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歯科技工士・岩澤 毅

日本の医療―統制とバランス感覚 (新書) 池上 直己 (著), J.C. キャンベル (著),

2007年01月02日 | amazon.co.jp・リストマニア
日本の医療―統制とバランス感覚 (新書)
池上 直己 (著), J.C. キャンベル (著), John Creighton Campbell (原著)
新書: 240ページ
出版社: 中央公論社 (1996/08)
ASIN: 412101314X

医療の制度と経済を考える上で、基本となる高水準の新書, 2007/1/2
レビュアー: 歯職人

 本書の特筆すべき点は、本書が今なお全国民向けの医療保険制度を持ち得ないアメリカ国民に向けにアメリカの医療制度とは異なる経過を辿り、日本の風土の中で構築された日本の医療保険制度を、アメリカ人の政治学者であり日本を対象に研究生活を行ってきたキャンベルと、日本人であり日本の医師資格を持ち医療政策、医療経済を研究してきた池上の共同の研究成果の日本語版である点にある。
 前述の基本的な性格を持つ本書は、日本人同士であれば既知として省略されるであろう部分、政策形成過程における日本的決着の曖昧さを含む部分等に対しても論理的な論述の努力がされている。
 手際良く明治期の医療政策形成当初における江戸時代に遡る医療資源の配置をも振り返り、戦後長く医療政策に影響力を及ぼした日本医師会武見太郎と厚生省他の当事者の動きとその結果、出色の厚生省官僚吉村等にも光を当てる。
 著者らは、日本の医療政策の特徴を「バランス感覚」と特徴付ける。そしてあえて声高には明言していないが、「負担は少なく、最高の医療を」なるのスローガンの不実を、軽くイナス。
 1996年の著作であるが、今日も読み継がれ、基本書として引用・紹介されるに価値を持つ。

目次

第1章 医療政策はどう決まるか
第2章 医療機関と医療従事者
第3章 医療保険制度
第4章 医療費抑制の仕組み―マクロの視点から
第5章 医療費抑制の仕組み―ミクロの視点から
第6章 医療の質
第7章 転換期の医療費政策

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