目がさめると2時半 雨の音は止んでいました。
電気を消してベランダにでてみると
まるで大きな果物のような、みずみずとしたオリオン座の星々がのぼってきていて
東のからまつの樹々の梢に うるうるとまたたきながら かかっています。
8月のおわり もうこの時刻には空が廻り冬の星座が上がってきているのでした。
夜空の一番深いところには昴(すばる)の星の姉妹たちが
ちいさいながらもくっきりと輝き
その脇には、おうし座の紅い眼、アルデバランがきらきらとまたたき
まだちょっと 人の歩く時間ではないので
夜明けにもうすこし近づくまで 鳥や花の辞典や写真集をみて待ち
3時半になって家を出ました。
やっぱりちょっとこわいけど 満天に星が満ち溢れて
小さい星々まであまさず見えるので
オリオンは宝石をちりばめた狩り着をまとっているよう、
腰の宝剣もきらきらとして先端の星雲も輝いています。
その足もとに 地味な うさぎ座
左のほうには雄々しいふたごの戦士
東の下からは
あまりに大きいので、青いだけでなく赤やいろいろな色にまたたいて見える
賢治の「貝の火」の大きな宝玉のような おおいぬのシリウスがのぼってきています。
天頂ちかくにおうし座、すばる、そこから反対がわにむかって目を転ずると
ケフェウス王がこれもまた細かい宝石をちりばめた絢爛たる衣装
そのへんから天の川の白い砂がきらめき カシオペアのW
その星々の下を、びゃっこの名をささやくように呼びながら歩く
ちょっとこわいときは、
立ち止まって星を眺めました。
やがて東の空が白みはじめ、ラヴェンダーと水色が空を包みこんでいきます。
星々はひとつ、ひとつと消えて
まわりの灰色だった樹々に くっきりと色がもどってきました。
すばるは夜のもっとも深いところにいたので ちいさいのに最後まで見えていました。
やがて空に赤みが増し 夜明け
夏の森や山に満ち溢れる色がもどってきます。
翼に青いすじのあるカケス?の夫婦と
首があかいのはウソでしょうか。
明け方と、夕暮れにも森に深くこだまする哀愁を帯びた声はアカハラ、
うぐいすに、ほととぎす。
カラ系(しじゅうから、ごじゅうから、こがら、やまがら)は
わたしにはどうも区別がつかなくて
晴れた日の夜明けに、kyoroon、kyrooon、tiii…というアカハラの声を先頭にはじまる、鳥たちの朝のコーラスは、いつもすばらしいのです。
薄紫の、首のながいほそほそとした秋美人の
まつむしそう
黄色い小さな花がたくさんつく可憐な
あきのきりんそう
小さなちいさな蘭科の紫の
みやま(深山)もじずり は岩のうえにも咲き
吾亦紅(われもこう)の紅
くるくると二重にまいてベルが下がるように咲く
薄紫のつりがねにんじんなど
夏の名残の花もまだある。
白くかわいい錨の形 りんどう科の
はないかり
すぎごけの道
ななかまどの実が赤くなっている。
赤岳の稜線がくっきりと見え
昨年登ったときに泊まった頂上ちかくの稜線の山荘 展望荘と
頂上わきの頂上小屋が 朝陽にきらきら光りはじめました。
夏山は緑が頂上ちかくまで駆け上がっています。
ああ、あそこを歩いたんだなあと 横岳のほうまで目でたどり
モミやシラビソの細い葉のさきに 虹いろにきらめく朝露
びゃっこーーーーー
おかあしゃんだよーーーー
かえろうよーーーー
はくちゃん、まってるよーーーー
ささみもってきたよーーー
びゃこたーーーーん
夏のおわりの山は美しく
なにもかも置いて 家出をしてひとり ここにいたいのは
私だったのかもしれないと思ったら、ほろほろと涙が出てきました。
でも 帰ってきておくれ
また、ちっちゃい頭でごつんごつんってして
おかあさんだいすき って
言っておくれ
寒くなってきたらまた、あったかいおふとんで一緒に眠ろうよ
おみやげにちいさい山のねずみをくわえて
おかあしゃん、たのしかったって 帰ってきておくれ
この日は午後には帰京しなくてはなりませんでした。
お午まえに疲れて戻り、
すこし眠りました。
「びゃっこのくれた ひとりの貴重な時間をだいじにね
ちょっとこわくてさみしいかもしれないけど」
とYKちゃんは言ってくれました。
標高1800メートルの山のなかの 夏のおわりの
さみしいけれどうつくしい3日間でした。
IKさん、TGさん、すみこさん、
心配してくださっているASさん、
ご近所のKNさん、SZさん、SMさん
行き会うと声をかけてくださったBRさんご夫妻、
YKちゃんと伺ったTKさん、
暗いなか、わたしがひとり歩いていたら
心配して懐中電灯を持っておいかけてきてくださったSZさんご夫妻、
行き会ってご心配くださった方がた、
管理事務所の方がた
ありがとうございます。
IKさんと、最後に目撃情報のあったF地区のTGさんに ご挨拶をして
家をざっと片付け
事故渋滞のなか
29日月曜の夜に帰京しました。
その日中に、娘の夏休みの課題のため
一緒に英語の映画のDVDを見なくてはなりませんでした。
翌日は登校日なのででおべんとうも。
けれども
わたしの魂のようなものの一部は
まだ
白虎と一緒に山に残ってしまっているようでした。
このとき、一番歩いた日は、ケイタイによれば3万3千歩。
20数キロでした。
電気を消してベランダにでてみると
まるで大きな果物のような、みずみずとしたオリオン座の星々がのぼってきていて
東のからまつの樹々の梢に うるうるとまたたきながら かかっています。
8月のおわり もうこの時刻には空が廻り冬の星座が上がってきているのでした。
夜空の一番深いところには昴(すばる)の星の姉妹たちが
ちいさいながらもくっきりと輝き
その脇には、おうし座の紅い眼、アルデバランがきらきらとまたたき
まだちょっと 人の歩く時間ではないので
夜明けにもうすこし近づくまで 鳥や花の辞典や写真集をみて待ち
3時半になって家を出ました。
やっぱりちょっとこわいけど 満天に星が満ち溢れて
小さい星々まであまさず見えるので
オリオンは宝石をちりばめた狩り着をまとっているよう、
腰の宝剣もきらきらとして先端の星雲も輝いています。
その足もとに 地味な うさぎ座
左のほうには雄々しいふたごの戦士
東の下からは
あまりに大きいので、青いだけでなく赤やいろいろな色にまたたいて見える
賢治の「貝の火」の大きな宝玉のような おおいぬのシリウスがのぼってきています。
天頂ちかくにおうし座、すばる、そこから反対がわにむかって目を転ずると
ケフェウス王がこれもまた細かい宝石をちりばめた絢爛たる衣装
そのへんから天の川の白い砂がきらめき カシオペアのW
その星々の下を、びゃっこの名をささやくように呼びながら歩く
ちょっとこわいときは、
立ち止まって星を眺めました。
やがて東の空が白みはじめ、ラヴェンダーと水色が空を包みこんでいきます。
星々はひとつ、ひとつと消えて
まわりの灰色だった樹々に くっきりと色がもどってきました。
すばるは夜のもっとも深いところにいたので ちいさいのに最後まで見えていました。
やがて空に赤みが増し 夜明け
夏の森や山に満ち溢れる色がもどってきます。
翼に青いすじのあるカケス?の夫婦と
首があかいのはウソでしょうか。
明け方と、夕暮れにも森に深くこだまする哀愁を帯びた声はアカハラ、
うぐいすに、ほととぎす。
カラ系(しじゅうから、ごじゅうから、こがら、やまがら)は
わたしにはどうも区別がつかなくて
晴れた日の夜明けに、kyoroon、kyrooon、tiii…というアカハラの声を先頭にはじまる、鳥たちの朝のコーラスは、いつもすばらしいのです。
薄紫の、首のながいほそほそとした秋美人の
まつむしそう
黄色い小さな花がたくさんつく可憐な
あきのきりんそう
小さなちいさな蘭科の紫の
みやま(深山)もじずり は岩のうえにも咲き
吾亦紅(われもこう)の紅
くるくると二重にまいてベルが下がるように咲く
薄紫のつりがねにんじんなど
夏の名残の花もまだある。
白くかわいい錨の形 りんどう科の
はないかり
すぎごけの道
ななかまどの実が赤くなっている。
赤岳の稜線がくっきりと見え
昨年登ったときに泊まった頂上ちかくの稜線の山荘 展望荘と
頂上わきの頂上小屋が 朝陽にきらきら光りはじめました。
夏山は緑が頂上ちかくまで駆け上がっています。
ああ、あそこを歩いたんだなあと 横岳のほうまで目でたどり
モミやシラビソの細い葉のさきに 虹いろにきらめく朝露
びゃっこーーーーー
おかあしゃんだよーーーー
かえろうよーーーー
はくちゃん、まってるよーーーー
ささみもってきたよーーー
びゃこたーーーーん
夏のおわりの山は美しく
なにもかも置いて 家出をしてひとり ここにいたいのは
私だったのかもしれないと思ったら、ほろほろと涙が出てきました。
でも 帰ってきておくれ
また、ちっちゃい頭でごつんごつんってして
おかあさんだいすき って
言っておくれ
寒くなってきたらまた、あったかいおふとんで一緒に眠ろうよ
おみやげにちいさい山のねずみをくわえて
おかあしゃん、たのしかったって 帰ってきておくれ
この日は午後には帰京しなくてはなりませんでした。
お午まえに疲れて戻り、
すこし眠りました。
「びゃっこのくれた ひとりの貴重な時間をだいじにね
ちょっとこわくてさみしいかもしれないけど」
とYKちゃんは言ってくれました。
標高1800メートルの山のなかの 夏のおわりの
さみしいけれどうつくしい3日間でした。
IKさん、TGさん、すみこさん、
心配してくださっているASさん、
ご近所のKNさん、SZさん、SMさん
行き会うと声をかけてくださったBRさんご夫妻、
YKちゃんと伺ったTKさん、
暗いなか、わたしがひとり歩いていたら
心配して懐中電灯を持っておいかけてきてくださったSZさんご夫妻、
行き会ってご心配くださった方がた、
管理事務所の方がた
ありがとうございます。
IKさんと、最後に目撃情報のあったF地区のTGさんに ご挨拶をして
家をざっと片付け
事故渋滞のなか
29日月曜の夜に帰京しました。
その日中に、娘の夏休みの課題のため
一緒に英語の映画のDVDを見なくてはなりませんでした。
翌日は登校日なのででおべんとうも。
けれども
わたしの魂のようなものの一部は
まだ
白虎と一緒に山に残ってしまっているようでした。
このとき、一番歩いた日は、ケイタイによれば3万3千歩。
20数キロでした。