多方面から要望があって、幅跳びと背面跳びの踏切技術について一通り知る限りの記事を制作したので参考にしてほしい。
特に最近ネット上で踏切の起こし回転という理論もどきが広まっている。この理論もどきが技術習得に障害になっている。踏切動作の際体を後傾させるという間違い動作を主張しているのである。正しい踏切技術は次のとおりである。
世界陸連の指導者マニュアルに掲載されたものである。
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踏切動作の際適度な直立である
日本陸連の幅跳びマニュアルから転載させていただいたものである。
踏切動作の際適度な直立である。
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正しい文献により正しい技術を確認することが大事だ。
これはペドロソのジャンプだが、理論を確認してからみると正しい動作がわかるだろう。
走り幅跳び金メダル【イヴァンペドロソ】世界記録9mを超える
これはマイク・パウエルとカールルイスの踏切動作をイラスト化したものだが、胸をそらしているが体軸の下部は直立である。このように胸をそらし気味にする跳躍者は多いが、起こし回転論者のように体全体を後傾させてはうまく飛べなくなってしうまう。その理由から一流のジャンパーで体を後傾させる人はいない。
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世界一流陸上競技者の技術 ベースボールマガジン社1994から
上記のように世界中のトップジャンパーは踏み切りのさい体を後傾させずに飛んでいるのに、起こし回転論者は体を後傾剖学の知識が弱いのだろうが、起こし回転理論がもう説であることがわかる。
踏み切り動作は多くの筋肉による複雑運動である。
踏み切り動作はたくさんの筋肉が参加する複雑な運動である。棒を地面にぶつけて跳ね返るのとはまったく違うのだ。
踏み切り下半身下肢の動き ランダッツォ
正しい下肢の操作のよい手本となる。
https://blog.goo.ne.jp/athleticstokenko/e/d6827a96c03b7c849d006baed3e8d355
走り高飛びの踏み切り動作
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このイラストは1980年頃の世界記録保持者ドワイト・ストーンズ(アメリカ)の助走最終局面から踏み切りフライト動作をイラスト化したもの
1978年 ベースボールマガジン社 陸上競技 より転載させていただいた。
、斜めからの図で深い前傾に見える、分かりにくいが、これは内傾している。内傾とはバーと反対側に体を傾ける動作である。横から見ると胸をそらし顔は情報を見て、体軸は直立しかし後ろからみるとバーの反対側に傾いている。
切れ味鋭い助走、最後の2歩は少し重心をさげ内傾、踏み切り足着地時、体の基部は前後方向では直立横方向では内傾、しかし、目線は高いバーを仰ぎ見ているので顔から胸をそらし気味になる。
これを体を後傾させていると勘違いする起こし回転論者が沢山いるが、解剖学の知識がないと、勘違いするのである。
東京五輪2023のバルシムの踏み切り
ほぼ真横からの映像である。胸はそり気味だが胴体下部から下つまり体軸は直立であるが内傾はしている。
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同じく東京五輪のマクシム
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胸をそらし気味にしているが胴体下部から下の体軸は前後では直立、内傾をしている。
現代女子の第一人者、ラシツケネの踏切着地動作。
黒い線を入れたが、腰から胴体下部までが直立している。そして高いバーを仰ぐために胴体の中ほどから胸をそらし気味にする。後傾ではない。後ろの足は胴体と弓なりを作る。踏切足は曲げない、しかし突っ張らない、という動きである。体は棒や箱ではない。後傾というのが間違っていることがわかる。
2m40の記録を持つパクリン腰から胴体下まで直立そして胸をそらしている
大阪世界陸上の王者トーマス。腰から胴体下部まで直立で、胸をそらしている。
ヘルシンキ世界陸上の王者アヴディエンコ腰から胴体下部まで直立後ろ脚とで弓を作っている。胸はそらしている。
人間の体には回転力が生じている。
水平方向に歩いたり走る、その延長で跳ぶと人間の体には回転力が生じている。これは自然なことで今までも知られていたことだ。これに起こし回転という名前を付けるのは問題ない。しかし体全体を後傾させよというのはまったく運動科学を知らないのだろう。この体を後傾はさせないが胸を後ろにそらし気味にするという解剖学の知識がないのでそんなことを言い出したのと、棒をグランドにぶつけて跳ね返るのと同じ原理だという勘違いをしているのである。棒をグランドにぶつけて跳ね返るのと同じ物理現象だと信じすぎている。そのために何が何でも後傾するのだと主張するのだ。
人間の体はたくさんの筋肉で支えられて動かしている。踏み切り動作もこのたくさんの筋肉の協力により行う複雑なうんどうである。棒が地面につきささるようにという動作では正しい跳躍は出来ない。そして後傾させてはだめだということ。
そして回転力を使って飛んでいるわけでもなく、そのような努力は無駄である。
ついでに述べれば、棒をグランドに斜めにぶつけても都合よく跳ね返りはしない。ここにも起こし回転論の嘘がある。
練習方法は別稿でのべたとおり各種目共通で
まず基礎づくり、全身節々をよく発達させ、動く体を作る。
全身持久力、巧緻性を鍛える。
高飛び、幅跳びの正しい技術練習を行う。というこの手順でやれば間違いなく誰でもいい技術、跳躍力を手に入れることが出来る。