新公益法人制度改革の負の側面をクローズアップ
投稿者 歯職人 投稿日 2015/1/2
新公益法人制度改革をめぐる動きを伝えた、2014年5月27日に放映のNHKクローズアップ現代「検証 公益法人改革」の書籍化です。
明治の民法制定以来続いた「公益法人制度」が、現実との齟齬が露わになり、2013年を目標に120年振りの改革が行われた。
この制度改革の改革の負の側面を、「一般法人」という規制も情報公開も無い制度の誕生と、制度改革の膨大な作業量に埋もれ追跡できず『自然消滅』していった旧公益法人に焦点を当てたて一冊です。
制度設計者の「民間による公益の増進」という高い理想の実現を目指す過程で、意図を持った者たちにより制度が悪用される事例が、ジャーナリストの手法によって事細かに描かれ、この世に存在する悪意に対し無力な制度の不備が露わになる。制度設計と実務運営を担った者たちの思慮不足と思われる様が痛々しい。
さりながら、法律を手段とし税金による運営の「官」ではなく、営利の分配を旨とする「民」でもなく、志と非営利により公益の増進を目指す「おおやけ」が必要とされる活動領域は、確実に存在する。官による天下りの隠れ蓑や裁量行政の手段となることの無い「おおやけ」の器の可能性にも、光を当てたいものだ。
本書の終盤に登場する公益法人協会等の国民と非営利公益セクターを担う者たちが、明治以降の100年を経て手にした「公益法人制度」を如何にして育て、官による介入ではなく、総体としての非営利公益セクターの自立性によって、様々な負の側面を克服していくプロセスもまた、民主主義の成熟に必要性な過程なのであろう。そのための必須条件は、個別の公益法人の情報公開であり、制度自体の情報公開と建設的に制度改良なのであろう、その一里塚としての一冊として読みたい。
新公益法人制度改革に何らかの形でかかわった方々に、広く一読を願いたい一冊です。
http://www.amazon.co.jp/%E5%85%AC%E7%9B%8A%E6%B3%95%E4%BA%BA-%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%AE%E6%B7%B1%E3%81%84%E9%97%87-NHK%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E5%8F%96%E6%9D%90%E7%8F%AD/dp/4800232406/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1420164738&sr=8-1&keywords=%E5%85%AC%E7%9B%8A%E6%B3%95%E4%BA%BA+%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%AE%E6%B7%B1%E3%81%84%E9%97%87
公益法人 改革の深い闇
NHKクローズアップ現代取材班【著】
価格 \1,404(本体\1,300)
宝島社(2014/11発売)
サイズ B6判/ページ数 239p/高さ 19cm
商品コード 9784800232403
NDC分類 335.8
内容説明
5兆円の公的資産が、国民の目の届かない所に!情報公開の後退で、逆に不透明になった補助金と天下りの実態。2万4000あった社団・財団法人、その改革の死角を洗う!全国から続々反響!「クローズアップ現代」の書籍化。
目次
第1章 「幽霊法人」を追え(「おかけになった電話番号は…」;事務所の住所はマンションの植え込み!? ほか)
第2章 闇に消えた国民の資産(ケース3 東京都市科学振興会―東京都と関係の深い財団でも;「常務の個人商店のようになってしまった…」 ほか)
第3章 公的資産「五兆円」が眠る“新”一般法人(役所と公益法人;公益認定審査の現場で ほか)
第4章 悪用される「一般社団法人」(一般社団法人を作れば相続税はゼロ?;相続そのものをなくす仕組み ほか)
第5章 公益法人を不正の巣にしないために(「公益法人協会」からの意見;協会は「一般法人の問題」をどう考える? ほか)