・2012.11.8 日本分子生物学会が、「論文不正問題に関する早急な情報開示の要望書」を公開しました。
平成24年11月8日
東京大学総長 殿
東京大学分子細胞生物学研究所長 殿
特定非営利活動法人日本分子生物学会
理事長 小原雄治
加藤茂明元分子細胞生物学研究所教授の論文不正問題に関する
早急な情報開示の要望書
日本分子生物学会は生命系の我が国最大規模の学会です。その中で貴大学所属の会員数が最大であり、日頃よりの貴大学のご支援に感謝いたします。
表記の件につきまして、貴大学分子細胞生物学研究所加藤茂明元教授が本年3月末に貴大学を辞職されたことが4月5日付けの新聞報道で明らかにされています。それによりますと、加藤元教授が発表された論文に不適切な処理があったことの監督責任をとっての辞職で、貴大学に調査委員会が設けられ、調査が進んでいるとのことです。
日本分子生物学会では加藤元教授が日本分子生物学会の会員で、元理事でもあり、研究不正に関する若手教育担当メンバーの1名であったという事実から、この問題を当初より憂慮してきました。研究倫理を積極的に啓蒙する立場にある会員が起こした不祥事の責任を痛感し、本学会の責任および再発防止に関して協議を重ねてきております。しかし、大変残念なことに、今回の件が4月始めに報道され公知の事実となってkらすでに半年以上が過ぎましたが、加藤元教授が行った研究に不正があったのか、あったとすればどのような事実があったのかという情報が、貴大学から未だに全く報告されておりません。
加藤元教授が行った研究活動に対する全責任と研究データの瑕疵を調査できる唯一の機関である貴大学による真相の公表なしには、この問題の本質の理解とそれに対する適切な具体的対応策の検討はできません。この問題は、単に研究者個人の問題に留まるものではなく、科学者コミュニティが「自浄作用」を発揮し、その社会的責任を果たす必要のある、いわば日本の科学界全体にとって重要問題であり、かつひ火急の対応が必要な問題と認識しております。このような状況下、貴大学の対応は、新たな問題を生じつつあると考えます。
研究成果はいうまでもなく全世界の研究者、全人類が分かち合う共通の知的財産です。もしそこに大きな瑕疵があるようでしたら、研究者あるいは責任機関は迅速に訂正あるいは削除する強い義務があると考えられます。間違った件食う成果をもとに研究が進められるなら、全世界的規模で研究者や学生の貴重な時間のみならず、研究に使われる予算などの大きな損失になります。特に、加藤元教授の研究は世界的にも競争が激しい分野であり、医学的な側面も強いことから大きな注目を上げてきました。また、加藤元教授の発表された論文はいわゆるトップジャーナルの多数の発表があり、これによって大型予算を獲得して来た経緯を考慮すると、その影響は研究者のコミュニティのみならず、社会への影響は多大なものと想定されます。また、正確な情報を社会に迅速に発信することこそがそのような研究不正に対しての防止策を策定する貴重な情報であsると考えます。
研究不正に関する調査は大変な労力と時間を要することは十分に理解しております。加藤元教授の研究(不正)に関する全貌と調査結果の詳細に関しての迅速な開示が行われることが理想ですが、少なくとも中間報告などによる経過報告により情報をコミュニティに伝えることは、無駄な研究に時間と労力を割くことを避け、関連団体が研究不正防止に対するさまざまな対応を講じるために非常に有効かつ重要であると考えます。
上記の点をふまえ、日本分子生物学会は貴大学と調査委員会および分子細胞生物学研究所に対して以下のことを強く要望するものであります。
- 加藤元教授の研究(不正)に関する全貌と調査結果の詳細に関する迅速な開示
- 迅速に開示できない場合は、中間報告などの形での早急な経過報告
- 不正があったと判断された論文の早急の訂正あるいは撤回
以上、早急にご対応いただけますようお願いいたします。
魚拓コピー→ http://megalodon.jp/2013-0603-0939-36/www.mbsj.jp/misc/youbou_20121108.pdf