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歯科技工士・岩澤 毅

阪田 雅裕 (編集)  政府の憲法解釈 [単行本]

2014年08月14日 | amazon.co.jp・リストマニア
政治家の言葉が限りなく軽くなる以前に、確かにそこにあった内閣と内閣法制局の憲法解釈のロジック

By 歯職人 on 2014/8/14

 小泉前総理の「人生いろいろ」発言があった頃からか、はたまた「マドンナブーム」やそれに遅れた「○○チルドレン」や「△△ガールズ」と言う言葉が登場した頃からか、政治家の言葉が限りなく軽くなった気がする。その軽さは、憲法論議にも及んだようだ。
 本書は、日本国憲法制定後の国際社会に復帰し、経済的に「大国」となる歩みの中で、殊に9条との関係で新旧の日米安保条約や警察予備隊の発足、自衛隊創設、PKO法、周辺事態法等々を、9条との関係で整合性を持たせるために内閣法制局が「緻密化」させた憲法解釈のロジックをまとめた一冊である。当然ながら、現行の安保法制に対しては、合憲論を絞り出すためのロジックである。
 書評等での取り上げられ方からも「第1章 戦争の放棄」が、本書の主なものとして考えても、かまわないのかもしれない。
 国会における議論を追っていくと、内閣法制局の「カウンターパートナー」としての過去の野党の安保男や与党の戦争経験者や軍隊経験者の存在が消え去ることで、内閣法制局が孤立化する逆説が進行したようだ。これは、理念先行型の議論から、現実の国際政治に対し整合性と過去の議論とのギリギリの整合性を求める道でもあったようである。
 本書の出版に際し、好意的な紹介者たちに、自衛隊違憲論者等が含まれる不思議さはこの際は置くとして、本書は政府の憲法解釈を作り続け、支え続けたた法制職人たちのロジックの軌跡であり、表層的「護憲派」や「9条死守派」の方々には、違和感のある一冊になっていることと思う。
 評者は、「附 内閣法制局」が、本書の白眉と考える。
 両翼からのイデオロギー先行のロジックに欠けた攻撃に曝されながら、憲法の文言を現代と繋いだ法制職人の記録でもある。
 内閣法制局長経験者である著者の阪田雅裕氏が、深く思う所があり本書を執筆するに至る時代の流れの中に、今私たちはいる。
 本書は、読み込むには、やや根気がいる一冊です。
 
http://www.amazon.co.jp/%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AE%E6%86%B2%E6%B3%95%E8%A7%A3%E9%87%88-%E9%98%AA%E7%94%B0-%E9%9B%85%E8%A3%95/dp/4641131481/ref=cm_cr-mr-title



政府の憲法解釈

阪田 雅裕【編著】

価格 \3,564(本体\3,300)
有斐閣(2013/10発売)

内容説明

本書の主な内容である憲法第9条の解釈問題は、現実的には政府の解釈が最終的なものとなっている。憲法第9条の文言の現実の姿は、本書に紹介された政府の解釈によって描かれる。その絵姿について、概念論議であるとか神学論争といった批判が加えられることがある。そのようなレッテルやラベルをはがしてこそ、真実の姿が見えてくる。本書はそのための格好の材料を考える読者に提供する。

目次

序 政府の憲法解釈の意義
第1章 戦争の放棄
第2章 統治機構
第3章 基本的人権
第4章 憲法改正・その他
附 内閣法制局

著者紹介

阪田雅裕[サカタマサヒロ]
1966年東京大学法学部卒業。同年大蔵省(現財務省)入省。1992年内閣法制局総務主幹・第一部参事官。2004年内閣法制局長官。2006年同退官。現在、弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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