『日技会史 半世紀の貢献 そして 未来へ』
平成18年3月15日発行
発行 社団法人 日本歯科技工士会
書評 『日技会史 半世紀の貢献 そして 未来へ』
〔評者〕 日本歯科技工士会副会長 直塚正昭
本会創立60周年の記念すべき年に、日技会史をみなさまと共に今一度紐解いてみたい。
「半世紀の貢献 そして 未来へ」と副題を持つ日技50周年会史は、多く映像資料も収録し、本会の歩みを分かりやすく伝えるものと成っている。圧巻は、50周年記念式典に天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、更には「天皇陛下のおことば」を頂いたことにあろう。本会執行部が一丸と成り、両陛下の招聘に総力を注ぎ準備したであろうことが行間から伝わってくる。映像で綴る『歯科技工士誕生と歩み』は、両陛下の式典での御姿や「おことば」も収録され、後世に必ず伝えねばならないものと言える。
本書の内容をスケッチすれば、歯科技工士の法的位置付けの獲得を目指す黎明期から始まる。先達によって並々ならぬ壮絶な資格獲得運動があり、遂に1955年「歯科技工法」制定され歯科技工士の地位が確立された。先覚者の思いは日技会章に刻み込まれ反映されている。1960年代に入ると社会との係わりは増し、歯科技工士養背所の年限延長、教育制度改革に着手し、歯科技工士の養成所の入学資格が高卒以上と一部認められる。1970年代に入ると歯科技工助手養成所阻止の運動が全国に広がり、紆余曲折の末に解決にいたる。また組織内強化を図るため日技厚生会を発足させ、真に口腔歯科保健担う者として国民に信頼される歯科技工士として歯科技工士倫理綱領総則を制定した。1980年代に入ると歯科技工士法が一部改正され県知事免許から厚生大臣免許移行するための講習会を全国で実施、この講習会は現在行っている歯科技工士生涯研修制度として進化していく。1990年代は、歯科技工法から歯科技工士法への改正がなされた。
2000年代に入ると「歯科技工士の養成の在り方等に関する検討会」の意見書が発表され本年施行される歯科技工士統一試験についても検討課題として上程されている。また歯科技工士が抱える懸案事項解決に向け国政の場で意志を伝えるため参議院比例代表候補を組織内に擁立し国政選挙に挑戦した様子が、記録されている。都道府県技史部分と合わせ全国を網羅した会史と言える。
本書を再読し、先人たちの熱意や努力、決して挫けることの無い強固な意志のもと、歯科技工士制度が確立し、歯科技工士組織が構築され、今その成果の上に、歯科技工士が生かされていることを痛感する。本書の編集発行の任を担った編纂委員諸氏に対し、改めてその労苦に対し敬意を表したい。
10月17日(日)、本会は福岡市で60周年を祝する。それを前に、本書により歯科技工士組織の歩みを今一度、確かめていただければと願う次第です。