
とても不思議な感覚だった。
大粒で痛いくらいの大雨と
ときおり強く吹き付ける風
そして
暗く・・・重く・・・生き物のようにうごめく雲の隙間から
フラッシュのような強い光と轟音。
傘ならどこでも売っているし、買うお金も持っている。
雨を避けて体を温められるCAFEだってある。
アタシは大人。
たくさんはないけど、自分の快適を買うお金は持っている。
なのに何故か
今の
この不自由な状況を心の底から喜んでいた。
なぜなら
彼らが演奏を止めないから。
いつもよりも忙しく楽器を拭いて気遣って
それでもひとたび音を鳴らせば
あの優しい仕草が嘘のように激しく高らかに楽器を歌わせる。
一曲一曲
一音一音
あの分厚い雲の上へと羽ばたかせるように
心を込めて
『命の限り飛んで行け』と願っているように聞こえていた。
あれほどの雨なら演奏する指は滑りすぎるだろうし、
時間が経つほど楽器は次第に膨張して、
コンディションを整えるのは大変なことだっただろうと思う。
途中でマイクが壊れるというアクシデントもあったけど
たいした影響もなく交換され
むしろ
それがあったから会場が一体になった。
たぶん、あの日のスタッフさんは最初から最後まで相当神経をすり減らしたに違いない。
ステージの安全を観察するため目を凝らしたり
音の異変がないか耳を澄ましたり
きっとあのステージに携わった全ての人は
終わった時に深い安堵に包まれ
互いの技術力の高さに感謝しただろう。
それはステージに立つメンバーにも反映されて
真摯にただひたすら心を込めて、会場に向けて歌う昭仁。
彼の声に包み込まれ極上の温もりを感じた。
濡れた髪から雫を垂らしながら強く激しくそして
ささやくように優しくギターを奏でるharuちゃん。
ポルノグラフィティは雨バンドって言われてたけど
もしかしたら・・・
世界で一番 雨の似合うバンドなのかもしれない。
だって。
これまでに楽しかったり素敵だったライブはたくさんあるけど
ステージから『愛してます』って告白されたように思えたの。
みなさんを、この瞬間を愛してますって。
稲妻だってタイミングの読めない照明のようなもの。
むしろ予測ができないから映し出された表情が美しく見えた。
この悪天候を味方につけたと言ってもいいくらい、
あの日のポルノグラフィティは
強烈に印象的で
最高に美しく
もっともセクシーで
強くて 男らしく
おだやかな海のように優しかった。
この日に立ち会えた運命は神様からの大きなギフト

この世でもっともロマンチックな時間だったかもしれない・・・。