内閣法制局の役割とその蓄積を初歩から語る, 2014/7/14
By 歯職人
普段あまり注目されることの無い内閣法制局を、長官経験者の阪田雅裕氏を語り手に、弁護士の川口創氏を聞き手にして編んだ書籍です。
本書の骨格は、2013年の夏ごろから対話が開始され、その当時の政治状況、憲法をめぐる話題が取り上げられている。奥付によれば、2014年2月20日の第1刷発行、同年5月29日の第3刷発行とある。
内閣の一部である内閣法制局が、成文の憲法と内閣の統治政策をつなぐ憲法解釈を、裁判所の判断以前に行政側の立場で論理の整合性の中で深め、裁判所においても概ね肯定される論理を構築することにより作る法秩序の安定性確保の必要性が、過剰感もなく淡々と語られている。
阪田氏は、ご自分が直接見聞したこと以外に言及することに極めて抑制的である。
政治の側から内閣法制局の仕事と蓄積に、異論を唱えた小沢一郎氏の「国連の集団安全保障への参加論」への的確な反論は、法制局在任であったため言及がある。しかし、小泉政権の末期に内閣法制局を離れた阪田氏は、民主党政権下で「政治主導」の名の下に官僚の答弁を禁じ、「憲法解釈は、政治性を帯びざるを得ない。その時点、その時点で内閣 が責任を持った憲法解釈論を国民のみなさま方、あるいは国会に提示するのが最も妥当な道であるというふうに考えている」(仙谷由人)として、内閣に法令解釈担当を置き、内閣法制局長官に憲法解釈などの国会答弁をさせない運営をしたことには、言及がない。第二次安倍政権で、外務省から法制局長官が指名される事態の出現の前史として、外してはいけないポイントと思われるが、残念である。
編集者の仕事の範囲に属することであるが、本書に阪田氏の写真が度々登場するが、同じ構図、同じトーンの写真で工夫がない。また、図表も殆んど無く、読者に伝えるための意欲に疑問符が付く。総じて、著者と著者の肩書に依存した書籍になっているのではないか。
「担当編集者の仕事」を、考えさせられる一冊となった。
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E6%B3%95%E3%81%AE%E7%95%AA%E4%BA%BA%E3%80%8D%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%81%AE%E7%9F%9C%E6%8C%81-%E9%98%AA%E7%94%B0-%E9%9B%85%E8%A3%95/dp/4272211080/ref=cm_cr_pr_product_top
「法の番人」内閣法制局の矜持―解釈改憲が許されない理由
阪田 雅裕【著】/川口 創【聞き手】
価格 \1,728(本体\1,600)
サイズ B6判/ページ数 206p/高さ 19cm
商品コード 9784272211081
NDC分類 317.21
内容説明
戦後60余年積み重ねられた憲法解釈の重みをもっとも知る人物が語る、立憲主義の要としての法制局の責務とその危機。全国民必読の書!
目次
第1章 内閣法制局とはいかなる機関か(労働組合との交渉で多くを学んだ;内閣法制局の組織と役割 ほか)
第2章 9条解釈と自衛隊海外派遣(湾岸戦争と「国際貢献」論、PKO法;日米新ガイドラインと周辺事態法 ほか)
第3章 集団的自衛権行使はなぜ認められないか(9条の定める「戦力」とは何か;自衛権の発動に必要な三つの要件 ほか)
第4章 立憲主義を守る(安倍政権と外務省人脈とのつながり;アメリカは集団的自衛権の解禁を要求しているのか ほか)
著者紹介
阪田雅裕[サカタマサヒロ]
1943年生まれ、弁護士。1966年大蔵省入省、国税庁などを経て92年より内閣法制局で総務主幹、第三部長、第一部長、法制次長を歴任。小泉政権期の2004年から2006年まで第61代内閣法制局長官を務めた。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問
川口創[カワグチハジメ]
1972年生まれ、弁護士。名古屋第一法律事務所所属。日弁連憲法委員会副委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
9条の解釈変更=集団的自衛権容認は許されない!いま岐路に立つ内閣法制局の元長官が自ら語る、法制局の責務と立憲主義の危機。
憲法9条の解釈変更=集団的自衛権容認は許されない!長年にわたり政府の憲法解釈を担い、いま岐路に立たされる内閣法制局の元長官みずからがその内実と責務を語り、解釈改憲がもたらす立憲主義の破壊に強く警鐘を鳴らす。
はしがき――インタビューにあたって(川口創)
第1章 内閣法制局とはいかなる機関か
第2章 9条解釈と自衛隊海外派遣
第3章 集団的自衛権行使はなぜ認められないか
第4章 立憲主義を守る
あとがき(阪田雅裕)
【著者紹介】
1943年生まれ、弁護士。1966年大蔵省入省、国税庁などを経て92年より内閣法制局で第三部長、第一部長、法制次長などを歴任。小泉政権期の2004年から2006年まで第61代内閣法制局長官を務めた。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問。著書に『政府の憲法解釈』(有斐閣)。
日刊ゲンダイ 2014年7月14日
阪田元内閣法制局長官「ルビコンを渡れば歯止めが利かない」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/151814
By 歯職人
普段あまり注目されることの無い内閣法制局を、長官経験者の阪田雅裕氏を語り手に、弁護士の川口創氏を聞き手にして編んだ書籍です。
本書の骨格は、2013年の夏ごろから対話が開始され、その当時の政治状況、憲法をめぐる話題が取り上げられている。奥付によれば、2014年2月20日の第1刷発行、同年5月29日の第3刷発行とある。
内閣の一部である内閣法制局が、成文の憲法と内閣の統治政策をつなぐ憲法解釈を、裁判所の判断以前に行政側の立場で論理の整合性の中で深め、裁判所においても概ね肯定される論理を構築することにより作る法秩序の安定性確保の必要性が、過剰感もなく淡々と語られている。
阪田氏は、ご自分が直接見聞したこと以外に言及することに極めて抑制的である。
政治の側から内閣法制局の仕事と蓄積に、異論を唱えた小沢一郎氏の「国連の集団安全保障への参加論」への的確な反論は、法制局在任であったため言及がある。しかし、小泉政権の末期に内閣法制局を離れた阪田氏は、民主党政権下で「政治主導」の名の下に官僚の答弁を禁じ、「憲法解釈は、政治性を帯びざるを得ない。その時点、その時点で内閣 が責任を持った憲法解釈論を国民のみなさま方、あるいは国会に提示するのが最も妥当な道であるというふうに考えている」(仙谷由人)として、内閣に法令解釈担当を置き、内閣法制局長官に憲法解釈などの国会答弁をさせない運営をしたことには、言及がない。第二次安倍政権で、外務省から法制局長官が指名される事態の出現の前史として、外してはいけないポイントと思われるが、残念である。
編集者の仕事の範囲に属することであるが、本書に阪田氏の写真が度々登場するが、同じ構図、同じトーンの写真で工夫がない。また、図表も殆んど無く、読者に伝えるための意欲に疑問符が付く。総じて、著者と著者の肩書に依存した書籍になっているのではないか。
「担当編集者の仕事」を、考えさせられる一冊となった。
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E6%B3%95%E3%81%AE%E7%95%AA%E4%BA%BA%E3%80%8D%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%81%AE%E7%9F%9C%E6%8C%81-%E9%98%AA%E7%94%B0-%E9%9B%85%E8%A3%95/dp/4272211080/ref=cm_cr_pr_product_top
「法の番人」内閣法制局の矜持―解釈改憲が許されない理由
阪田 雅裕【著】/川口 創【聞き手】
価格 \1,728(本体\1,600)
サイズ B6判/ページ数 206p/高さ 19cm
商品コード 9784272211081
NDC分類 317.21
内容説明
戦後60余年積み重ねられた憲法解釈の重みをもっとも知る人物が語る、立憲主義の要としての法制局の責務とその危機。全国民必読の書!
目次
第1章 内閣法制局とはいかなる機関か(労働組合との交渉で多くを学んだ;内閣法制局の組織と役割 ほか)
第2章 9条解釈と自衛隊海外派遣(湾岸戦争と「国際貢献」論、PKO法;日米新ガイドラインと周辺事態法 ほか)
第3章 集団的自衛権行使はなぜ認められないか(9条の定める「戦力」とは何か;自衛権の発動に必要な三つの要件 ほか)
第4章 立憲主義を守る(安倍政権と外務省人脈とのつながり;アメリカは集団的自衛権の解禁を要求しているのか ほか)
著者紹介
阪田雅裕[サカタマサヒロ]
1943年生まれ、弁護士。1966年大蔵省入省、国税庁などを経て92年より内閣法制局で総務主幹、第三部長、第一部長、法制次長を歴任。小泉政権期の2004年から2006年まで第61代内閣法制局長官を務めた。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問
川口創[カワグチハジメ]
1972年生まれ、弁護士。名古屋第一法律事務所所属。日弁連憲法委員会副委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
9条の解釈変更=集団的自衛権容認は許されない!いま岐路に立つ内閣法制局の元長官が自ら語る、法制局の責務と立憲主義の危機。
憲法9条の解釈変更=集団的自衛権容認は許されない!長年にわたり政府の憲法解釈を担い、いま岐路に立たされる内閣法制局の元長官みずからがその内実と責務を語り、解釈改憲がもたらす立憲主義の破壊に強く警鐘を鳴らす。
はしがき――インタビューにあたって(川口創)
第1章 内閣法制局とはいかなる機関か
第2章 9条解釈と自衛隊海外派遣
第3章 集団的自衛権行使はなぜ認められないか
第4章 立憲主義を守る
あとがき(阪田雅裕)
【著者紹介】
1943年生まれ、弁護士。1966年大蔵省入省、国税庁などを経て92年より内閣法制局で第三部長、第一部長、法制次長などを歴任。小泉政権期の2004年から2006年まで第61代内閣法制局長官を務めた。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問。著書に『政府の憲法解釈』(有斐閣)。
日刊ゲンダイ 2014年7月14日
阪田元内閣法制局長官「ルビコンを渡れば歯止めが利かない」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/151814