ただの風

いつも豚の糞まみれ。
ただの風よろしく、田舎の養豚場の風景から日々を記録します。

父の父

2020-08-16 17:54:04 | 日記

僕の父方の祖父は詳しくは語りませんでしたが、敗残兵でした。

足を失ったのは仕事の事故のせいだと言っていましたが、父方の祖母から帰ってきた頃にはもう片足が無かったことを晩年明かされました。

祖父は穏やかな人で、隣の家からもらった木材をしこたまため込んでは使われてない蚕部屋にこもって木工細工を作っていました。時々目を開けたまま呆然として遠くを眺めるのも癖でした。しかし、近所付き合いがとても悪い人でもありました。隣の家の爺さんと、血縁者以外に祖父宛の来客はありませんでした。

天皇陛下という言葉にも無反応な人でした。相撲も見ない人でした。いつだったか相撲は何故国技と呼ばれるのかと話していたとき、居間でこたつに入っていた祖父は

「国技じゃない。競技だよ」

とぼそりと呟いたのでした。

おかげで僕は満足するまでNHKの”お母さんといっしょ”を満喫することができたのでした。

祖母が亡くなり、祖父の身に何がおきたのか分からなくなった今では想像するしかありませんが、人付き合いがなかったのも、呆然と座っていたのも、昭和天皇に関心が無かったのも、すべて戦争経験が原因だったのではないかと感じています。

僕の故郷のにも、敗残兵に対する偏見があり、時折戦場の風景を思い出し、心の底で戦いの音頭をとった人と日本を軽蔑していたのが僕の父の父だったのではないかと、28℃の借家でクーラーに吹かれながらふと考えるのでした。

 

 



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