歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤 毅 2E-1300 統計調査に表れた歯科技工士

2011年10月02日 | 日本歯科技工学会雑誌
日本歯科技工学会第33回学術大会

1.会 期 平成22年 10月1日(土)10:00 ~ 17:00 10月2日(日 9:00 ~ 16:00
   
2.会 場 タワーホール船堀 (江戸川区総合区民ホール)

2E-1300 統計調査に表れた歯科技工士

岩澤 毅 秋田県歯科技工士会

A. 目的
 歯科技工士を,医療政策の中で位置付け,利活用政策を考察するためには,歯科技工士の実態をより正確に表す統計資料に基づく政策議論・形成が求められる.国会における歯科技工士に関する議論には,歯科技工士の生活実感とは乖離したと思われる議論がある.本発表では,この乖離の要因を明らかにし,今後基礎資料として必要と思われる統計の方向性を明らかにする.
 演者は,『ごまめ』37号(2007)において民主党桜井充参議院議員質問主意書(第165回国会提出番号第7号)に対して評価を行った.
 本発表では,この質問主意書及び内閣答弁書で捉えられている歯科技工士像=“なお、歯科技工士が『長時間・低賃金労働を強いられている』という実態については、承知していない”との答弁と実態との整合性を検証し,賃金構造基本調査に表れた歯科技工を検討し,歯科技工士の現実の所得実態を解明する上での資料性とその限界について検討する.
B. 研究方法
賃金構造基本調査(平成21年,平成17年,厚生労働省)の調査対象と方法を明らかにし,1.櫻井充:第164回国会(常会)質問第80号並びに答弁書第80号内閣参質164第80号,さらに2.櫻井充:第165回国会(臨時会)質問第7号並びに答弁書第7号 内閣参質165第7号の論理構造を明らかにし,3.日本歯科技工士会会員実態調査2009 (厚生労働省データの就業歯科技工士数に倣い,あらかじめ年代毎に分布率を区分し,対象群からコンピュータ乱数を用いて無作為に抽出(層化抽出比例分布法),標本数2992回収数(率)1266(回収率42.3%)内勤務者746(回収率43.1%)自営者518(回収率41.1%)合計1264) を精査し,各資料の比較検討を行う.更に,4. 大久保勉:第166回 質問第 38号の基本的な知識不足等からの限界を明らかにする.
C.結果および考察
賃金構造基本調査の調査対象事業所は,5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(5~9人の事業所については企業規模が5~9人の事業所に限る)及び10人以上の常用労働者を雇用する公営事業所から都道府県,産業及び事業規模別に一定の方法で抽出した事業所を対象としている.
日本歯科技工士会会員実態調査によれば,歯科技工士の勤務先の規模は小規模事業所が多く,10人以下の事業所が全体の63.8%を占める.就業者規模は7割近くの事業所が2人以下の小規模事業所である.
賃金構造基本調査に表れた歯科技工士は,就業する歯科技工士の総体の実態から乖離した規模の事業所に勤務する雇用された歯科技工士のものであった.多数の歯科技工士は,この統計には含まれない.
 現行の賃金構造基本調査は,就業歯科技工士の所得実態を把握することは出来ない.
 現在入手可能な歯科技工士総体の所得に近似するデータは,日本歯科技工士会による会員実態調査によるデータが信頼性高いものと思われる.
 税務当局等による”職業/歯科技工士“の所得実態に関するデータ開示が期待される.
D.結論
 賃金構造基本調査に表れた歯科技工士は,就業する歯科技工士の総体の実態から乖離し,多数の歯科技工士はこの統計には含まれないことが明らかになった.

文献
1)第164回国会質問参第80号
2)答弁書第80号内閣参質164第80号
3)第165回国会質問参第7号
4)答弁書第7号内閣参質165第7号
5)岩澤毅:櫻井充質問主意書(第165回国会提出番号7)の研究,ごまめ,37 2007
6)第166回国会質問参第 38号
7)答弁書第38号内閣参質166第38号 
8)日本歯科技工士会会員実態調査2009


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