歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

二木 立 (著)  安倍政権の医療・社会保障改革 [単行本]

2014年05月06日 | amazon.co.jp・リストマニア
二木立氏による医療政策に対する時評的分析と継続する検証 2014/5/06

By 歯職人

 現在、日本福祉大学学長を務める二木立氏による医療政策に対する時評的分析と継続する検証の最新刊です。
 前著『TPPと医療の産業化』以降の時期の論考を中心に納められている。これら論考は、『文化連情報』連載の「二木教授(学長)の時評」と『日本医事新報』連載の「深層を読む・真相を解く」からの二本立てである。(この大半は、非営利・協同総合研究所いのちとくらしのHPから読むことができる。)
 二木立氏には、一部に「論争家」あるい「ケンカ上手」との風評もあるようであるが、著作はマナーに適い、過去の自己の論考の検証にも適切に目を配り、必要な訂正や補強を継続して行う、物書きとしての徹底した姿勢に貫かれている。この「徹底した姿勢」を他者に向ける時、やや風評の種がまかれるようだ。
 「第1章 安倍内閣の医療・社会保障改革」の「第1節 第二次安倍内閣の医療・社会保障政策」が、本書の主概要となっている。
 「第2章 TPPと混合診療問題」は、医療団体等で語られた「地獄のシナリオ」が霧散する時期のものである。
 「第3章 地域包括ケアシステムと今後の死に場所」では、「地域包括ケアシステム」とは、地域包括ネットワーク作りの問題であり。量的に拡大する都市部の高齢単身者の「死に場所」問題であることが解明される。また、「第4節 「麻生発言」で再考――死亡前医療費は高額で医療費増加の要因か?」では、死亡直前の医療費は高額という素朴な信仰の誤りをデータにより論証する。
 「第4章 民主党野田内閣時代の医療・社会保障政策」の「第4節 「自助・共助・公助」という表現の出自と意味の変遷」では、意味の解明を通じて、医療政策の立案者の思想傾向の変化を概観する。「第5節 『平成24年版厚生労働白書』を複眼的に読む」では、白書の編集者・著者の背景に迫り、ある種推理小説を読むような快感がある。
 「第5章 日本の医療と医療政策の誤解を解く」では、一時的に世に広まりその後訂正されることなく置かれた言説の事実誤認を暴く。「第1節 病院勤務医の開業志向は本当に生じたのか?――全国・都道府県データによる検証」では、小松秀樹医師の「立ち去り型サボタージュ」論をデータにより論破する。「第7節 地方の中堅私大経営から見ると医療経営はうらやましい!」は、地方私大の学長の任に就いた者の本音であり叫びが聞こえるようだ。
 二木立氏の他の著作にも言えることであるが、文章と論理の運びに無理がなく極めて読みやすい。
 「○○政権の」と題する著作は、『民主党政権の医療政策』に続いての登場であるが、対象を明確化する意味で読者にとっては本選び時に便利であるが、他の要素を後景に追いやるような気もする。書名とは、まことに厄介なものである。
 現政権の医療政策の概要をつかむうえで、押さえておきたい一冊です。

http://www.amazon.co.jp/%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%94%BF%E6%A8%A9%E3%81%AE%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%83%BB%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E6%94%B9%E9%9D%A9-%E4%BA%8C%E6%9C%A8-%E7%AB%8B/dp/4326700823/ref=cm_lmf_tit_21


安倍政権の医療・社会保障改革

二木 立【著】

価格 \2,592(本体\2,400)
勁草書房(2014/04発売)

サイズ A5判/ページ数 222p/高さ 22cm
商品コード 9784326700820
NDC分類 498.13



内容説明

TPPは私たちの医療をどう変えるのか、病院からあふれる高齢者と地域包括ケアのゆくえ、「多死時代」と今後の「死に場所」─難題山積する医療・社会保障制度改革の動向を最新の資料を用いて分析、今後を見通す。また、電子化による医療費削減や激務による病院勤務医の退職増加といった医療をめぐる通説を検証、誤解に基づく議論に警鐘を鳴らす。

目次

はしがき

第1章 安倍内閣の医療・社会保障改革
 第1節 第二次安倍内閣の医療・社会保障政策
 第2節 2012年総選挙後の医療・社会保障政策を読む――参院選までは「安全運転」
 第3節 安倍内閣の「骨太方針2013」と「日本再興戦略」の医療・社会保障改革方針を読む
 第4節 2013年参院選の自民大勝で医療政策はどう変わるか――安倍内閣の成長戦略と医療政策の今後の行方
 第5節 社会保障制度改革国民会議報告を複眼的に評価し,「プログラム法案」を批判する
 第6節 財政審「建議」の診療報酬引き下げ論の検証

第2章 TPPと混合診療問題
 第1節 TPPは私たちの医療をどう変えるか?
 第2節 安倍首相のTPP交渉参加表明と医療への影響を読む――2年半のTPP論争の成果にも触れながら
 第3節 TPP参加が日本医療に与える影響――「今そこにある危機」と混合診療問題
 第4節 私が「保険外併用療養拡大」より「法定患者負担拡大」を危惧する理由

第3章 地域包括ケアシステムと今後の死に場所
 第1節 地域包括ケアシステムと医療・医療機関の関係を正確に理解する
 第2節 今後の死亡急増で「死亡場所」はどう変わるか?
 第3節 21世紀初頭の都道府県・大都市の「自宅死亡割合」の推移――今後の「自宅死亡割合」の変化を予想するための基礎作業
 第4節 「麻生発言」で再考――死亡前医療費は高額で医療費増加の要因か?

第4章 民主党野田内閣時代の医療・社会保障政策
 第1節 医療保険の維持期リハビリテーションは2年後に廃止されるか?
 第2節 「日本再生戦略」は「新成長戦略」とどう違うのか?
 第3節 民自公「社会保障制度改革推進法案」をどう読むか?――「社会保障・税一体改革大綱」との異同を中心に
  第4節 「自助・共助・公助」という表現の出自と意味の変遷
 第5節 『平成24年版厚生労働白書』を複眼的に読む

第5章 日本の医療と医療政策の誤解を解く
  第1節 病院勤務医の開業志向は本当に生じたのか?――全国・都道府県データによる検証
 第2節 日本の「薬剤費比率」は今後も上昇し続けるか?
 第3節 医薬品の経済評価で留意すべき点は何か?
 第4節 医療の電子化で年3兆円の医療費が削減可能?――「日経」・総務省推計の検証
 第5節 日本の医療費水準はOECD平均になったのか?
 第6節 私はなぜ「医療は永遠の安定成長産業」と考えているのか?
 第7節 地方の中堅私大経営から見ると医療経営はうらやましい!

初出一覧
あとがき
事項索引
人名索引


著者紹介

二木立[ニキリュウ]
1947年生。1972年東京医科歯科大学医学部卒業。代々木病院リハビリテーション科科長・病棟医療部長、日本福祉大学教授・副学長等を経て現在、日本福祉大学学長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

最新の画像もっと見る