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歯科技工士・岩澤 毅

自己愛性パーソナリティー障害

2020年01月26日 | 森元主税


熊代亨 精神科医、ブロガー
「自己愛性パーソナリティ障害」という診断の意味を考える
https://www.huffingtonpost.jp/toru-kumashiro/narcissism-mind_b_14918972.html
自己愛性パーソナリティ障害は誇大性,賞賛への欲求,および共感の欠如の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は精神力動的精神療法による。

MSDマニュアル プロフェショナル版
自己愛性パーソナリティ障害(NPD)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/08-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E6%84%9B%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3%EF%BC%88npd%EF%BC%89

MSDマニュアル 家庭版
パーソナリティ障害
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/10-心の健康問題/パーソナリティ障害/パーソナリティ障害
執筆者:
John G. Gunderson , MD, Harvard Medical School;
Lois Choi-Kain , MD, Harvard Medical School
Last full review/revision /8 2012| 最後に変更された内容 11 2013

パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、一般社会で期待される規範と異なる思考、知覚、反応、対人関係のパターンが人生の早い段階から比較的安定してみられる人に対して用いられる用語です。そのようなパターンのために、大きな苦痛が生じたり、社会的な役割を果たす能力に支障をきたしたります。

• パーソナリティ障害にはいくつかの種類があり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。

• 症状はパーソナリティ障害の種類によって異なりますが、基本的には、他者と人間関係を築くことやストレスに対処することが困難で、本人の自己像と他者から見たその人の認識との間に隔たりがあります。

• パーソナリティ障害は、自己や他者を一貫して事実に基づかない形で認識する人や、よくない結果を招く行為を決まってとり続ける人において、その診断が検討されます。

• 薬剤による治療でパーソナリティ障害自体に変化がみられることは通常ありませんが、そうした治療が症状を軽減するのに役立つことはあります。

• 心理社会療法(特定の種類の精神療法を含みます)は、自分が問題を引き起こしていることに患者が気づき、社会的に好ましくない行動を改めるのに役立つことがあります。

他者やストレスになる出来事に対する見方や関わり方については、誰にでも特徴的なパターンがあります。例えば、困ったことが起きたとき、誰かに助けを求めることで対処しようとする人もいれば、自分だけで問題に対処しようとする人もいます。また問題を過小評価する人もいれば、大げさに考える人もいます。しかし、自分の特徴的な行動パターンがうまくいかない場合や不都合な結果を招いている場合には、精神的に健康な人であれば、別のアプローチを試みるものです。対照的に、パーソナリティ障害の人は、自分がとる反応のパターンが繰り返しうまくいかない場合や不都合な結果を招いている場合でも、そのパターンを変えようとしません。そのようなパターンは、状況に応じて調節(適応)されることがないため、不適応と呼ばれます。不適応な行動パターンの重症度と持続期間は様々です。パーソナリティ障害の人のほとんどでは、この障害が原因で生じる問題は中程度のものですが、一部の人は重度の社会的・精神的な問題を生涯抱え続けます。

約13%の人が何らかのパーソナリティ障害に該当します。全体として男女差はありませんが、障害の種類によっては、男女いずれかに多くみられるものもあります。パーソナリティ障害は遺伝子と環境の相互作用によって起こります。すなわち、一部の人はパーソナリティ障害になりやすい遺伝的な傾向を生まれつきもっていて、その傾向が環境的な要因によって抑えられたり、強められたりするということです。一般に、遺伝子と環境はパーソナリティ障害の発症にほぼ同じくらい寄与しています。

パーソナリティ障害の人の大半は、自分の人生に悩んでいて、職場や社会的状況での人間関係に問題を抱えています。気分障害、不安症、身体化( 身体症状症)、物質乱用、または摂食障害を同時に抱えている人も多くいます。パーソナリティ障害に加えて、これらの病気を抱えていると、その病気に対する治療が効きにくくなるため、経過の見込み(予後)が悪くなります。

パーソナリティ障害では、主に以下の点で問題が生じます。

• 自己同一性と自己感覚:パーソナリティ障害の人は、自分自身のイメージがはっきりせず、安定していません。つまり、自分のことをどのように捉えるかが、周囲の状況や一緒にいる人によって変化します。例えば、自分のことを残酷だと考える時期と親切だと考える時期が交互に入れ替わる人がいます。また、自分の価値観や目標が頻繁に変わる人もあります。例えば、教会にいる間は信心深いのに、別の場所では不敬で冒とく的になることがあります。自尊心の高さが現実と一致しない人もいます。

• 人間関係:パーソナリティ障害の人は通常、他者と親密で安定した人間関係を築くことができません。他者の気持ちに対して鈍感であったり、感情的に無関心であったり、共感性を欠いていたりすることがあります。家族などの他者は、しばしば患者のことを困った人、いらつかせる人だとみなします。

パーソナリティ障害の人は通常、自分で問題を引き起こしていることに気づいていないため、誰の助けも求めようとしない傾向があります。代わりに、他者に迷惑をかけているなどの理由で、友人や家族あるいは社会的機関によって医療機関に連れて来られることがあります。本人が自ら助けを求める場合も、パーソナリティ障害によって生じた問題(離婚、失業、孤独など)や悩ましい症状(不安、抑うつ、物質乱用など)がその理由であるのが通常で、そうした問題や症状は他者の行為や自分ではコントロールできない状況が原因だと考える傾向があります。

知っていますか?

パーソナリティ障害の人は、自分の思考や行動に問題があることを認識していないことが多くあります。

パーソナリティ障害がもたらす結果

パーソナリティ障害の人では、以下のリスクが高まります。

• 身体的な病気につながる行動(物質乱用、無謀な性行動、睡眠不足など)、自己破壊的な行動、あるいは社会の価値観と衝突する行動をとる

• 子育てにおける一貫性のなさ、無関心、過度の感情、虐待、無責任などのため、子どもに身体的・精神的な問題が生じるリスクが高まる

• ストレスに対する対処が不適切で問題を招く

• 不安症、うつ病、心気症(重篤な病気にかかっているのではないかと恐れる精神障害)など、他の精神障害を併発している

• 処方された薬を指示通りに服用しない

• 医療従事者(特にパーソナリティ障害に気づいていない医療従事者)との関係がうまくいかない—例えば、パーソナリティ障害の人は自分の行動に対する責任を否定する、過度に疑い深い、要求が多い、支援や愛情を受けて当然と思っているといった傾向があるため

分類

パーソナリティ障害は、かつては10種類に分類され、3つのグループに大別されていました。各グループに含まれるものは、それぞれ特定の基本的なパーソナリティ特性が共通していました。現在検討が進められている新しい分類では、このグループの概念がなくなり、統合失調型、境界性、反社会性、自己愛性、回避性、強迫性という6種類だけになっています。なくなるのはシゾイド、妄想性、演技性、依存性という種類です。

統合失調型パーソナリティ障害

統合失調型パーソナリティ障害の人は、社会的に引きこもり、精神的に孤立します。さらに、奇妙な思考、認識、会話がみられ、これらの点で統合失調症の人に似ています( 統合失調症)。ときに、統合失調型パーソナリティ障害と診断された人が後に統合失調症を発症する場合がありますが、このパーソナリティ障害の人のほとんどは統合失調症を発症しません。統合失調型パーソナリティ障害では、統合失調症の原因になる遺伝子が関与しているものの、その発現が不完全であると考えられています。

奇妙な思考としては、魔術的思考や妄想様観念などがみられます。魔術的思考では、自分の思考や行動によって物や人をコントロールできると考えます。例えば、誰かに対して怒りの感情を抱くと、その人に災いを起こすことができると信じている場合があります。妄想様観念をもつ人は、猜疑心や不信感を抱く傾向があり、実際にはそうではないのに、他者が敵対的な意図をもっていたり、自分に害を及ぼそうとしていると考えます。

境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害は約2~5%の人にみられます。発生頻度に男女差はありませんが、治療を受けるのは女性の方がはるかに多い傾向があります。この障害のある人では、対人関係、自己像、気分、行動に劇的な変化がみられます。境界性パーソナリティ障害は通常、青年期または成人期初期に明らかになりますが、年齢が上がるにつれて、あまりみられなくなります。2年以内に50%の患者で、10年以内に約85%で消失します。いったん消失すれば再発しないのが通常です。しかし、症状は通常かなり劇的に軽減するものの、対人関係や社会的な役割の面はそれほど改善されません。例えば、10年後の時点で安定した対人関係を維持しているか、フルタイムの仕事についている人の割合は約20%にすぎません。

境界性パーソナリティ障害の人は、しばしば小児期にネグレクトや虐待を受けていたことを報告します。その結果として、虚無感や怒りを覚えるようになり、子どもの頃に受けられなかった愛情を埋め合わせるため、人間関係の中で他者に気にかけてもらおうとします。このため、他者が自分に気をかけていないように思えることを行ったり言ったりすると、強烈に反応することがあります。気にかけてくれる人に批判された、または拒否されたと感じると、その人に対する見方が理想化されたものから怒りに満ちた批判へと急激に変化し、その人をけなすようになることがあります。不適切な強い怒りを表すこともあります。ときに、その怒りが自分自身に向かい、例えば自分の体を切りつけたり、わざとやけどを負うなど、自傷行為を行うことがあります。

誰も自分のことを気にかけてくれないと考えると(すなわち、見捨てられた、孤独だと感じるとき)、短期的に妄想や解離の症状が現れることがあります( 解離症)。解離が起きると、現実感が感じられなくなったり(現実感消失と呼ばれます)、まるで自分が体の外側にいるかのように、自分の体や思考から切り離された間隔がします(離人感と呼ばれます)。また、やみくもに衝動的になり、見境のない無謀な性行動、物質乱用、自殺企図などを起こす可能性があります。境界性パーソナリティ障害の人のおよそ10%が自殺により死亡します。

境界性パーソナリティ障害は、精神科の医療従事者が治療を行うパーソナリティ障害の中で群を抜いて多くみられます。また、この精神障害がある人は頻繁に医療機関を受診するため、プライマリケア医の受診全体の約6%がこの障害をもつ人々によるものです。最初は、医療従事者(また患者の世話をする他者)もケアと支援を提供することに熱心に取り組みますが、何度も何回も危機的な言動を繰り返し、根拠のないことを訴えたり、治療に関する指示に従わなかったりするため、医療従事者が苛立ちを覚えて、患者に対して否定的に、あるいは敵意をもって応対するようになる場合もあります。

反社会性パーソナリティ障害

このタイプは女性より男性に6倍多く生じます。この障害のある人は、他者の権利や感情を無神経に軽視するのが一般的です。その不誠実さや狡猾さゆえに、通常は人間関係に支障をきたします。

この障害のある人は、物質的な利益や個人的な満足感を得るために他者を利用する傾向があります。多くの患者はすぐに苛立ち、こらえ性がありません。そのため、衝動的で無責任な行動をとり、ときには犯罪を侵すこともあります。そのようなケースでは、自分の行動がもたらす好ましくない結果や他者に対する迷惑や危害についてまったく考えずに行動し、後になって後悔や罪の意識を感じることもありません。しばしば、自分の行動を正当化したり、他者のせいにしたりします。罰を受けるなど、好ましくない結果を招いても、行動を改めることや、判断力や慎重さが身につくことはほとんどありません。むしろ、好ましくない結果によって、他者の感情を顧みない世界観が確立されてしまう傾向があります。

この障害のある人は、アルコール依存症、薬物依存、および無謀な性行動を起こしやすい傾向があり、配偶者またはパートナーとして、親として、また労働者としての責任を果たさない場合があります。また、一般の人と比べて余命が短い傾向があります。この障害は年齢とともに弱まっていく傾向があります。

自己愛性パーソナリティ障害

このタイプは、自分の価値についての過大評価(誇大性と呼ばれます)を特徴とします。この障害のある人は、特別な扱いを受けることを期待し、自分は優れているのだから当然と考えて他者を利用することもあります。その人間関係は賞賛を求めることを特徴とし、他者が自分に嫉妬している、自分をねたんでいるなどと考える傾向があります。他者の反応に敏感ですが、それは、その反応が自分と関係がある場合に限ってのことです。また、失敗、敗北、批判などの他者からの否定的反応には極端に敏感です。他者からのこのような反応がきっかけとなって、突然、怒りや抑うつ(自殺念慮や自殺行動を含む)が生じることがあります。

回避性パーソナリティ障害

このタイプは、重度の自意識過剰、不安、および臆病さを特徴とします。回避性パーソナリティ障害の人は、拒絶、失敗、葛藤などを経験する可能性があると思う相手や状況から遠ざかります。失望したり、恥ずかしい思いをしたり、失敗したりする可能性があることから、人間関係の構築など新しいことを始めることを恐れ、回避しようとします。愛されたい、受け入れられたいという強い自覚的な欲求があるため、孤独感や人とうまく関われないことについてあからさまに悩みます。

回避性パーソナリティ障害は、全般性社交恐怖症(多くの社会的状況での持続的な不安を特徴とする精神障害— 社交恐怖症)と密接に関係しています。

強迫性パーソナリティ障害

このタイプの人は、誠実さ、秩序、完璧主義、統制に対する欲求にとらわれていて、柔軟性を欠き、一般的には変化に抵抗します。責任を真剣に引き受けますが、ミスを受け入れられなかったり、細部にとらわれて目的を忘れたりします。その結果、しばしば意思決定で問題を抱えたり、仕事をやり遂げるのに支障をきたしたりします。物事を自分のコントロール下に置くことを好むものの、責任を負うことは不安の種になり、また達成しても満足感を得ることが難しくなります。これらの特徴が顕著にならない限り、この障害の人は、特に組織化、細部への注意、時間の厳守、根気などを要する分野で、しばしば大きな業績を残します。

この障害のある人は、感情を伴う状況、人間関係で葛藤が生じる状況、コントロールできない状況を居心地悪く感じる傾向があります。

強迫性パーソナリティ障害では、強迫症( 強迫症 (OCD))とは異なり、過度の手洗いや何度も施錠を確かめるなど、望まない反復的な強迫観念や儀式(目的のある反復的かつ意図的な行動)はみられません。

診断

パーソナリティ障害の人は通常、自分の行動に問題があると考えません。患者が助けを求める場合、その理由はパーソナリティ障害自体ではなく、不安、抑うつ、物質乱用などの症状や、離婚、失業、孤独などパーソナリティ障害が原因で生じた問題について助けを得ることであるのが通常です。このような症状や問題を訴える場合、医師は通常、パーソナリティ障害が関係している可能性があるかどうかを判断するために問診を行います。例えば、自分と他者をどのように捉えているか、また他者が自分の行動に対し否定的に反応した場合にどのように対応するかを尋ねます。以下の場合、医師はパーソナリティ障害を疑います。

• 自分や他者のことを、一貫して事実に基づかない形で持続的に捉えている。

• 自分の思考や行動について適切でない特定のパターンがあることを自ら説明し、そのような行動が望ましくない結果を招いているにもかかわらず、それを変えることを拒否する

診断を確定するための参考として、医師は通常、患者の友人や家族から話を聞くように努めます。そのような協力が得られないと、生じている問題の原因が患者本人にもあることに医師も患者も気づかないままになる場合があります。

特定のパーソナリティ障害の診断は、精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)に障害別に記載されたパーソナリティ特性の一覧(診断基準)に基づいて下されます。

治療

治療は心理社会療法により行われ、具体的には個人精神療法、集団療法、家族療法などがあります。薬剤による治療でパーソナリティ特性が変化することはありませんが、苦痛を伴う症状を軽減するのに役立つことがあります。

パーソナリティ障害は特に治療が困難になることがあるため、精神療法家の中でも経験豊富で熱意に富み、患者の自己像、心の繊細な部分、普段の対処方法を理解できる専門家を選ぶことが重要になります。しかし、親切さと思慮深い助言は重要ではあるものの、それ自体がパーソナリティ障害に変化をもたらすわけではありません。

一般原則

具体的な治療法はパーソナリティ障害の種類(病型)によって異なりますが、一般に以下のことが治療の目標になります。

• 苦痛を緩和する

• 起きている問題の原因が(他者や状況ではなく)自分にあることを患者が理解できるよう支援する

• 社会的に好ましくない不適応な行動を減らす

• 困難の原因になっているパーソナリティ特性を是正する

治療の最初の目標は、不安や抑うつなどの目下のストレスを軽減することです。ストレスを減らすことでパーソナリティ障害の治療がやりやすくなります。精神療法家はまず、ストレスを引き起こしている原因を患者が認識できるように支援します。次に、そのストレスを軽減する方法を検討します。心理社会療法は通常、患者が強いストレスのある状況や人間関係を抜け出すのを手助けすることができます。不安や抑うつに対する薬剤の使用も、このような症状の軽減に役立ちます。薬剤を使用する場合は、少量で短期間だけ使用します。

パーソナリティ障害の人は、たいてい自分の行動に問題があるとは思っていないため、医師は、問題の原因が自分にあること、自分の行動が不適切なものであり、有害な結果を引き起こしていることを患者が理解するよう支援します。医師は患者との間に協力的で互いを尊重し合う関係を築くことにより、患者が自らについてより深く知り、社会的に望ましくない不適切な行動に気づくよう支援することができます。この関係を通じて、患者は自分の行動や自分と他者に対する見方を変えるには時間と努力が必要であることも理解することができます。この理解が得られるまでに長い時間を要する場合もあります。

すでに起きている仕事や人間関係に関する被害を抑えるため、望ましくない不適応な行動(無謀な行動、社会的孤立、自己主張の欠如、かんしゃくなど)には迅速に対処する必要があります。ときに、医師が受診中の患者の行動に制限を課さなければならないこともあります。例えば、患者に怒りで声を荒げてはいけないと指示することがあります。無謀な行動をとる、自らを社会的に孤立させる、感情を爆発させる、非常に臆病であるなど、極端な行動がみられる場合は、デイホスピタルや居住型施設での治療が必要になる場合もあります。

境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害の患者では、行動を変えることが最も重要となります。集団療法と行動変容法により、一般的には数カ月以内に改善がみられます。自助グループや家族療法も、不適切な行動を変えるのに役立ちます。家族の行動は、患者の不適切な行動や思考を強める可能性もあれば、軽減する可能性もあるため、家族の関与は治療に役立ち、しばしば不可欠となります。

個人精神療法は、問題のあるパーソナリティ特性の是正を目標とする治療の要であり、自己愛性、回避性、強迫性のパーソナリティ障害の人に最も有効です。精神療法は、自分のパーソナリティ障害が現在の問題にどのように関わっているかを患者が理解するのに役立ちます。また、人と関わって対処するための新しい適切な方法を患者が学ぶのにも役立ちます。通常、変化は徐々に生じます。行動の変化は1年以内にみられますが、パーソナリティ特性(依存、不信、傲慢、人を操作する傾向など)の変化には、より長い時間がかかります。

特定のパーソナリティ障害の治療

パーソナリティ障害の治療法は、その病型によって異なります。

統合失調型パーソナリティ障害は、抗精神病薬(統合失調症の治療に使用される薬剤— 抗精神病薬)と個人療法で治療されます。精神療法(現実検討を用いる)は、患者が外界を自分の考えや感情とは別のものとして捉え、様々な状況でより適切に振る舞う方法を学ぶのに役立ちます。このような精神療法の効果はそれほど高くありません。

境界性パーソナリティ障害は、個人療法、集団療法、家族療法、薬物療法などで治療されます。このような治療法は自殺傾向、入院の必要性、救急外来の受診を減らすのに役立ちます。また、抑うつの軽減にも役立ちます。治療法の1つに弁証法的行動療法があります。この治療法では、個人とグループの治療セッションを毎週行い、精神療法家が1日24時間体制で電話で対応します。電話がかかってきたら、電話をかけてきた患者が自己破壊的な行動をとる衝動に抗うように支援します。この治療法の狙いは、患者がストレスに対するより適切な対処法を見つけ出すのを支援することにあります。別の有効な治療法として、全般的な精神医学的管理があります。これは個人療法を週1回行うほか、ときに薬物療法を行います。気分を安定させるのに役立つ薬剤、特にトピラマートとラモトリギン(どちらも抗けいれん薬)が役立つ場合があり、怒りや気分変動の対処に特に有用です。

反社会性パーソナリティ障害は、治療が最も難しい病型で、現時点で有効な治療法はありません。この障害のある人は、自身の怠慢や違法行為による不都合な結果を避けたり、社会的な責任を回避したりする手段として、治療に参加する傾向があります。このため治療では、説明責任を果たすよう促すことに焦点が置かれます。

自己愛性パーソナリティ障害では、ときに精神力動的な個人精神療法が役立つことがあります。この治療法は、その時点での思考、感情、行動における無意識のパターンを特定することに重点を置くものです( 精神療法(心理療法))。しかし、治療を有効なものとするためには、精神療法家が共感に重点を置き、患者が特権意識や過大な自尊心を表してもそれを否定しない態度が必要になります。

回避性パーソナリティ障害には、しばしば個人療法(通常は認知行動療法— 精神療法(心理療法))と集団療法が有効です。しかし、この障害のある人は、普段自分が避けているものに自分をさらすことに強く抵抗します。その人にとっては、それらの対象を避けることで葛藤、失敗、拒否を経験せずに済んでいるためです。

強迫性パーソナリティ障害は、患者が不確実な状況に耐え、世界を受け入れるのを支援することに重点を置いた精神力動的な個人精神療法が有効です。通常、変化は徐々に生じます。


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