ある華麗なる転進、国会から獄中へ, 2007/10/3
By 歯職人
民主党に風が吹いた総選挙で当選し、あるキッカケによる逆風の中で絵に描いた一罰百戒の様に獄入りした元衆議院議員による自省の記であり、獄中見聞録である。
特筆すべきは、著者の山本譲司元代議士が遭遇する法務・矯正行政と福祉行政の狭間の中で漂う獄中の知的障害者や高齢者の姿である。
この獄中で、著者は獄の管理者との奇妙なコラボレーションを結び、ある種の生きがいと使命を獲得する。
その後の著者の諸著作の背景或いは生きたかの転機を、描き出している。
蛇足ながら、辻元清美氏はこの著作指摘に対して、公式の弁明・返答をしたのだろうか?事後報告なき表層の報道に流れるきらいのあるマスコミを考える上でも、大いに参考となる一冊と考える。
(ゴクソウキ )
獄窓記
ISBN:9784591079355 (459107935X)
391p 19cm(B6)
ポプラ社 (2003-12-06出版)
・山本 譲司【著】
[B6 判] NDC分類:916 販売価:\1,575(税込) (本体価:\1,500)
そこは「塀の中の掃き溜め」と言われるところだった。
汚物にまみれながら、獄窓から望む勇壮なる那須連山に、幾重にも思いを馳せる。
事件への悔悟、残してきた家族への思慕、恩人への弔意、人生への懊悩。
そして至ったある決意とは。
国会で見えなかったこと。
刑務所で見えたこと。
秘書給与事件で実刑判決を受けた元衆議院議員が陥った永田町の甘い罠と獄中の真実を描く。
序章 入獄の日
第1章 秘書給与詐取事件(政治を志した生い立ち;菅直人代議士の秘書、そして国政の場へ ほか)
第2章 新米受刑者として(分類面接;手紙 ほか)
第3章 塀の中の掃き溜め(寮内工場の仕事;障害を抱えた同囚たち ほか)
第4章 出所までの日々(烏兎匆々;ふたたびクローズアップされた秘書給与問題 ほか)
終章 出獄
秘書給与流用事件により、実刑判決を受けた山本譲司元代議士が433日の獄中生活と事件について語る異色のノンフィクション。
新聞書評
獄窓記
獄窓記 山本譲司著
元代議士が見た「塀の中」
人生、できるだけ多くのことを体験したいと思って生きている。でも、服役だけは例外だ。自分が刑務所に入るようなことは、全くの想定外である。著者も同じだっただろう。しかしその“例外”は現実になってしまう。民主党代議士だった著者は、秘書給与を国からだまし取った詐欺罪で逮捕・起訴され、懲役1年6か月の実刑判決を受け、服役したからだ。
本著は、仮出所までの過程を詳細に報告した体験記だ。「塀の中」に関する本は、一般人とは次元の違う人物が主人公だったケースが多いように記憶する。だが、今回は普通のサラリーマンに近い感覚の持ち主だった。いちいち書いていることが腑(ふ)に落ちるのだ。友人から経験談を聞いているような感じすら覚えた。
刑務所は特別な世界だ。最初、受刑者は完全に人間性を奪われ、看守は閻魔(えんま)のような厳しさで対応してくる。だが、やがて「塀の中」にも複雑な人間模様があることがわかってくる。
著者は、福祉関係の法律の知識もあり、受刑者仲間から年金などについての相談を受け、一目置かれるようになる。障害者を集めた所内工場の指導補助として世話を焼くうち、福祉関係の仕事を今後の天職として生きようと思うに至る。やりがいが「塀の中」にも必要なのだ。
一方で看守も、勤務のつらさや縦割り制度による刑務所管理の弊害などを、著者にこぼすようになる。“閻魔”も、平凡な公務員の1人であることが浮き彫りになる。
著者と同じ罪で起訴された辻元清美被告に、近く判決が言い渡される。著者と辻元被告は大学の同じゼミ仲間だった。その同級生に対し、著者が獄中から名誉棄損などで“警告”するまでのやり取りは、本著後半の核心だ。
433日間の受刑中、300通もの妻からの手紙や、子供連れの面会が支えとなった。家族のありがたさが伝わってくる。「罪を憎んで人を憎まず」。こんな言葉を思い出した。
評者・榧野信治(読売新聞社論説委員) / 読売新聞 2004.02.08
By 歯職人
民主党に風が吹いた総選挙で当選し、あるキッカケによる逆風の中で絵に描いた一罰百戒の様に獄入りした元衆議院議員による自省の記であり、獄中見聞録である。
特筆すべきは、著者の山本譲司元代議士が遭遇する法務・矯正行政と福祉行政の狭間の中で漂う獄中の知的障害者や高齢者の姿である。
この獄中で、著者は獄の管理者との奇妙なコラボレーションを結び、ある種の生きがいと使命を獲得する。
その後の著者の諸著作の背景或いは生きたかの転機を、描き出している。
蛇足ながら、辻元清美氏はこの著作指摘に対して、公式の弁明・返答をしたのだろうか?事後報告なき表層の報道に流れるきらいのあるマスコミを考える上でも、大いに参考となる一冊と考える。
(ゴクソウキ )
獄窓記
ISBN:9784591079355 (459107935X)
391p 19cm(B6)
ポプラ社 (2003-12-06出版)
・山本 譲司【著】
[B6 判] NDC分類:916 販売価:\1,575(税込) (本体価:\1,500)
そこは「塀の中の掃き溜め」と言われるところだった。
汚物にまみれながら、獄窓から望む勇壮なる那須連山に、幾重にも思いを馳せる。
事件への悔悟、残してきた家族への思慕、恩人への弔意、人生への懊悩。
そして至ったある決意とは。
国会で見えなかったこと。
刑務所で見えたこと。
秘書給与事件で実刑判決を受けた元衆議院議員が陥った永田町の甘い罠と獄中の真実を描く。
序章 入獄の日
第1章 秘書給与詐取事件(政治を志した生い立ち;菅直人代議士の秘書、そして国政の場へ ほか)
第2章 新米受刑者として(分類面接;手紙 ほか)
第3章 塀の中の掃き溜め(寮内工場の仕事;障害を抱えた同囚たち ほか)
第4章 出所までの日々(烏兎匆々;ふたたびクローズアップされた秘書給与問題 ほか)
終章 出獄
秘書給与流用事件により、実刑判決を受けた山本譲司元代議士が433日の獄中生活と事件について語る異色のノンフィクション。
新聞書評
獄窓記
獄窓記 山本譲司著
元代議士が見た「塀の中」
人生、できるだけ多くのことを体験したいと思って生きている。でも、服役だけは例外だ。自分が刑務所に入るようなことは、全くの想定外である。著者も同じだっただろう。しかしその“例外”は現実になってしまう。民主党代議士だった著者は、秘書給与を国からだまし取った詐欺罪で逮捕・起訴され、懲役1年6か月の実刑判決を受け、服役したからだ。
本著は、仮出所までの過程を詳細に報告した体験記だ。「塀の中」に関する本は、一般人とは次元の違う人物が主人公だったケースが多いように記憶する。だが、今回は普通のサラリーマンに近い感覚の持ち主だった。いちいち書いていることが腑(ふ)に落ちるのだ。友人から経験談を聞いているような感じすら覚えた。
刑務所は特別な世界だ。最初、受刑者は完全に人間性を奪われ、看守は閻魔(えんま)のような厳しさで対応してくる。だが、やがて「塀の中」にも複雑な人間模様があることがわかってくる。
著者は、福祉関係の法律の知識もあり、受刑者仲間から年金などについての相談を受け、一目置かれるようになる。障害者を集めた所内工場の指導補助として世話を焼くうち、福祉関係の仕事を今後の天職として生きようと思うに至る。やりがいが「塀の中」にも必要なのだ。
一方で看守も、勤務のつらさや縦割り制度による刑務所管理の弊害などを、著者にこぼすようになる。“閻魔”も、平凡な公務員の1人であることが浮き彫りになる。
著者と同じ罪で起訴された辻元清美被告に、近く判決が言い渡される。著者と辻元被告は大学の同じゼミ仲間だった。その同級生に対し、著者が獄中から名誉棄損などで“警告”するまでのやり取りは、本著後半の核心だ。
433日間の受刑中、300通もの妻からの手紙や、子供連れの面会が支えとなった。家族のありがたさが伝わってくる。「罪を憎んで人を憎まず」。こんな言葉を思い出した。
評者・榧野信治(読売新聞社論説委員) / 読売新聞 2004.02.08