株取引アプリのロビンフッドが一時停止、最悪のタイミングで
3/4(水) 12:00
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Forbes JAPAN
株取引アプリのロビンフッドが一時停止、最悪のタイミングで
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米国のフィンテック業界で最注目の存在といえるのが、手数料無料の株取引アプリの「ロビンフッド(Robinhood)」だ。昨年12月にアカウント開設数が1000万件を突破したロビンフッドは3月2日、システム障害に襲われサービスを一時的に停止した。
障害の発生は同社にとって最悪のタイミングだった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、株式市場は2月末に急落に襲われたが、3月2日の相場は急回復を遂げ、取引を急ぐユーザーが殺到していたのだ。
ロビンフッドによるとシステムの停止により、プラットフォーム上の全ての機能が利用できなくなったという。「ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません」と同社はツイッターで謝罪した。
顧客らもツイッター上に、停止の告知やブラックアウトした画面のスクリーンショットを投稿し、不満を述べた。一部のユーザーはロビンフッドを告訴すると述べ、法律の専門家にアドバイスを求めると宣言した顧客も居た。
背景には、その前週に大きく値を下げた株式市場が急回復を遂げていたことがあげられる。3月2日に米国の全ての株価指標は上昇していたが、ロビンフッドの顧客らはそのチャンスに乗り遅れてしまったのだ。
ロビンフッドの障害発生の前週には、フィデリティ証券やチャールズ・シュワブのサイトも、システム障害を起こしていた。
2013年4月に始動したロビンフッドは、株の売買サービスを無料で提供し、特にミレニアル世代から強力な支持を獲得した。しかし、今回のようなシステム障害の発生は、同社の信頼性を著しく損なうことにつながる。若い利用者の多くは、2008年から2009年の金融危機を体験しておらず、これほどボラティリティの高い相場に直面するのは初めてだ。
ロビンフッドは昨年もシステムトラブルを起こしており、11月にはバグにより一部の顧客が無限の借り入れを行える状態に陥った。
さらに、2018年に同社は当座預金と普通預金の両方に3%の金利を提供すると発表したが、当局の指導を受けてこれを撤回し、現在の金利は1.8%となっている。しかし、ロビンフッドは競合の株式取引サービス「イートレード(E*Trade)」以上の顧客を獲得し、企業価値は76億ドル(約8270億円)に達している。
Donna Fuscaldo
コロナ禍の3ヶ月間で米国富裕層の資産62兆円増 背景に大規模金融緩和
新型コロナ危機が始まってからの約3カ月間、米国の富裕層が資産を約5650億㌦(62兆円)増やしていたことがわかった。米国の進歩的な政策研究所()が統計データを集計し、4日に報告書を発表した。過去最大規模の金融緩和の恩恵を受ける1%の富裕層と、コロナ禍で生きる糧を奪われる99%との格差がかつてなく拡大している。
報告書によると、コロナ危機による世界経済の急激な停滞によって、3月18日からの約3カ月間で、新規失業手当を申請した米国人は4300万人(労働統計局)にのぼり、リーマン・ショック不況後に創出された雇用のほとんどが消滅した。これには自営業者として支援を申請した数百万人は含まれておらず、実態はさらに深刻だ。
同じ3カ月間に、富裕層の累計総資産は約5650億㌦増加した。現在、億万長者の資産総額は3・5兆㌦(385兆円)に達しており、新型コロナ流行の開始時に記録された最低水準から19・15%上昇している。一方、米国ではコロナ感染ですでに10万人以上が死亡しており、報告書のなかでは「パンデミックの最中、億万長者の富が急増していると同時に、何百万人もの人々が苦しみ、多くの困難や死に直面している。米国社会の不平等でグロテスクな現実だ」とのべている。
この間、資産を飛躍的に延ばした主な富裕層は以下の通り。IT大手や投資関連の大企業が目立っている。
ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)362億㌦増
マッケンジー・ベゾス(前妻)126億㌦増
マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックCEO)300億㌦増
イーロン・マスク(テスラCEO)141億㌦増
セルゲイ・ブリン(グーグル共同創業者)139億㌦増
ラリー・ペイジ(グーグル元CEO)137億㌦増
スティーブ・バルマー(マイクロソフト元CEO)133億㌦増
ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)118億㌦増
フィル・ナイト(ナイキ創業者)116億㌦増
ラリー・エリソン(オラクル会長)85億㌦増
ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイCEO)77億㌦増
マイケル・デル(デル創業者)76億㌦増など。
富裕層の資産拡大の背景には、株式市場の異常な回復がある。連邦準備制度理事会(FRB)が緊急措置としてゼロ金利、無制限の債券買いとりなど、かつてない規模の金融緩和策を講じ、2月19日をピークに29%減まで急下降していたナスダック指数が史上最高値に迫るなど、株式市場は大幅に値上がりした。実体経済と乖離した市場の活況が富の移動をもたらし、格差拡大を加速させている。
国連は5月末、2020年の世界経済は少なくとも3・2%縮小し、3億人以上が失業し、米国だけで3900万人が失業すると予測したが、実態はそれを上回る。米国内の医療保険未加入者は3000万人をこえ、コロナ禍に見舞われながらも医療の恩恵を受けることができず、多くの死者を出している。米国の失業率は今後20%に達することが予測されており、リーマン・ショック恐慌を上回る深刻さをみせている。
報告書共著者であるチャック・コリンズ氏は「数百万人の苦しみと窮状と引き換えにもたらされた億万長者の富の急増は、私たちが今後数年で社会を回復するために必要な社会的連帯を損なう。これらの統計は、私たちがかつてなく経済的、人種的に分裂していることを示している」と声明でのべている。