40年も前に発売された日本のホラー漫画がなぜか今、韓国で大ブームになっている。1987年に連載されていた伊藤潤二のホラー漫画『富江』である。特に韓国の若い女性に人気らしいというから不思議な現象である。
気になったので、先日早速『富江』の漫画を購入した。伊藤潤二傑作集として上下2巻として発売されているものを購入して、読んでみた。僕は基本ホラー漫画があまり得意ではないので、めったなことが無いと読まないが、今回どうやら韓国のK POPと深い繋がりがあるということで、思わず読んでみたくなったのだ。
漫画の主人公である川上富江は、長い黒髪、妖しげな目つき、左目の泣きぼくろが印象的な、絶世の美貌を持った少女。性格は傲慢で身勝手、自身の美貌を鼻にかけ、言い寄る男たちを女王様気取りで下僕のようにあしらう。だが、彼女の『魔性とも言える魅力』を目にした男たちは皆、魅せられてゆく。やがて、富江に恋する男たちは例外無く、彼女に「異常な殺意」を抱き始める。ある者は富江を他の男に渡さず自分が独占したいため、ある者は富江の高慢な性格に挑発され、ある者は富江の存在の恐怖に駆られ、彼女を殺害する。しかし、富江は死ぬことはなく、何度殺害されても甦る。身体をバラバラに切り刻もうものなら、その肉片1つ1つが再生し、それぞれ死亡前と同じ風貌・人格を備えた「別々の富江」となる。たとえ細胞の1個からでも、血液の1滴からでも甦り、富江は無数に増殖してゆく。そして、その富江たちがそれぞれ、新たな男たちの心を狂わせてゆく……。
聞いただけでも恐ろしい物語だが、梅図かずおの漫画を読んで育った伊藤潤二だけあって、その漫画タッチはかなりグロい。細かく繊細で、見ているだけで思わず“寒イボ”が出てしまうほどだ。
こんなにも残酷でグロいホラー漫画がなぜ韓国で人気なのかというと、実は富江がK POPスター数名に良く似ていることから、SNSで紹介されて若い女性から人気に火が付いたらしい。
まず富江に似ていると言われるのはIVEのウォニョン。富江も普通にしていると美しいが、確かにどこかウォニョンの美しさにも似ている。
そして僕の大好きなNewJeansのヘリンも、猫のような魅力と最近のトレンドが融合した美しさが富江にも通ずるものがある。
また、Blackpinkのジェニーも良く似ていると言われている。この人気K POPグループのトップスター3名が韓国での富江ブームを強く後押ししているというわけだ。
富江の美しさは、特に流行に敏感なユーチューバーたちが取り上げ、富江風メイクにチャレンジする動画を次々と投稿。ファンデーションの厚塗り、目を鋭くする為目元のメイクを切れ長にする、そして泣きぼくろを描く。これで富江メイクが完成だ。また見た目だけではなく、専門家は富江の人気の理由について、キャラクターの美しさに加え、「思ったことが言いづらい韓国社会で、好き勝手に振舞う『富江』が若い世代に刺さった」と分析している。
それにしても40年も前の日本のホラー漫画が、今韓国でブームになるというのは不思議な現象だが、国境を越えたSNSの威力というのは本当に凄いし、きっかけはなんであれ、僕のように普通なら絶対ホラー漫画を読まないおじさんでさえもK POPがトリガーとなって思わず買って読んでしまったわけで、新たなファン層の広がりというのも侮れない。
これを機に、韓国で伊藤潤二展なども開催されて大人気となっており、また日本でも現在“世田谷文学館”(芦花公園/南烏山)で展示会が9月1日まで絶賛開催中なのだ。日本の若者も『富江』に触れる良い機会となりそうだが、かなりグロいので、それなりの覚悟を持って観に行くことをおススメしたい。