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アツミは、バイクだと道に迷わないが、何故だか歩きだと道に迷うことが多い。
今日も都内某所で道に迷い、50分程下町をさまよった。しかし、新しい発見もあり、人の温かさにも出逢って、なかなか良い迷い道であった。
その街にはアツミは行った事がなかった。場所はまさに粋な下町と言われる所。しかし駅を降りて歩いていくと、すぐに暗~い道がただただ続いていた。歩けど歩けど目的物は見えて来ない。せっかく見つけた交番におまわりさんは不在…。人が通ったかと思ったら、み~んな自転車で通り過ぎていき、道を聞くことも出来ない。
歩くこと20分位。だいぶ駅から遠ざかった。と、ぽつりとお店らしき灯りが。八百屋さんだった。若夫婦が、店じまいの時間らしく片付けをしていた。アツミは、外でリンゴを片付けている若奥さんに道を尋ねてみることにした。
地図を広げて目的地を伝え、現在地を聞いてみる。「う~ん、う~ん、ごめんなさい。私の知ってる目標物が見当たらないな~。お父さ~ん!」と旦那さんを呼ぶ。
「どれどれ、あれ~?これ地図が逆だよ。こっちこっち。ありゃ~、これは今来た道を戻って、またさらに同じくらい向こうに歩かなきゃいけないよ。これは大変だ。そっか、ここまで暗い道続きで、誰にも道聞けなかったんだね?」と、まさに悟ったかのようにお見通しの旦那さん。
「交番、おまわりさんまた立ってなかったんでしょ?」と奥さん。夫婦はそう言って、アツミをねぎらった。アツミは、下町の優しい人情を凄く感じて、本気で嬉しかった。アツミはそのお店で柿を買った。
「こんな遅くても間に合うの?道が暗いから気をつけてね。」と言いながら、旦那さんはアツミに柿を渡した。
アツミは若夫婦に見送られながら、足取りも軽く、今来た道を戻り、30分歩いた。
いい街だ。住みたくなった。