子供が幼稚園か小学校低学年の頃、
バス停のベンチに財布が置いてあるのを子供が見つけた。
高校生の学生証が挟んであった。
正直言うと、私は財布の落し物のような状況にはあまり関わりたくないタイプだ。
しかし、子供は落し物を見つけるという初めての経験に興味津々だった。
どうしたものかとゆっくり考える間もなくバスが来て、
私は結局バスの運転手にその財布を託した。
このことはその後ずっと私の心に引っかかっている。
警察署に落し物を届けるという経験を子供にさせるべきだったのではないかという後悔が
今も心にくすぶっているからだ。
でも、学生証に貼ってあった写真はちょっと悪目な感じだった。
だからあまり関わりたくないと思ってしまったんだよねと自分に言い訳してみたり・・・。
あの運転手は中身を抜かずにちゃんと届けてくれただろうかと不信感を持ったり・・・。
なにか胸の中でずっともやもやとしてきた。
そして、先日、主人が落し物をするという出来事があった。
財布などではなく、誰かに拾われて実害のあるものでもなかったが、
警察署に届いていると連絡があった。
親切な人がいたんだねと話した。
ところが、受け取りに行くと、届けた人が金銭的な謝礼を求めているという。
個人的に連絡をよこせということらしい。
主人は結局受け取らないことにした。
警察署の係の人も受け取らない方が良いだろうということで、
随分とすまなそうにしていたという。
なんとも複雑な気持ちになる出来事だった。
私が財布の落し物に関わりたくないと思う理由の一つに謝礼の問題がある。
勿論、謝礼をもらう気などさらさらないが、
もらうとかもらわないとか考えること自体が嫌なのだ。
その昔、まだ世の中の一部の人しか携帯電話を持っていなかった頃、
父が携帯電話の忘れ物を見つけたことがあった。
持ち主からその携帯に電話がかかってきて、
父は相手の指示するままにその携帯を会社まで届けに行った。
富士通の大きな工場の入口の門で窓口の守衛さんに用件を告げると、
敷地のずっと奥のオフィス棟から携帯電話の持ち主が歩いて来て、
まともなお礼の言葉もなく携帯を受け取ってさっさと戻ってしまったそうだ。
父は唖然としてその人の失礼な態度を怒ることもできなかったらしい。
勿論、父は謝礼などもらうつもりはなかったが、
感謝の気持ちくらい示して欲しかったと言っていた。
会社まで届けさせたのだ。丁寧に礼を言うことぐらい人として当然の礼儀だろう。
世の中にはいろいろな人がいるものだ。
私も含めて(笑)
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