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『日本歯技』2016年3月号巻頭言
「集中復興期間」から「復興・創生期間」へ
東日本大震災の被災地は、地震と津波そして東京電力福島第一原発事故被害発生から丸5年となる節目を迎えた。政府は、26兆円の復興予算を計上した5年間の「集中復興期間」がこの3月で終わり、その後は「復興・創生期間」として5年間の新たな段階に入るとしている。全額国費を投入した復興事業費は、新年度から一部を被災自治体が負担する新段階を迎え、2016年度の岩手、宮城、福島3県の負担額は計約80億円になる見通しとのことだ。
政府は、復興・創生期間の5年間で、東京電力福島第一原発の事故対応以外の復興事業を完了させる方針を示している。復興庁によると、大震災と原発事故による避難者は2016年1月14日時点で約17万8千人という。
「3.11(サンテンイチイチ)」と称され、私たちの価値観を根本から問い、心と身の置き所を揺さぶった東日本大震災は、これからも様々な課題を私たちに問い続けるだろう。
2011年3月11日は、本会の歴史にとってもまた記憶される重要な日となった。あの時点で、未周知の部分を多く含んだ新公益法人制度改革への対応が問われた代議員会において、一部の議案の承認が得られない事態となった。
渦中にあって見えなかったものが、時間を経ることにより理解が促進され、必要な制度的要件が丁寧に共有され、順次進むべき方向への合意形成と整備がされ、今日に至った。
本会はこの5年間、組織の統一の確保と新たな組織意志形成のため、「タウンミーティング」「中長期総合計画」「総合政策審議会」等、会員そして外部有識者の英知を結集するための模索を行って来た。この模索は、出来合いの回答を求めるのではなく、私たちが自身の過去を顧み、歯科技工士と組織の未来を問い直すものだった。
昨年の日技創立60周年式典と各種表彰は、本会の歴史を踏まえた穏やかな和合を象徴するものとなった。一度は、新年度の予算案も事業計画を持たない事態を経験した組織が、私たちの「復興・創生期間」へと歩みだす。