「小説会社再建」

高杉良氏の書いた「小説会社再建」を読みました。

本書は実名で書かれており、主人公は四国の愛媛出身の坪内寿夫氏です。造船王、再建王とも評される坪内氏の会社再建のための並々ならぬ決意、行動哲学、私財を投じての救済などその経営手腕が克明に書かれていました。

秋霜烈日なところには今の時代においては一考の余地はありますが、国をもって頼まれた佐世保重工業再建の際、再建指針に合意していたはずの労働組合の猛反発を受け、人的非難、ストライキを繰り返され、倒産の危機まで追い込まれても、なおも手を差し伸べる姿は私には到底できるものではないと感じました。

また、会社が軌道に乗り始めた時に、死者10人を出す事故が発生した際、後の事故調査委員会で会社の不手際ではないのにも関わらず、一刻も早く遺族に謝罪し、マスコミに叩かれても抗弁せず、坪内氏の誠意と忍耐力をもつ強い精神力は度肝を抜かされました。

感謝状も通り一遍の内容ではダメだ。と受賞者の偉業がわかり、その家族まで配慮する内容の文面は、愛のある経営者の真髄が垣間見えました。

経営に携わる方、管理職など一度読まれるとよいかも知れません。また、労務関係に携わる方も団体交渉における経緯を克明に書いてあります。