蟷螂の独白

世に背を向けた蟷螂です。喜怒哀楽を綴って19年モットーは是々非々の団塊世代です。

たまには

2018-11-01 23:30:43 | 文学
吉行淳之介が好きで、対談シリーズ以外は全て読みました。蟷螂の読書スタイルは、何度も同じ作品を読む傾向にあり、なので殆どがいわゆる積ん読です。
『薔薇販売人』は持ち歩いて文庫で、帰宅して全集で、気が向くと特装本で読んだりしています。書き出しのつかみの部分が秀逸で、今読んでも決して色あせることはありません。
『砂の上の植物群』も秀作です。いまでは都条例に引っかかる作品ですが、当時は許されていたのでしょう。マリンタワーと女子高生。映画化され、一度だけ見たことがありますが、もう再放送は無理でしょう。
初期の吉行の作品では、パウル クレーの作品タイトルが頻出します。言葉のイメージが詩的で、初期の吉行作品の主要な部分で効果的に登場します。また、作者も顔を出したりして、しかも登場の仕方が論理的です。結論的には男女の関係を描いたものが多く、生き方や性を多角的に捉えた作品になっています。
いまは、佐藤泰志にハマっています。海炭市叙景が映画化される直前に見た『書くことの重さ』に惹かれて、文庫の『きみの鳥はうたえる』は3、4回読みました。ところで、この作品が芥川賞を取れなかった理由は二つあります。ひとつは文体の、所々に出てくるミスでしょう。リードに『人を避け避け』はいけません。これで開高健に『芥川賞の文体ではない』と言わしめる理由になってしまいました。二つ目はやはりラストの静雄の殺人でしょう。あそこは臭わせるくらいで閉じた方が帰ってスッキリします。『佐知子が新聞の片隅に目をとめた。そこには静雄の名前があった。罪状は母親に対する過失致死だったが、僕にはわかっていた』くらいのラストの方が、読者の想像力を掻き立てると思います。
三島由紀夫賞にノミネートされた『黄金の服』も秀作です。開放的な憂鬱、饒舌と寡黙などが相まって、見せかけの青春を描き出しています。若さイコール青春ではないと、知らされます。ヒューバート セルビーJrの、『ブルックリン最終出口』は、『黄金の服』の冒頭に出てきます。Amazonで買い求めましたがかなり無茶な内容で、それでも30ページ以上は読めました。佐藤泰志が41歳の若さで自殺したことは、日本文学界の多大な損失でしょう。


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