それはただ、視覚として小さい頃から見慣れた人にとってなだけで、
見る機会が少ない人にはとても新しくてかっこいいものだったりする。
でも、昔から見ていて古臭いって感じてしまう人に、無理に、
「それは古臭かなんかないぞ。」
って押し付けるつもりもない。
それぞれの感性で感じればいいだけだもんね。
ただ、よくいるのが、
視覚以外の部分で伝統工芸の説明をした時、
それまでの価値観が一変する人も多くいます。
古臭いってこれまで近づかなかったけど、
実際手に触れて、匂いを嗅いで、音を聞いて、
こんなに素敵だったのかと気がつく人が多くいるのです。
私が作っている根付は、
触れることを大事にしているもので、
たくさん触れて少し飴色になった状態を
根付用語で“なれ”って言って
より価値の高い、素晴らしいものだとされています。
だからさ、たくさん触りたくなる、
触れていたいという触覚の部分をすごく大切にしていて、
手の中で、使う人によって美しく育ててもらえたらと思っています。
私たちは、彫りの職人だと思われているけれど、
磨きの職人でもあるんですね。
触りたくなる根付、美しく成長する根付になるかならないかは、
この磨きの作業がとても大切なのです。
いつも、磨かせてもらっている時には
手の中で握ってしっくりと気持ちがいいように、
触れたときホッと出来るように、
何度も確認しながら磨いています。
コロナがあけたら、
ぜひ一度触ってもらいたいなぁ。
そんな機会がつくれたらいいなぁ。