今年の夏に「女優たちの午後」という企画コンサートがありました。
ミュージカルの土居裕子さん、シャンソンの古坂るみ子さんという憧れの先輩たちとの夢のような舞台✨
友人の笠原弓香さんのこれまた素敵なライブレポートです✨
即日完売ですっかり諦めていた「女優たちの午後」、キャンセルが一席だけできたと知らせていただいたのは開演3時間前のことでした。
反射的にいろいろ放り出して、コリドー街に駆けつけると、すでに立錐の余地もありませんでした。
その中に、舞台にほど近く、なぜかぽつんと一つの椅子が残されていました。隣席のいかにも銀座のシャンソニエに相応しい華やかな婦人に尋ねると、空いているとのこと。こちらも女優さんかしら、と思いながら腰を下ろした時には、開演まで10分ほどになっていました。
私の拠り所のようなタンゴ歌手の長浜奈津子さん。シャンソンの古坂るみ子さん、ミュージカルの土居裕子さんは、奈津子さんのライブの客席でお見かけしていて、客席にいても圧倒的なその美しさと存在感は、忘れようもない思い出です。
愛、別れ、悲しみ、希望、言葉も歴史も社会的背景も違っても、人はいつも同じことを歌い、同じように生き抜いてきたのだということをしみじみと感じて、胸を打たれます。
惜しみなく目まぐるしく差し出される歌声に体を預けながら、濃密な時間が過ぎていきました。
歌は、音階を正しく取ることだけではなく、語ることでありドラマなのだということ、
痛みも悲しみも乗り越えて豊かに熟成した言葉なのだとわかってきます。
お互いに際立つコントラスト、そしてその個性が優しく溶け合うように一つのステージを作っていきます。それぞれの歌い手が長い時間をかけて切磋琢磨し、支え合ってきた日々が、客席の隅々まで溢れて満たしていくようでした。
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帰り際、なんと言ったら気持ちを伝えられるだろうと考えましたが、なんだか少しも気の利いた言葉にならなくて、自分の表現力に情けない思いをしながら、ただ、ありがとうございました、とやっと言ってきました。
そこにいたことで、また明日からも背を伸ばして進んでいこうと密かに思わせたり、進んでいく先には光が差しているんだと確かめた気持ちにさせたり。
優れたアーティストというのはそうした力を身を削って提供してくれるものなんだと思います。
写真は、向かって右から、古坂るみ子さん、土居裕子さん、長浜奈津子さんの3人のゴージャスな女優さんたち、そして、次々と変わる曲目を弾きこなしながら、時折ふんわりと唇にのぼる微笑が印象的だった、ピアニストのアニエス晶子さん。
ピアノの奥にともる灯りは、かの「銀巴里」から引き継がれた灯なのだそうです。