自衛隊員が背負わされた時代の刻印を解き明かす, 2017/4/30
投稿者 歯職人
著者の瀧野隆浩氏は、防衛大学を卒業後、毎日新聞社に入社し新聞記者生活を過ごされているレビュアーと同世代の方。自衛隊を退職後、軍事評論家等を名乗る方とは別種の文系の匂いのする方。
著者の視点は、自衛隊(創設当時は警察予備隊)誕生時の政治状況から背負わされた「精神」を解明し、時代の変遷とともに政治の側、国民の側の要求によって姿と精神を、時代に適合させようとする自衛官の姿を追っている。著者は、特に二つの死との向き合い方、隊員からの死者、生身の人間を標的し命を奪う軍事的には余りに当然の二つの死を見つめ続けている様です。
本書で取り上げられている、アメリカ軍の艦船を自衛隊が守る新たな任務が、2017年5月1日、よいよ実施される。安全保障関連法の国会審議時は、マスコミでも国会内外でも大きく取り上げられた問題であったが、2016年3月の施行時、そして今回の実施時と何事も無かった様な船出です。
「二つの死との向き合い方」は、自衛隊以外の世界では、実際に起こらなければ、考えたくない問題、出来ることならば考えることを避けて行きたい問題であることは、変わっていないように見受けられる。
本書の問題提起が、近々実際の出来事となっても、驚いた振りをしないようにしたい。
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内容説明
吉田茂の遺訓、三島由紀夫の自決、地下鉄サリン事件、東日本大震災、集団的自衛権の行使容認―。激変する時代環境のなかで変貌を遂げてきた自衛隊。この「沈黙の組織」はどこへ向かおうとしているのか?現場の指揮官から元防衛庁長官までを丹念に取材し、組織のメンタリティーと行動原理を浮かび上がらせる。戦後日本の精神風土と自衛隊との関係を問うノンフィクション!
目次
第1章 地下鉄サリン事件と陸幕長
第2章 別命あるまで開封を禁ず
第3章 防衛庁長官の決断
第4章 三島由紀夫と「青年将校」
第5章 消えた「治安行動教範」
第6章 警察と自衛隊
第7章 吉田茂の遺訓
第8章 自衛隊の60年
第9章 集団的自衛権と日本人
著者紹介
瀧野隆浩[タキノタカヒロ]
1960年、長崎県佐世保市生まれ。毎日新聞社会部編集委員。防衛大学校卒業後、毎日新聞社に入社、社会部記者として宮崎勤事件等を担当した後、「サンデー毎日」編集次長、本紙夕刊編集次長、前橋支局長などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
現場指揮官から元防衛庁長官までを取材し、自衛隊という「沈黙の組織」のメンタリティーと行動原理を鮮やかに浮かび上がらせる!