「敵」を味方にする言葉/思想の言葉, 2008/12/14
By 歯職人
東京大学学生時代の日本共産党組織での活動、保守政治家・衆議院議長である父の秘書としての経歴、西武百貨店グループ(セゾングループ)代表としての財界活動、それらと平行しての作家活動等々、複雑な軌跡を描く著者辻井氏の講演録である。
本書に収められている講演の対象が、九条の会、民主主義文学会、詩人会議、多喜二・百合子研究会と、余りに的が絞られた対象のため読者層も同様の傾向を持つと思われる。
辻井は、日本共産党の「50年分裂」と新日本文学会の路線対立劇に接するという経験を持ち、後の経営者・財界活動の中でも持ち続け育んだ対立の渦中を経験した後にたどり着いた「思想の言葉」・「『敵』を味方にする言葉」の考察である。
言葉の共有が失われ、価値が混乱し、敵を見失う今日に、思考の自由に重きを置き知性を守る手助けとなる一冊である。
ケンポウニイカスシソウノコトバ
憲法に生かす思想の言葉
辻井 喬【著】
新日本出版社 (2008/09/25 出版)
188p / 19cm / B6判
ISBN: 9784406051668
NDC分類: 914.6
価格: ¥1,575 (税込)
詳細
憲法九条の心と文化の力
『伝統の創造力』をめぐって
実作者のための文学論
戦後の百合子―回想をまじえて
短歌の伝統について
文学は何を語ればよいのか
九条を守る国民的共同を広げるため敵を味方にする言葉を共有しよう。九条の会や文学と伝統・思想に関する講演をまとめた憲法文化論。
著者紹介
辻井喬[ツジイタカシ]
1927年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。現在、セゾン文化財団理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
目次・構成など
〔目次〕
I
憲法九条の心と文化の力
II
『伝統の想像力』をめぐって
実作者のための文学論
戦後の百合子―回想をまじえて
短歌の伝統について
文学は何を語ればよいのか
あとがき
初出一覧
そういうことを考えていきますと、私たちは人間の美しい力を自分の手に持たなければならないとつくづく思います。どういうことかというと、一つは、敵を味方にする力。これは人間だけが持っている力です。どうしたらできるかというと、それは共通する言葉を見つけること。伝統でもいいし、美意識でもいいし、もちろん日常生活の感覚でもいい。そうして敵を味方にする言葉を見つけていくことです。
たとえば、「伝統なんて聞くだけで腹が立つ」と言う人がいますが、いま「戦後レジーム」を直そうと言う人々は、日本の伝統なんて全然理解していません。日本の伝統は非常に優れているものです。『万葉集』のころから『源氏物語』にしても、世阿弥にしても、近松、西鶴など文学上のみならず、その他の建築、美学の面でも非常に優れたものがあります。
ところが、いままでの権力を握っている人たちは、その中から自分たちの権力を掌握するのに都合のいい部分だけを取り出してきて、「これが伝統だ」と偽ってきた。その偽りに引っかかってはいけません。伝統のなかの民衆的なもの、平和的なものは、われわれは胸をはってどんどんと受け取っていく必要があるでしょう。(本文より)
By 歯職人
東京大学学生時代の日本共産党組織での活動、保守政治家・衆議院議長である父の秘書としての経歴、西武百貨店グループ(セゾングループ)代表としての財界活動、それらと平行しての作家活動等々、複雑な軌跡を描く著者辻井氏の講演録である。
本書に収められている講演の対象が、九条の会、民主主義文学会、詩人会議、多喜二・百合子研究会と、余りに的が絞られた対象のため読者層も同様の傾向を持つと思われる。
辻井は、日本共産党の「50年分裂」と新日本文学会の路線対立劇に接するという経験を持ち、後の経営者・財界活動の中でも持ち続け育んだ対立の渦中を経験した後にたどり着いた「思想の言葉」・「『敵』を味方にする言葉」の考察である。
言葉の共有が失われ、価値が混乱し、敵を見失う今日に、思考の自由に重きを置き知性を守る手助けとなる一冊である。
ケンポウニイカスシソウノコトバ
憲法に生かす思想の言葉
辻井 喬【著】
新日本出版社 (2008/09/25 出版)
188p / 19cm / B6判
ISBN: 9784406051668
NDC分類: 914.6
価格: ¥1,575 (税込)
詳細
憲法九条の心と文化の力
『伝統の創造力』をめぐって
実作者のための文学論
戦後の百合子―回想をまじえて
短歌の伝統について
文学は何を語ればよいのか
九条を守る国民的共同を広げるため敵を味方にする言葉を共有しよう。九条の会や文学と伝統・思想に関する講演をまとめた憲法文化論。
著者紹介
辻井喬[ツジイタカシ]
1927年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。現在、セゾン文化財団理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
目次・構成など
〔目次〕
I
憲法九条の心と文化の力
II
『伝統の想像力』をめぐって
実作者のための文学論
戦後の百合子―回想をまじえて
短歌の伝統について
文学は何を語ればよいのか
あとがき
初出一覧
そういうことを考えていきますと、私たちは人間の美しい力を自分の手に持たなければならないとつくづく思います。どういうことかというと、一つは、敵を味方にする力。これは人間だけが持っている力です。どうしたらできるかというと、それは共通する言葉を見つけること。伝統でもいいし、美意識でもいいし、もちろん日常生活の感覚でもいい。そうして敵を味方にする言葉を見つけていくことです。
たとえば、「伝統なんて聞くだけで腹が立つ」と言う人がいますが、いま「戦後レジーム」を直そうと言う人々は、日本の伝統なんて全然理解していません。日本の伝統は非常に優れているものです。『万葉集』のころから『源氏物語』にしても、世阿弥にしても、近松、西鶴など文学上のみならず、その他の建築、美学の面でも非常に優れたものがあります。
ところが、いままでの権力を握っている人たちは、その中から自分たちの権力を掌握するのに都合のいい部分だけを取り出してきて、「これが伝統だ」と偽ってきた。その偽りに引っかかってはいけません。伝統のなかの民衆的なもの、平和的なものは、われわれは胸をはってどんどんと受け取っていく必要があるでしょう。(本文より)