歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 歯科補てつ物の国外委託に対する基本的な視点と本会の対処方針

2011年11月22日 | 日本歯技
2011年11月18日発行
すべての
歯科技工士の皆様へ
~伝えたい、わたしたちの思い~
24~26

歯科補てつ物の国外委託に対する基本的な視点と本会の対処方針

Q:日本歯科技工士会は、歯科補てつ物等の国外委託に対し、どのような見方・分析をし、対応策を持っているのでしょうか?

A:この問題に関しては、素朴な感情論には別として、純粋な法律問題として冷静な分析をし、現行法令の足らざる点を補うべく、新たな法令の整備のための渉外活動を日本歯科技工士連盟と共に取り組んでいます。

1.主権の及ぶ範囲の問題

 ご理解頂きたい前提に、主権の及ぶ範囲の問題があります。尖閣列島周辺の海で、日本と中国が揉めた事件がありました。中国の漁船が、海上保安庁の船に体当たりした事件です。「sengoku38」氏により両船の衝突映像がネットに流出し、映像が出回った事件として記憶されている方もいらっしゃると思います。
 あの事件のあった海域は、日本と中国の両国が自分の領海だと「領有権」を争っている場所です。日本の海上保安庁は、日本の領海で中国漁船が「違法」に操業していたと、取り締まりを行いました。中国は、自分の国の領海内で自分の国の漁船が操業していたのに、日本の海上保安庁が「中国の主権を侵し、違法に取り締まりをした」と主張しています。

2.法令の効力の及ぶ範囲=領土領海(図)


法律の効力の及ぶ範囲

 あの事件の背景にあった問題は、領土・領海の問題、国家主権の問題です。更に背景には海洋資源・海底資源の問題もあったと言われています。どちらの領土・領海かで、適用される(国の)法律が当然違います。国家の主権、法律の効力の及ぶ範囲が違いますから、後々の展開のために双方が引けない問題でもあります。
 歯科技工の問題に話題を戻すと、中国国内で歯科技工をする時は、中国の制度に従うのが当然となります。日本国内(日本の主権の及ぶ日本領土)で歯科技工を行うときは、日本の歯科技工士法に従うのが当然です。

3.医療の骨格を規定する医療法と「輸入入れ歯」の本質問題

医療法(図)


 日本の歯科医療機関(歯科医院)が、歯科補てつ物等の作成を国外に制約なく委託できることが輸入入れ歯問題の本質です。この問題を解決しなければ、国民・患者の歯科医療に対する期待に応える医療提供体制としては、不備であるとの批判を避けることは出来ないでしょう。
 日本の主権下の日本の法律の効力の及ぶ領土内で行われている「行為」は、歯科医療機関からの「委託」です。ここが整備すべきポイントになります。ここを見逃すことがあっては、いけません。
 医療機関が外部に対し医療に重大な影響を与える業務を委託することに関しては、従来から医療法令が規定しています。医療にかかわる様々な業務の中から、重要性のある衛生検査も、給食も、病院清掃もこの医療法で規制されています。

医療法施行規則(図)



平成4年(1992年)医療法改正(図)


4.現在の渉外活動の焦点

 「輸入入れ歯」という課題には、その本質である医療法令に歯科技工の委託に関する規定の無い欠陥をどのように解決するかという課題に対して、歯科技工専門職団体として国民誰もが納得する建設的な提案をしなければならなりません。
 医療法、歯科医師法、歯科技工士法の現行法令では対処できないこの課題に対し、国民の歯科医療の安全と安心を守り、日本の歯科技工士が日本国民のためにその能力を十全に発揮する立場から、日本歯科医師会、厚生労働省、与野党の歯科関係議員等との協議を加速させています。

 日本歯科技工士会では、今後も様々な課題にたいし背景を的確に分析し、対処方針を確立し、果敢で的確な対外活動を行ってまいります。


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