前回、1978年から1984年頃までに描いていた短編作品を中心に色々と紹介してきたが、今回は1982年に手掛けた大作、『メガロポリス』という作品を取り上げたい。
『メガロポリス』は元々3部作で構想していたのだが、結局第一部の『宇宙編』と第二部の『地球編』を描いた段階で未完となってしまった。それぞれ40ページくらいの作品にて、決して長編と呼べるほどの分量ではないのだが、当時の作品としてはかなり長いものだった。当時としては持てる漫画のテクニックを全て駆使して打ち込んだ作品だったので、今読み返すと実に思い出深い。
今見るととても凝っているのだが、『宇宙編』は冊子として印刷したもの以外に、原画自体は“原画版”として特別な段ボールケースパッケージに収納して長らく保存していたので、保存状態がとてもいいのだ。『地球編』の原画も良い状態で保存されている。
また漫画内に登場するメカのイラストや、多くのポスター画も描いていたが、架空の映画版半券などまで面白がって制作していたものが残っている(笑)。
物語は一応完全オリジナルではあるものの、作画や設定などは相変わらず『宇宙戦艦ヤマト』や『スターウォーズ』に色濃く影響を受けたものになっており、今読むと結構笑える。これも時代背景のご愛嬌である。
(メガロポリス/宇宙編ストーリー)
地球防衛軍が誇る巨大宇宙戦艦『ビクトリア号』に乗り込む艦長の風間号(ごう)は、宇宙でのミッションを終え、10年ぶりに地球に戻ってくる。しかし地球に近づいたその時、その地球から突然攻撃を受け、ブラック帝国のガラム王がモニターに現れ、“地球は既にブラック帝国が支配した”と告げられる。更に、ガラムは風間に対して“わしはおまえの父だぞ”と名乗る。ショックを隠せない中、風間はビクトリア号で引き続き地球に向けて進めるが、更なる攻撃を受けてエンジンを損傷。仕方なく、一旦月の裏側に身を隠すことにした。
しかし、ガラムは攻撃の手を緩めない。部下のドエル艦隊を月に差し向け、風間たちを捉えるべく攻撃を仕掛けてくる。月にもブラック帝国の基地があり、まずはここからの攻撃を止める為、風間は仲間の佐野らと共に戦闘機で月基地への奇襲攻撃を仕掛けることに。ブラック帝国の執拗な反撃にあった風間だったが、ここで信じられない能力を発揮し、基地の心臓部にミサイルを撃ち込み、基地を見事壊滅することに成功。しかし、この戦いで佐野の戦闘機はドエル艦隊の攻撃を受けて炎上。佐野はドエル艦隊を道連れにすべく、ドエル艦に突っ込んでその命を散らしてしまうのだった。
風間は地球を奪回する為、地球から発せられている電波に紛れて、偵察機で地球に潜入する作戦を計画し、このミッションにビクトリア号一の美女である白吹百合子と一緒に向かうことに。果たして風間たちはブラック帝国から地球を奪回出来るのだろうか?そしてガラムは本当に風間の父なのだろうか?というところで『宇宙編』は終わる。
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(メガロポリス2/地球編ストーリー)
地球を奪回すべく、風間号と百合子は電波に乗って密かに地球へと向かった。風間は自分が家族と一緒に住んでいた街を訪れるが、街にはブラック帝国の監視ロボット人間が多く配置されていて、油断はできない。そこに、謎の男山田一郎が現れる。彼が只者ではないと感じた風間だったが、山田一郎は元地球防衛軍の司令官で、父風間剛の同僚だったことが判明。そして父の風間剛はドズバ星での戦いで命を落とし、その後ビクトリア号の艦長として息子の風間号が引き継いだことが号の口から語られる。そして風間家はAX68地区に引っ越したこと、及び母は亡くなってしまったことを山田に告げられ、号は慌ててAX68地区へと百合子と一緒に向かう。そこには妹の良子と弟の高二がいて、感動の再会を果たすが、号は山田一郎に母のことも含めもっと話が聞きたいと思い、再び山田一郎の家へと向かう。
そこで山田一郎から、ライトウェポンという特殊な武器を渡される。号がいつか地球に戻ったら渡そうと大切に保管していたものだ。これは電光銃、電光剣、電光ブーメランにもなる特殊な武器であった。そして号のことを幼い頃から良く知るという山田一郎に対して、号はガラムが自分の父親なのかと聞く。山田は驚くが、ついに真相を号に話だす。実は昔ブラック帝国での戦闘で勝利したが、帰国する際にブラック帝国の母星であるブロン星で赤ん坊を救ったが、その赤ん坊を風間夫婦に託したのだと。号は風間家の子としてすくすく育ったが、ある時“予知能力”と“鋭い反射神経”などの特殊能力があることが判明した。そして号の特殊能力を悟った父は、母の反対を押し切り、彼が8歳の時にドズバ星の調査ミッションに号も同行させることになったのだった。
自分がガラムの子で、ブロン人の血を引いた特殊能力の持ち主であることを知った号だったが、その頃ガラムはブロン星からトリプルキラーズという宇宙の殺し屋たちを呼んでいた。ビクトリア号の奴らを抹殺し、号を生きて確保するようミッションが告げられるのであった。果たしてトリプルキラーズに勝つことが出来るのか?そしてガラムを倒し、地球を奪回出来るのか?ガラムと号の親子関係の結末は?そして号と百合子の恋の行方は・・・という展開で『地球編』は終わる。
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『宇宙編』はその後“小説化”して製本していたが、こちらも色々なマーケティング施策ごっこをしていたのが何とも懐かしい。
残念ながら、結局この『地球編』で未完となっており、『メガロポリス3/完結編』は構想のみで、実際に描くことなく終わってしまったのである。『スターウォーズ』シリーズに夢中になっていたこの頃、3部作にする構想に自然となっていったと思うし、内容も『宇宙戦艦ヤマト』と『スターウォーズ』のエッセンスが入ったオマージュ作品になったのだと思うが、これも中学生当時に、手塚治虫、横山光輝、松本零士などのSF漫画や、『スターウォーズ』などのSF映画などに夢中になっていた頃の貴重な産物で、とても懐かしい思い出となっている。