地達昭氏は、本書出版による法的ゴタゴタも視野に入れ、事実関係の確認には手間暇をかけている様である。であるから、本書の大半の部分は、根拠のあるものと思われる。
大学関係者、大学を持つ自治体関係者にお勧めしたい。そして、他の世界の見聞は狭いであろう在学生にとっては、現在地を知るために必須の書と言えるだろう。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862234836/ref=cm_cr_mts_prod_img
キャリアボウガイ アルコウリツダイガクノキャリアシエンシツデノケイケン
キャリア妨害―ある公立大学のキャリア支援室での経験
菊地 達昭【著】
東京図書出版 リフレ出版〔発売〕 (2011/06/08 出版)
291p / 19cm / B6判
ISBN: 9784862234834
NDC分類: 377.1
価格: ¥1,680 (税込)
詳細
職を失う危険の全くない彼らは、毎日のように仕事を先送りし、時代遅れの規則にとらわれながら「貴重な税金」を使い続けている―。
民間企業では考えられない公立大学の恐るべき実態。
第1章 役人たちの仕事の現実(就任早々に言われたことば;多すぎる起案のハンコ ほか)
第2章 大学の現実(進路調査は学部として一切協力できないと言い放った学部長;TOEFL500点が目標? ほか)
第3章 キャリア支援としてやってきたこと(求人票配信システム;図書・DVD貸出管理システム ほか)
第4章 どう変革を進めるのか(役人の育成に関して;公務員の採用 ほか)
著者紹介
菊地達昭[キクチタツアキ]
1949年神奈川県に生まれる。1973年北海道大学法学部法律学科を卒業、NEC入社。2002年多摩大学大学院経営情報学研究科を修了。2005年NEC退職、Y大学へ転職。2011年Y大学を退職。これまでに、日本キャリアデザイン学会常務理事(2004‐2010)、文部科学省現代GP取組選定委員会委員(2006‐208)、独立行政法人日本学術振興会教育GP推進委員会専門委員(2008‐2009)、横浜商工会議所産学連携委員会委員(2007‐2009)を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)