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歯科技工士・岩澤 毅

医療保険・診療報酬制度 講座 医療経済・政策学 第2巻

2007年03月09日 | amazon.co.jp・リストマニア
医療保険制度を理解し、次の時代を考えるために, 2007/3/9

レビュアー: 歯職人

 日本の医療を考える場合、国民皆保険制度が前提とされ、患者の窓口負担の額や保険加入者の保険料の増減が中心になり、その制度の在り方が問われることが少なかった。
本書は、従来の不毛の議論から脱し冷静な制度理解と制度設計に向かうための基礎と構成となっている。
 第1章 わが国の医療保険制度の歴史と展開(島崎謙治)は、わが国の医療保険の成立史を振り返り、職場単位の保険と地域単位の保険に編成される経過を示し、現時点で医療保険の何が問われているのか?制度に潜む「無理」の所在をあぶりだし、本書の中心命題に対する基礎知識を提供している。
 第2章 診療報酬制度の理論と実際(遠藤久夫)は、公定価格の設定の現行ルール特に政策誘導・インセンティブの働きとそれに対する各関係者の「適正化」の試み精解している。
 第3章 わが国の診療報酬政策の展開と今日的課題(高木安雄)は、特に小泉政権の医療改革と一括りに名付けられてしまった最近の制度改革の動きの背景等を解明している。
 第6章 薬価の現状と課題(白神誠)は、マスコミ上でも度々取り上げられた薬価の仕組みを解説している。
 第7章 レセプト情報を用いた医療費分析の可能性と限界(岡本悦司)は、医療費分析の基礎資料となるべきレセプト情報が、実は使用に不向きな制度になっている状況が明らかにされる。
 第8章 保険者機能強化論の経済・政策学(尾形裕也)は、「保険者機能」強化論と呼ばれる、保険者への「当事者」性の強化論が起こる背景の理解とその無理性が浮かび上がる。
 第9章 医療保険の給付範囲をめぐる論点(池上直己)は、限られた財源の中保険が果たすべき役割の論理整理が行われ、混合診療の論点が示される。
 今後も医療保険の制度改革は続くものと思われる。地方が主体となる改革も既に始動している。 有限の医療資源を「保険」制度を用いて配分する仕組みを持つわが国で、冷静な議論に資する一冊と思います。

医療保険・診療報酬制度 講座 医療経済・政策学 第2巻 (単行本)
遠藤 久夫 (編集), 池上 直己 (編集)
単行本: 272ページ
出版社: 勁草書房 (2005/03)
ISBN-13: 978-4326748327
ASIN: 432674832X

目次

第1章 わが国の医療保険制度の歴史と展開
第2章 診療報酬制度の理論と実際
第3章 わが国の診療報酬政策の展開と今日的課題
第4章 DRG(DPC)方式の機能性とPPSの経済的特徴
第5章 急性期以外の入院医療のための新たな支払方式
第6章 薬価の現状と課題
第7章 レセプト情報を用いた医療費分析の可能性と限界
第8章 保険者機能強化論の経済・政策学
第9章 医療保険の給付範囲をめぐる論点


http://www.populus.est.co.jp/asp/booksearch/detail.asp?m_code=13317&s_key=1158019&scode=1836

医療保険・診療報酬制度

池上 直己 (慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授) ・遠藤 久夫 (学習院大学経済学部教授、京都大学大学院医学研究科非常勤講師)  編著

講座・医療経済・政策学第2巻
A5 ・ 3045 円 (税込)
2005年3月15日発行
4-326-74832-X
978-4-326-74832-7
出版元:勁草書房(s1836)

これからの医療従事者に必要な経済学と政策学の基礎知識と視点を提供し、「医療経済・政策学」の確立を目指すシリーズ第2巻。

医療費問題は先進諸国に共通する国内問題だが、医療保険制度は国によって異なるため、医療費問題に適切な解を見出すためには自国の医療制度に関する正しい理解が必要となる。医療保険制度を多様な視点と最新の知見から研究する本書は、医療経済、医療政策を研究する上で有益な手引きとなる。

関連書:シリーズ全6巻随時刊行


第1章 わが国の医療保険制度の歴史と展開
 第1節 わが国の医療保険制度の創設過程
 第2節 国民皆保険の達成と発展
 第3節 医療保険制度の変容
 第4節 人口高齢化および経済基調の変化と医療保険制度改革

第2章 診療報酬制度の理論と実際
 第1節 診療報酬を考える二つの視点
 第2節 わが国の診療報酬体系の特徴
 第3節 合理的な医療技術評価の試み

第3章 わが国の診療報酬政策の展開と今日的課題
 第1節 診療報酬点数の基本的な特徴とその推移
 第2節 1990年代における診療報酬の政策転換
 第3節 今日の診療報酬の体系と課題
 第4節 診療報酬政策の総括と今後の展望

第4章 DRG(DPC)方式の機能性とPPSの経済的特徴
 第1節 DRGの機能とPPS
 第2節 PPSの影響
 第3節 米国のDRG/PPSの場合
 第4節 日本のDPC/PPSの機能と影響

第5章 急性期以外の入院医療のための新たな支払方式
 第1節 入院医療の支払方式の歴史的展開
 第2節 ケースミックス分類による支払
 第3節 日本版RUG分類の開発と検証

第6章 薬価の現状と課題
 第1節 薬価基準とは
 第2節 薬価算定
 第3節 薬価改訂
 第4節 薬価制度改革の議論

第7章 レセプト情報を用いた医療費分析の可能性と限界
 第1節 レセプトの種類と法的性質
 第2節 レセプトに含まれる情報
 第3節 レセプトの他の情報
 第4節 介護保険レセプト
 第5節 レセプトの流れ
 第6節 代表的なレセプト統計
 第7節 傷病別医療費の推計
 第8節 レセプト電子化の進展と将来の可能性

第8章 保険者機能強化論の経済・政策学
 第1節 問題の所在
 第2節 日本における保険者の現状
 第3節 「保険者機能」をめぐる議論および政策の動向
 第4節 医療制度改革と「保険者機能」
 第5節 今後の展望

第9章 医療保険の給付範囲をめぐる論点
 第1節 だれが給付範囲を決めるのか
 第2節 混合診療と特定療養費
 第3節 今後の展開

事項索引
欧文索引
執筆者一覧

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