あおいこころ

わたしがこの世で生きていくこと🍎

アザラシまんじゅう 4話/空想遊び

2023-07-04 14:34:00 | 空想遊び

◇4話 アザラシまんじゅう商品企画

 日本の大手和菓子メーカーで新商品の開発会議が行われていた。
開発担当の中堅男性社員がいた。
アイデアはどれも垢抜けず、ダメ出しばかり食らっていた。
今日もどの企画も通らず頭をかかえた。
男性社員は仕事を終えると家族の元へ帰宅した。
「ただいま!」
と元気な声で玄関ドアを開けた。
男性社員は仕事の気分を家庭に持ち込まないと決めていた。
小学生の娘に声をかける。
「今日の学校はどうだった?」
娘は父親の質問には答えずに質問で返してきた。
「アザラシまんじゅう、すごく美味しかったよ!お父さんの会社のおまんじゅうだよね?」
すると母親が出てきて
「この子、学校から帰ってきたらテーブルの上に置いてあったアザラシまんじゅうを食べたっていうの。美味しかったから、また食べたいっていうの。でも、そんなおまんじゅうは用意してないのよ。」
「食べたもの!お父さんの会社の試作品とかじゃなくて?」
と娘がいう。
「え?!アザラシまんじゅう?どんなおまんじゅうだった?」
と父親が聞くと
「このくらいの大きさで。。。」
と手のひらを見せて
「上用饅頭みたいな大きさで、真っ白で、真ん丸のかわいいアザラシの形で、中の餡は小豆のこし餡なんだけど、どこかクリーミーな味わいだったよ!とにかく美味しかったの!また食べたい!食べたい!食べたーい!」
父親は娘の話を聞きながら胸の高鳴りを感じた。
「作るよ!また食べれるよ!」
男性社員は答えると目が輝くのだった。
この胸の高鳴りを感じるのは、男性社員だけではなかった。
女の子のお腹の中で消化されているアザラシまんじゅうも一緒だった。

 お腹で消化されたアザラシまんじゅうは、あくる朝には女の子の体内から排泄され、トイレから下水処理場へ流された。
下水処理場の浄化槽をいくつも渡って、水の一部になったアザラシまんじゅうは川に流され海に流れ着いた。
そして海水の一部となって水蒸気になると雲になり、雨となってやがて地球上に降り注いだ。
動物に食べられたすべてのアザラシまんじゅう達もみんな消化され、排泄されると土の栄養になって地球に浸透していった。

アザラシまんじゅう 3話/空想遊び

2023-07-03 19:27:00 | 空想遊び

◇3話 新天地「地球」

 故郷の星に似た青い星を見つけたアザラシまんじゅうは、どんなに期待して地球を新天地としたのだろう。
バラバラに落下した、いくつかのアザラシまんじゅうは、どうなったかというと。
あるものは落下中に鳥に食べられ、あるものは海に落ちて魚に食べられ、ジャングルに落ちたものはサルに食べられた。
アジアに落ちたものは野良犬に食べられ、ヨーロッパの町中に落ちたものはホームレスに食べられた。
食べられるということが、与える究極の愛の形だとアザラシまんじゅうは感じているのだ。

 ただ1つだけすぐに食べられることのないアザラシまんじゅうがいた。
落下スピードをうまくコントロールできずに、地面に叩きつけられたアザラシまんじゅうは瀕死の状態だった。
そこはアメリカの広大な小豆畑の真ん中だった。
アザラシまんじゅうは、人にも動物にも見つけられず青い空をただぼんやり見上げ、最期の時を待つのだった。
そして力尽き死んだ。

 その体は腐敗していき土の一部となり小豆畑の栄養となった。
そう、このアザラシまんじゅうも微生物よって食べられ分解されたのだ。



アザラシまんじゅう 2話/空想遊び🙃

2023-07-02 08:00:00 | 空想遊び

◇2話 アザラシまんじゅうの故郷の星

 ここは地球からずっとずっと離れた遠い宇宙の青い星。
青い空と青い海と白い陸地が広がっている。
白い陸地と思われたが、陸地いっぱいにアザラシまんじゅうがひしめき合い、地面から15センチほどバウンドしながら動き回っている。

 アザラシまんじゅう達が一斉に「クークー、キューキュー」と鳴き始めた。
すると海から人間の子供の姿をした女の子が上がってきた。
全身白いベールを身にまとい、天使のような微笑みをたたえながら、アザラシまんじゅうの中を歩いて行く。
アザラシまんじゅう達は、微笑みの女の子の周りを歓迎するかのように嬉しそうに飛び跳ねている。
ひときわ高く飛び上がった一匹のアザラシまんじゅうが、女の子の手のひらに乗った。
微笑みの女の子は両手でアザラシまんじゅうを抱える。
その満面の笑みからは、アザラシまんじゅうが大好きで可愛くて、慈しんでいることがとても伝わってくる。
アザラシまんじゅうも微笑みの女の子を心の底から愛していた。
とても尊い愛がそこにはあった。
微笑みの女の子はそっとアザラシまんじゅうに口を近づけた。
アザラシまんじゅうは目を閉じた。
そして微笑みの女の子は、アザラシまんじゅうを食べてしまった。
アザラシまんじゅう達は変わらず微笑みの女の子の周りを嬉しそうに飛び跳ねている。
微笑みの女の子は、また優しい笑みを浮かべながら歩き出した。

 しばらく歩くと微笑みの女の子の表情が変わった。
何か落ち着かない面持ちでしゃがみ込むとアザラシまんじゅう達は微笑みの女の子を取り囲んだ。
ぷ〜う。。。辺りに間抜けなオナラの音が響いた。
アザラシまんじゅう達はさらに微笑みの女の子を取り囲み、その姿が見えなくなってしまった。
しばらくして微笑みの女の子は立ち上がると海へ歩き出した。
その顔には天使の微笑みが戻っていた。
微笑みの女の子がしゃがんでいた辺りには、豆粒ほどの小さなアザラシまんじゅうがたくさんいた。

 この星には与える一方の愛と受け取る一方の愛、そして生み出される愛が繰り返されている。
見返りや駆け引きなどなく、純粋な愛だけが存在していた。
アザラシまんじゅう達と微笑みの女の子は穏やかな愛に包まれて、この星で暮らしている。

 でも中には、無性に冒険心に駆り立てられるアザラシまんじゅうが稀に現れる。
物思いに空を見上げることが多くなり、ある日ポヨンポヨンと小刻みに飛び跳ね始める。
だんだん飛躍が高くなる。
そのジャンプが始まると他のアザラシまんじゅう達は「クー!クー!」と鳴き声を合わせて応援を始める。
どんどんジャンプは高くなり、最高潮に達すると空へと舞い上がって、そのまま宇宙へ飛び出して行く。
そして宇宙空間を自在に飛行し、愛に満ちた新天地を探す冒険の旅に出るのだ。


アザラシまんじゅう 1話/空想遊び🙃

2023-07-01 22:04:00 | 空想遊び




◇1話 アザラシまんじゅうの始まり


 真っ黒な宇宙空間を真っ白な物体が、音速で真っ直ぐに進んでいく。

真っ白で真ん丸なこの物体は、バレーボールほどの大きさをしている。

そして左右と後ろに鰭のようなものがついていて、正面には目と鼻と口がついている。

それから鼻の横には髭がはえていた。


 とてもとても長い時間と空間を移動してきた白い物体は、青い星を見つけた。

その青い星は地球だった。

スピードを落とすことなく星に近づく白い物体は、やがて大気圏に突入した。

安全な突入角度もスピードも知らない白い物体の体は、衝撃を受けて粉々に飛び散った。

破片は燃えたり宇宙へはね飛ばされたりしたが、いくつかの欠片が大気圏を突破した。

そして再形成をして手のひらに乗るような、小さな元の姿になった。

いくつかの小さな白い物体は落下をし続け、そのうちの1つが日本上空にやってきた。

地上が近づくと3本の鰭をいっぱいに広げ速度を緩め始めた。

そしてアパートの窓から部屋に飛び込むとテーブルの上に置いてあった小皿の上に、ぴょこんと収まった。


 そこへ、ランドセルを担いだ女の子が学校から戻ってきた。

「ただいまぁ〜!あ、かわいい〜アザラシまんじゅうだ!おいしそう!いただきま~す!」

と何の躊躇もなくパクリと食べてしまった。

そして、すぐに女の子はランドセルを置いて遊びに出かけてしまったのだった。


ボンボン星/空想遊び🙃

2023-05-11 22:03:20 | 空想遊び


ここはボンボン星という星。
火星くらいの大きさで、白い砂浜と遠浅の海、豊かな森が広がる美しい星だ。
気候は一年を通して24度前後で季節がなく、天候が荒れることもない。
やさしい雨がときおり降って湿度を安定させてくれる。
空は水色やオレンジ色、黄緑色がぼんやりと淡く広がっている。
30時間で自転していて地球よりのんびりした1日だ。

この星に住む人類は狩猟採集生活で、服装は森から採集した植物の繊維から紡いだ白い布で簡素な衣服を着ている。
豊かな自然のお陰で人間同士が争う理由がなく、日々穏やかに暮らしている。

そんなボンボン星の空を5台の飛行体が音もなく飛んでいる。
このタマムシ色で楕円型の飛行体は5メートルほどの大きさで、ボンボン星をAIによって監視している。
監視の他に役割があって、ボンボン星を外側からの侵略者や衝突物体の脅威を回避している。
飛行体の操作によって外側からはボンボン星が見えないし、もし近づいたとしても時空が曲げられ接触することは決してない。

このボンボン星人は、6万年前に移住した地球人の子孫達だ。
6万年前の地球上に存在した人類は、無毒で半永久的な核エネルギーや次元を操作して空間を自在に創り出したり、重力の影響を受けない飛行技術など想像もつかないくらいな高度な文明を発達させていた。
ただ高度な技術を人間の精神性が有効に利用することができなかった。
6万年前の人類は愚かな欲により破壊を選び滅亡した。
人類滅亡を察したひとりの科学者が最期の破壊の直前に、人間の卵子と精子と最高科学技術を乗せた宇宙船で秘密裏にボンボン星に旅立ったのだった。
不毛の地であったボンボン星を科学者は長い歳月をかけて今の状態に創り上げた。
そして人工授精させた受精卵を人工子宮で育て、ボンボン星で初めての人類が産まれた。
人類が滅亡の道を選ばぬよう科学者は人間の遺伝子情報を書きかえた。
そのため、ボンボン星の人類は障害を持って産まれることがなく、病気になることもない。寿命は地球人の3倍ほどで、10歳に見えても精神年齢は30歳だ。
人口は狩猟採集生活が保たれるようにボンボン星と人が作用しあって制御される。
ボンボン星人には言語も文字もない。
テレパシーで意識を伝え合うため、嘘やごまかしが存在しない。
間違って理解することも都合よく置きかえられることもない。
すべての意思の疎通は一瞬だ。
高度な知能と記憶力を持つため記録する文字も必要ないのだ。

科学者は死後、自分の意志を継ぐAIをタマムシ色の5台の飛行体に託した。
この飛行体は地上に降りてくるとボンボン星人に教育をしたり、問題解決の助言を行う。
その教育の中にはボンボン星人の生い立ちも包み隠さず含まれ、もちろん地球のことも学んでいる。

ボンボン星人の死生観とは、死は宇宙エネルギーに戻るときとされる。宇宙エネルギーによりすべては産まれ出て、宇宙エネルギーによって生きている。すべては宇宙エネルギーの一部にすぎず、一匹の虫も木の葉の一枚も砂粒の1つも無数の1つはすべてにつながり1つなのだという考えだ。
そして彼らは地球で言う神の概念は持っていない。

考えようによれば、ボンボン星は科学者の一方的なエゴで存在しているようにも思えてくるが、科学者の死後も崩壊することなく、穏やかな日々が続いているのだ。

ボンボン星人は自分たちの始まりの星、地球を定期的に訪れているのだ。
宇宙船に乗り、何万年も前から地球を見てきた。
宇宙船はタマムシ色の飛行体の作用と一緒で、外側から見ることも接触することもできない。
ボンボン星人は地球人とコンタクトをとることはない、ただ観察してきただけだ。
ボンボン星人から見た地球人とは、外側は同じ人間に見えても思想も価値観も振る舞いも多様で、まるで違う生き物のように思えるという。

6万年前滅亡した人類のあとに、何度も人類の発生と滅亡が繰り返されていることをボンボン星人は知っている。
おそらく6万年よりも前から繰り返されているという。
そして今、また地球人類の滅亡が近づいているという。
滅亡のパターンは決まっていて、それは人口の急激な増加、戦争、疫病の流行、気候変動が重なり合い、そして最後に5つ目の要因が重なると決まって滅亡するという。
その5つ目の要因とは何か。。。
ボンボン星人は知っている。