今日は3月10日、3日前の夜に北海道苫小牧港を出た美也は、今日午後から鉄工所で就職面接を受ける。
朝8時に起床して、ホテルで朝食をとりJR葛西臨海公園から一駅の舞浜迄行き、しばらく東京ディズニーランド
を外から眺めていた。大観覧車がゆっくり回っている。2時間程ぶらぶらした後昼食を軽く済ませ、そこからタクシーで
7分、旧江戸川に面した土手に大きな建物が3つ並んでいた。ここが浦嶋製作所だ。美也は約束の14:00より40分早い
13:20頃に事務所に着いた。応接室に通され少しすると、60才過ぎの社長らしき人と40歳前ぐらいの若い男性社員
の二人が応接室に入ってきた。「北海道から一人で来たんだね。中々度胸があるね。」と年配の男性が切り出した。
「私は、社長の相川茂と言います。」と名詞を渡してきた。もう一人の男性は、総務係長の伊藤豊と名乗った。
「北石美也です。よろしくお願いします。」と答えると社長は笑みを見せ、うなずいていた。「金属の工作が好きらしいね。」
と総務係長が聞いてきた。ハローワークからの紹介状に書いてあったのだろ。と美也は思った。「はい、技術系が得意です。」
と話すと社長が、「総務の伊藤君が君の面倒を見てくれるから、何でも解らない事を聞いたらいいよ。」と言ってくれた。
採用が決まったのだと、美也は喜んだ。総務係長の伊藤さんが聞いてきた。「今までにアルバイトした経験はありますか。」
美也は高校3年間夏休みに、地元の土木建設会社でバイトした内容を話した。相川社長は「来週の月曜日(15日)から
仕事をしてもらいますが、いいですか。今月一杯は、見習い期間として日給7000円で残業が2時間程付くので8800円
ぐらい支給します。」美也は、「はい。」とうなずき、笑みを浮かべた。北海道の土木会社でのバイトは、日給6500円
だったからすごくうれしかった。伊藤係長が続けて話し始めた。「4月からは、本採用で月給18万5千円を支給します。
日曜日と第2、第4土曜日が休日になります。残業がある日があり、3時間以内なので遅くても20時には終業します。
月に20~30時間になります。大丈夫ですか?」美也は少し不安そうな表情を浮かべ、「はい、大丈夫です。」と言った。
更に伊藤係長は、話し続けた。「残業手当は2~3万円で、他手当てを含めて21万円、社会保険、所得税など3万円引いて、
18万円です。それから寮費2万5千円と財形積み立て5千円を引くと手元に15万円ぐらいは残るかな。」「長期休暇は、
5月のゴールデンウイークに5日間とお盆休みが3日間、年末年始は4日間の休みがあります。ボーナスは、昨年実績で、
年2回、合わせて2.5カ月分を6月と12月に支給します。」「他に質問はありますか。」美也は、「いいえ、ありません。」
と答えた。初めての会社勤めなので仕組みが解らなかったのだ。「一ヶ月に15万円は、使えるんだ。」とだけ考え、うれしかった。
15:00前に面接が終わり、伊藤係長が工場の中を案内してくれた。大きな工作機械が「キィー、キィー」と音をたてていた。
作業をする人が、ヘルメットをかぶり、一生懸命に機械を操作している。白いマスクを掛けている人もいた。
「力仕事は殆どないよ。機械の操作がメインだから。」「ただ、体は汚れるけどね。」と説明してくれた。確かに作業服が
油の様なもので黒ずんでいた。美也は、「15万円貰う為だから仕方ないかな。」と頭で考えていた。金属部品は、自動車の
エンジンに使われるそうだ。ここの工場から出荷された金属部品は、別の会社で更に手を加えられてから、三菱、マツダの
自動車組立工場で、エンジンの一部として使われるとの説明を受けた。「下請けの孫会社の様な存在かな?」美也は考えてみた。
必要書類の書き方を教わり、信用金庫で給与振込み口座を作るように言われた。東京シティ信用金庫浦安支店と書いてあった。
美也は、郵便局の通帳しか持っていなかった。北海道の田舎で、アルバイトのお金を貯金する為に、始めて口座を作ったのだ。
16時過ぎに、伊藤係長が工場から歩いて会社の寮に案内してくれた。東京ディズニーランドの方向に歩いて10分のところにあった。
美也は、さっきより近くなったディズニーランドの観覧車を見て心がときめいた。それを見ていたのか、係長が「ディズニーランド
に行ったことはあるの。」と聞いてきた。「高校2年生の修学旅行で来ました。」と答えると、ニコッと微笑んでくれた。
寮はかなり古そうな建物で、2階建ての木造アパートのような感じであった。30年前から単身者用の寮として使っているとの事だ。
現在は、13名が利用しているとの事、あと二つ空いている部屋の一つの106号室に案内された。殺風景な畳の4畳半であったが、
布団と小さなテレビだけは、置いてあった。「明日、明後日で日用品や洗面道具などを揃えたらいいよ。」と伊藤係長が言ってくれた。
一階の中央に10席程の食堂があり、ここで朝ごはんを食べる様だ。昼食は寮母さんが弁当を作ってくれるので工場の休憩室で
昼食を食べることになる。風呂は湯船が大きく、一度に5人は浸かれる大きさであった。23時までに入るように言われた。
朝早くに寮母さんが来て、朝食と弁当を作り、その後、トイレ掃除をして風呂に水を張り、午前中に帰るそうだ。
美也は初めての都会での一人暮らしに興奮をしていた。北海道では鍵っ子であり、母は水産加工場の残業で夜遅く帰って来ていた。
美也は夕食を自分で作って食べていた。ここ浦安での夕食は、寮の近くに食堂やレストランがたくさんあり、仕事帰りのサラリーマン
用の定食や晩酌セットが500円~700円で用意されている。浦嶋製作所の従業員も皆ここ辺りで、夕食を食べている様だ。
ちなみに、日曜日は寮母さんが休みで、食事は自前である。コンビニも歩いて2分のところにあり、便利そうだ。
明日から4日間はのんびり出来るが、その間で準備できるものは買っておかなければ、仕事が始まる15日からは忙しくなる。
工場は朝8時からスタートだから朝食を済ませ、7:40分にはここを出なくてはならない。「6時半起きかぁ~」美也はつぶやいた。
今晩は、東京の深夜放送テレビを見てから寝ようと考えていた。
朝8時に起床して、ホテルで朝食をとりJR葛西臨海公園から一駅の舞浜迄行き、しばらく東京ディズニーランド
を外から眺めていた。大観覧車がゆっくり回っている。2時間程ぶらぶらした後昼食を軽く済ませ、そこからタクシーで
7分、旧江戸川に面した土手に大きな建物が3つ並んでいた。ここが浦嶋製作所だ。美也は約束の14:00より40分早い
13:20頃に事務所に着いた。応接室に通され少しすると、60才過ぎの社長らしき人と40歳前ぐらいの若い男性社員
の二人が応接室に入ってきた。「北海道から一人で来たんだね。中々度胸があるね。」と年配の男性が切り出した。
「私は、社長の相川茂と言います。」と名詞を渡してきた。もう一人の男性は、総務係長の伊藤豊と名乗った。
「北石美也です。よろしくお願いします。」と答えると社長は笑みを見せ、うなずいていた。「金属の工作が好きらしいね。」
と総務係長が聞いてきた。ハローワークからの紹介状に書いてあったのだろ。と美也は思った。「はい、技術系が得意です。」
と話すと社長が、「総務の伊藤君が君の面倒を見てくれるから、何でも解らない事を聞いたらいいよ。」と言ってくれた。
採用が決まったのだと、美也は喜んだ。総務係長の伊藤さんが聞いてきた。「今までにアルバイトした経験はありますか。」
美也は高校3年間夏休みに、地元の土木建設会社でバイトした内容を話した。相川社長は「来週の月曜日(15日)から
仕事をしてもらいますが、いいですか。今月一杯は、見習い期間として日給7000円で残業が2時間程付くので8800円
ぐらい支給します。」美也は、「はい。」とうなずき、笑みを浮かべた。北海道の土木会社でのバイトは、日給6500円
だったからすごくうれしかった。伊藤係長が続けて話し始めた。「4月からは、本採用で月給18万5千円を支給します。
日曜日と第2、第4土曜日が休日になります。残業がある日があり、3時間以内なので遅くても20時には終業します。
月に20~30時間になります。大丈夫ですか?」美也は少し不安そうな表情を浮かべ、「はい、大丈夫です。」と言った。
更に伊藤係長は、話し続けた。「残業手当は2~3万円で、他手当てを含めて21万円、社会保険、所得税など3万円引いて、
18万円です。それから寮費2万5千円と財形積み立て5千円を引くと手元に15万円ぐらいは残るかな。」「長期休暇は、
5月のゴールデンウイークに5日間とお盆休みが3日間、年末年始は4日間の休みがあります。ボーナスは、昨年実績で、
年2回、合わせて2.5カ月分を6月と12月に支給します。」「他に質問はありますか。」美也は、「いいえ、ありません。」
と答えた。初めての会社勤めなので仕組みが解らなかったのだ。「一ヶ月に15万円は、使えるんだ。」とだけ考え、うれしかった。
15:00前に面接が終わり、伊藤係長が工場の中を案内してくれた。大きな工作機械が「キィー、キィー」と音をたてていた。
作業をする人が、ヘルメットをかぶり、一生懸命に機械を操作している。白いマスクを掛けている人もいた。
「力仕事は殆どないよ。機械の操作がメインだから。」「ただ、体は汚れるけどね。」と説明してくれた。確かに作業服が
油の様なもので黒ずんでいた。美也は、「15万円貰う為だから仕方ないかな。」と頭で考えていた。金属部品は、自動車の
エンジンに使われるそうだ。ここの工場から出荷された金属部品は、別の会社で更に手を加えられてから、三菱、マツダの
自動車組立工場で、エンジンの一部として使われるとの説明を受けた。「下請けの孫会社の様な存在かな?」美也は考えてみた。
必要書類の書き方を教わり、信用金庫で給与振込み口座を作るように言われた。東京シティ信用金庫浦安支店と書いてあった。
美也は、郵便局の通帳しか持っていなかった。北海道の田舎で、アルバイトのお金を貯金する為に、始めて口座を作ったのだ。
16時過ぎに、伊藤係長が工場から歩いて会社の寮に案内してくれた。東京ディズニーランドの方向に歩いて10分のところにあった。
美也は、さっきより近くなったディズニーランドの観覧車を見て心がときめいた。それを見ていたのか、係長が「ディズニーランド
に行ったことはあるの。」と聞いてきた。「高校2年生の修学旅行で来ました。」と答えると、ニコッと微笑んでくれた。
寮はかなり古そうな建物で、2階建ての木造アパートのような感じであった。30年前から単身者用の寮として使っているとの事だ。
現在は、13名が利用しているとの事、あと二つ空いている部屋の一つの106号室に案内された。殺風景な畳の4畳半であったが、
布団と小さなテレビだけは、置いてあった。「明日、明後日で日用品や洗面道具などを揃えたらいいよ。」と伊藤係長が言ってくれた。
一階の中央に10席程の食堂があり、ここで朝ごはんを食べる様だ。昼食は寮母さんが弁当を作ってくれるので工場の休憩室で
昼食を食べることになる。風呂は湯船が大きく、一度に5人は浸かれる大きさであった。23時までに入るように言われた。
朝早くに寮母さんが来て、朝食と弁当を作り、その後、トイレ掃除をして風呂に水を張り、午前中に帰るそうだ。
美也は初めての都会での一人暮らしに興奮をしていた。北海道では鍵っ子であり、母は水産加工場の残業で夜遅く帰って来ていた。
美也は夕食を自分で作って食べていた。ここ浦安での夕食は、寮の近くに食堂やレストランがたくさんあり、仕事帰りのサラリーマン
用の定食や晩酌セットが500円~700円で用意されている。浦嶋製作所の従業員も皆ここ辺りで、夕食を食べている様だ。
ちなみに、日曜日は寮母さんが休みで、食事は自前である。コンビニも歩いて2分のところにあり、便利そうだ。
明日から4日間はのんびり出来るが、その間で準備できるものは買っておかなければ、仕事が始まる15日からは忙しくなる。
工場は朝8時からスタートだから朝食を済ませ、7:40分にはここを出なくてはならない。「6時半起きかぁ~」美也はつぶやいた。
今晩は、東京の深夜放送テレビを見てから寝ようと考えていた。