K.M. Rodsmiths

自分で作ってしまえ (バンブーロッド、ランディングネットetc.)、ネコ、

京都――続き

2008年01月05日 | Weblog
全員が一緒に行動した所を辿る班と、タケヒロ班のもう一人の記憶をたどって探す班に分かれ捜索開始。
鞄が見つからなければ、家に帰ることすらできなくなる。
私は、その日一日の行動を、鞄の記憶が途切れた所まで逆にたどってみたが、収穫なし…

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集合時間にタケヒロ班の1人が息を切らして飛び込んできた。

“どうだ、見つかったか?”

“おう、でも、あの鞄には、タケヒロのじゃなくてお前の身分証が入っていたから、鞄を預かってくれてる人が、お前本人じゃないと返せないって”

“じゃぁこれからすぐ行こう。”

連れて行かれたのは、参道にあるお土産物屋であった。
店先の公衆電話で民宿に電話したとき、タケヒロはそこに鞄を置き忘れたのだ。
50代後半であろうか、主人夫婦が私を確認すると、ニコニコしながら鞄を返してくれた。

“えらい遠くから来られたたんやねぇ。学生さんなのに、どうしてこんなに現金持ってはりますの?”

“あのぅ、これは、全員分の旅費なんです。”

“へぇ、やっぱりそうでしたか。これがなくなったらえらい困られはるんでっしゃろ”

“それはもう、家にも帰れません。本当にありがとうございます。”

全員で深々と頭をさげ、御礼の言葉を述べると、相変わらずにこやかな表情でこう続けたのだった。

“実は私共にも大学生の子がいて、東京で一人暮らしているんですよ。もう、毎日心配ばかり… あんまり親御さんに心配かけたらあきませんよ”

一同お茶をいただきながら恐縮してうけたまわるのであった。
旅費が戻り、ツアー再開となり、その日はちょっと贅沢して祝杯をあげたのであった。
それからもいろんな出来事はあったが、懐かしい思い出ばかりだ。

成り行き任せの出たとこ勝負ツアーは、‘予定なんぞ立てるの面倒やから、とにかく行ってしまえ’という私の性格ゆえだが、このとき以来予定らしきものを少しは考えるようになった。
いきなり遠くから電話がきて、お宅の息子さんの身分証明書と~万円入りの財布を預かっているなんて聴かされた親はさぞ驚いただろう。
京都に行くことはおろか、いつ、どこに行くかすら話していなかったのだ…

“ちょっと行ってくるね。”と言ったっきり何年も帰らなかったバカが知り合いにいるが…
自分が親になってみて、それはやめて欲しいと思うが、それは身勝手だろうか…

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