他にも何名かのホームレスの方をインタビューして、
ぐったりとした表情で新宿からの帰路に着いたぼくだったけれど、
やはりキツさんの話が非常に気になった。
疑い深い性格というよりも、人の嘘に対して非常に敏感だという印象を受けた。
ホームレスになる前にはどんな仕事をしていたんだろう。
ホームレスになったから疑い深くなったのかな。
正直なところ、キチガイ系ホームレスの方への取材は諦めようと考えている。
駅の連結地下道で排泄をしている人や、隣にいる事さえ不可能なレベルで臭い人。
そのような人達にも人生はあるだろうけれども、取材も困難な気がしている。
その点でキツさんは違うように思った。
キチガイ系と言われても全くそう思わなかったし、
むしろインテリさがにじみ出ているようで、不思議な魅力もあった。
多分だけれども、キツさんが裸足じゃなければホームレスだとは思わなかっただろう。
ーー疲れた身体のぼくは温いシャワーで汗を流すにとどめた。
疲れた時にはクーラーを効かせた部屋で裸だ。
これだけは止められない。
風邪を引こうが構わないからこその至高な時間と言えるだろう。
そうだ。
ただ漠然と取材をしていても、単発原稿しか書けない・・・。
それならばキツさんにフォーカスを当てて大きな記事を書くのもありかもしれないな。
それには問題が一つ。
ホームレスの人の取材をしていて分かった事だけれども、
ホームレスだからこそ他人との接触をほど嫌う人が多いって事だ。
キツさんだって例外じゃないはずだ。
しつこく追い回す訳にもいかないし、かと言って密に連絡が取れなければ話にならない。
今日の明日で新宿に行ったとしてもダメだろう。
連日同じホームレスの人に話を聞いたら、嫌がられて殴られるのがオチだ。
さてどうしたものか。
今後の予定も定まっていないし、悩ましい所だなぁ。
とりあえずはデスクに進捗と今後の相談も兼ねてアポを取ろう。
それで今日はぐっすり寝て心地の良い時間を過ごす事にする。